ブッシュに悪の枢軸って言われた国だ。
今回、イランへ行くことが決まった時、 「ブッシュに悪の枢軸って言われた国だ。イラクの隣の。10年くらい前、上野に沢山いたよなー、偽造テレカ売ってる不良イラン人。当時はポケベル全盛だったから、彼氏彼女いる奴はみんな買ってたな。10枚だか20枚だか30枚だかで1000円くらいだったよなー。もしかしたらあの人たちに会えるか? 会えたら当時の裏話きかせてもらいたいな。」という程度のことを最初に考えた。
で、ネットで調べてみたら、ガチガチのイスラム原理主義国だとある。旅行ガイド書にも、ガチガチのイスラム原理主義国だとある。
「あー、それが嫌であの不良たちは日本に来ていたのか? で、結局イランに戻ったのか? あ、でもまだ渋谷とかには居るか。まぁでも多分そんなんじゃ日本に嫌な思い出しかなさそうだから、街歩いてる日本人らしき野郎に声をかけるなんてことはしないかもなー。」とか考えていた。
で、世界遺産の遺跡が有ってその他にもいろんな遺跡が有るとか、世界遺産のモスクも有って他にもどこそこに有名なモスクが有ってとかそんなことは、特に何も調べなかった。観光より異文化交流や体験をしたほうが楽しそうだと思ったので。だいたいそんな感じで出発した。
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祭りで歌っていた男衆 |
テント |
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はしゃぐ警察官 |
燃えるテント祭りのやまば |
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サッカー場で会った子供 |
水タバコを吸っている女性 |
首都テヘランに着いた翌日
首都テヘランに着いた翌日、街に出てみると店は全て閉じていて人はほとんど歩いていない。なんか変な雰囲気。てくてく歩いて行くうちに、どうやら今日は何かのお祭らしい(1)、とわかってきた。
さらに道を歩いて行くと、市場近くの交差点に人が集まり、その中心にテントが建っている。これからそこで何かが始まるのだろう、ということはわかった。
テント周りの人混みの中(2)待っていると、老いも若きも揃いも揃って周りの人たちがいろいろ話しかけてくる。ほとんどはペルシャ語なのでわからない。でも中には英語で話しかけてくる人がいたので、昨日の夜に日本から来たばかりだ等、話したりする。
「ほら、ちょっと、ここだと良く見えるよ。」 と、わざわざ自分の前に隙間を作りそこへぼくを招き入れてくれる人がいたりして、なんだかみんな、とても人懐っこくて物凄く親切だ。
そんなこんなで待っていると、
「日本人ですか?」
と、日本語で話しかけてくる人がいる。10年前に1年間だけ日本で暮らしていたという人だった。
で、さらに何かが始まるのを待つ。 だんだんと皆が興奮してくるのがわかる。とても良い臭い(多分薔薇)のする水を皆に降りかけて回る人や、掛け声を上げる人、それに合わせて声を上げる周りの人々、人混みを割って歩いて行く民族衣装のような物を着ている人、興奮する人たちを落ち着かせようとする警察官。イランのことをろくに調べもせず来たため、何が何だかさっぱりわからず、ただただ、人々が興奮していく中に居続ける。そのうち警察官もはしゃぎ始める(3)。
どんどん盛り上がってくる。
日本語話すおじさんは、 「イランの人、良い人もいるし悪い人もいる。十人十色だから気を付けて。」と言ってくれ、ぼくをしっかり守ってくれている。
で、突然テントが燃やされて、祭終了(4)。
「あー、終わった終わった」 って空気に成って、散っていった。日本語話すおじさんは、ぼくをホテルまでバイクで送ってくれた。
イランの都市をいくつか回った
イランの都市をいくつか回ったが、どこの人たちも非常に人懐っこく、そして親切だった。やたらと感じが良かった。街を歩くと、皆が笑顔で「やあやあ」と声をかけてくる(5)。地震で壊滅したままのバムであってもそうだった。東京ではちょっと考えられないことだが、老若男女皆とりあえず「何だか外国人が歩いているから声をかけてみよう」ってな感じでどんどん声をかけてくる。で、英語が話せる人は英語で、日本語が話せる人は日本語で、気軽に会話してくれる。これは人見知りをするぼくにとっては、とても楽しくとても嬉しいことだった。
この経験から、日本に帰り道端で困っている外国人をみかけたら先ずは話しかけよう、と考えるようになった。
ガチガチのイスラム原理主義の国という印象は……
で、ガチガチのイスラム原理主義の国という印象は受けなかった。女性は髪の毛を見せないようにしている、というくらいで、それすらもテヘランではけっこう適当だった。コーランもあまり聞かなかったし、定時にお祈りしている人もほんの少ししか見なかった。街中で手をつないで歩くカップルは日本と同じ様にいるし、ポケモンやディズニー等のキャラクターグッズも普通
に売っている。ケルマーンという街で10数時間シーラーズ行きのバス待ちをしている最中、英語で話しかけてきたぼくと同い年の人は、
「シーラーズの女性は、イランで最も美しい。どうだ日本人、シーラーズに愛人作らないか? 紹介するぞ。どうだ、欲しくないか? シーラーズの女性は本当に綺麗だぞ。どうする?」(6)
と冗談交じりに薦めてきた。あぁ、それは良いかも、とは考えたけれども、仮にその話が進んでいったらちょっと面
倒臭いことに成るかもしれないからよしておこう、とも考え、断った。 多分この国は今少しずつ俗っぽく成ってきているんだろうな、という感じがした。
実際に行かなければ想像すらしなかった
今回の旅は、初ペルシャ語圏、初イスラム教圏、初安宿、初異文化家庭訪問、初被災地、初偽警察官等々、初めての事尽くしで、非常に良い経験と勉強に成った。あぁ、やっぱり百聞は一見に如かずだ、とつくづく思った。
イランの人たちが、こんなにも親切だってこと(*)は、実際に行かなければ想像すらしなかったろうし、あぁ、コミュニケーションさえ取れれば、人間何処であっても生きていけるものかもしれない、との考えを持つに至った。
そして今回、仕事という名目は一応付いていたにしても、2週間もの間会社を空け、上司同僚そして関係各所の方々には少なからぬ
迷惑をかけたに違いないのですが、おかげさまでとても良い経験ができました。すいません、これからこの経験を糧にして仕事していきますので許してください。
* 帰りの飛行機で一緒になった人から聞いた話では、男女差がけっこう有るらしい。女子だと男子以上に物凄く親切にされることが有る反面
、痴漢等の性的嫌がらせに遭うことも有るとのこと。
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