剛田武の地下音楽入門 第1回:陰猟腐厭

 

『陰猟腐厭/初期作品集 1980-82』 EM Records EM1127CD / EM1127LP
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『陰猟腐厭/抱握』 EM Records EM1125CD
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『地下音楽への招待』を執筆するきっかけのひとつが、陰猟腐厭のドラマー原田淳との出会いだった。30余年の間に忘れ去られた実体験が多くある一方で、ライヴを観たこともないのに、陰猟腐厭のことが記憶に強烈に焼き付けられているのは、一度聴いたら(いや、見たらというべきだろう)忘れられない名前と、アジ演説のハプニングを収録したソノシート『妥協せず』の異様な存在感の所以であろう。「謎」だけが心の中で増殖していった。とっくに時代の闇の中に消え去ってしまったと思い込んでいた彼らが、現在でも散発的ながら活動を続けていることを知ったのは、ネットとブログとSNSのお蔭であるが、ツールはどうあれ直に会った原田から渡された30年以上前のレコードは、頑固なまでに「物体」として存在感を主張した。溝に刻まれた音響を聴くにつれ、さらに謎が深まり、インタビューを申し込んだその時にEMレコードの江村氏から音源リリースの打診があったという事実は偶然にしては出来過ぎで、神の手(運命)の導きとしか思えない。

80年代初頭にリリースされた音源からセレクトされた『陰猟腐厭/初期作品集 1980-82』は伝説の『妥協せず』をはじめ異端の地下音楽満載の編集盤。そして新作『抱握』はまさかの1985年録音作品。30年以上前のレコーディングであるが、まさしく<最新作>に他ならない。なぜなら原田がライナーノーツに記したように「即興演奏に於いて『数十年』といった時間差はあまり意味を持たない(中略)。音楽にはそもそも『右肩上がりの進化』など存在しない」のだから。スタイルの新旧を論じても意味がない。すべての「自覚的な表現行為」の本質が明らかにされている。何事も新規なものに心が惹かれがちな現代人への戒めとして肝に銘じておきたい。

Profile
陰猟腐厭:
増田直行(g)
原田淳(ds)
大山正道(key)
高校時代に「シュールレアリズム同行会」で知り合った3人で1978年に横浜で結成。1980年3月吉祥寺マイナーでデビュー。横浜のロック喫茶「夢音」を拠点にライヴ活動し、夢音の自主レーベル「クラゲイル・レコード」からソノシート『妥協せず』(1981)、7インチシングル『品品』(1982)、LP『陰猟腐厭』(1984)、雑誌「マーキームーン」のレーベルからカセット『行進曲』(1984)等をリリース。ミニマルミュージック、プログレッシヴロック、即興音楽にインスパイアされた個性的な音楽を展開し、横浜オルタナティヴ・シーンの中心バンドとして、さらに日本の地下音楽の異端バンドとして現在まで活動する。
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Live Information
2017年1月28日(土) 
大久保ひかりのうま http://hikarinouma.blogspot.jp/
■open/start 19:00/19:30
■料金¥2,000 + drink
出演:
* 橋本孝之 (alto sax, etc.) from .es(ドットエス)
* 蔦木俊二 (guitar) from 突然段ボール + 吉本裕美子 (guitar)
* 陰猟腐厭 (増田直行 guitar, 大山正道 piano & keyboard, 原田淳 drums)

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