ライヴでのアヴェレージをまだまだ上げていきたい
──1月に初の東京でのライヴを体験して、4月にはファースト『悲しい耳鳴り』を発表、それに伴うレコ発ツアー<その音は虹のように美しい>を敢行と、メキメキと頭角を現してますが。
安部コウセイ(Vo&G) 俺ら、余り目標みたいなのがないんですよ。CDも初めからそんなに売れるとは思ってないんですけど…でも思ったより少しは売れてるのかな? どうなんかな?
──評判は凄くいいじゃないですか。
コウセイ そう言われるんですけどね、直接俺らの耳には入ってこないんですよ。“ホントなんかな!?”っちゅう。天狗になろう筈もなく(笑)。
──でも、CDを出した後のライヴの反応はそれまでと随分違うんじゃないですか?
中山昭仁(Ds) 地元の福岡じゃそんなに変わらない。相変わらずですよ。
伊東真一(G) 「演奏力が上がった」とか「巧くなった」とかは言われますけど…。
コウセイ ああ、それは言われる。「歌巧くなった」とか。でも、ライヴはまだまだですねぇ。アヴェレージがまだまだ低いというか。5月にfOULの<砂上の楼閣>に呼んでもらった時も、テンションだけで持ってった感じですからね。それはそれでアリなんですけど、まだ演奏が甘い。メンバーのなかにいると下手なのがよく判るんですよ。
安部光広(B) 録ってもらったライヴのビデオも後から見れないですよ。
コウセイ 堪んないですね。お互いを罵倒し合ったりして(笑)。
──今はライヴをやりつつ、新曲を仕込んでる段階ですか?
コウセイ そうですね。この取材の後もリハなんですよ。新曲は『悲しい耳鳴り』の時とはまた違う、よりポップな感じですね。ずっと俺はポップな曲を書きたくて試行錯誤してきたんですけど、どうも取って付けたようなものしか出来なくて。でも、今度の新曲に「サイレント」という曲があるんですけど、この曲辺りから割と、地に足の着いた自分のものになった感じがあって。そこをもうちょっと突き詰めていきたいんですよ。新しい音源は来年の春には出したいですね。
──現時点で言うと、『悲しい耳鳴り』の出来は100点満点で何点くらいですかね?
コウセイ あれは…30〜40点くらいですかねぇ。…うん、いろんな面を考えるとそれくらいですよ。でも、そんなに低い点を付けると一緒に仕事をしてくれた人が泣くんで(笑)、あくまで自分たちのなかでの点数ですけどね。正直言って、あれを作ってる時はまだしっかりとしたヴィジョンが見えてなかったんですよ。エンジニアの人とかにもっと自分たちの意見を言っても良かったんじゃないか?
って。サウンドもああいうちょっと古い感じで、あれはあれで雰囲気もあるし統一感があって凄くいいと思うんですけど、次はもっとハイファイな、硬質な音でやりたいですね。音がもっと分離した感じで。
──東京で定期的にライヴをやるようになって、固定ファンも付いてきたんじゃないですか?
光広 うーん、そうかもしれないですけど、僕たちは余りファンと接触がないもんで、誰が僕たちを観に来てくれたかっちゅうのは目には見えてないんですよね。
──SPARTA LOCALSのファンは本人たちへダイレクトに感想を述べよ、と(笑)。
光広 そうですね、もうちょっと接触してきてほしいですよね。
コウセイ 何だか俺ら、ファンからは怖がられてるみたいで(笑)。
──音に対して真摯なイメージがあるからじゃないですかね?
コウセイ 前のアー写、俺、宍戸 錠みたいやしね(笑)。ほっぺたブルンッブルンッですから(笑)。
──でも、今年の<FUJI ROCK FESTIVAL>の《ROOKIE A GO-GO》への出演も決定したり、着実に認知されてますよね。
コウセイ 嬉しいんですけど、恥ずかしいんですよねぇ。各方面から「<FUJI
ROCK>出るらしいね!」とか「“フジロッカーズ”や〜ん!」とか言われるので(笑)。
──SPARTA LOCALSは3日目出演だから、コウセイさんの大好きなTELEVISIONは初日で観れないですね(笑)。
コウセイ そうなんですよ! 「考えてくれよ!」と(笑)。
「伝わるものは伝わるやろ!」って確信した
──東京でライヴをやるようになって、刺激を受けたバンドとかいますか?
コウセイ fOULです!(即答) 俺たちからしたらfOULって、ずっと上のほうにいる人たちなんですけど、メンバーの皆さんが凄く気さくで…。やっぱりあの人柄ですよね。こんなこと言ったら語弊になるかもしれないけど、音もろくに聴いてないのに電話番号をいきなり交換し合ったりとかいう“お友達感覚”みたいなのが俺らは凄く厭なんですよ。「それ違うやろ!」と思ってしまう。俺らはまだ企画力もないし、自分たちでイヴェントも出来ないですけど[註:6月に初の自主企画<ガランコロン>を福岡で敢行]、通
常のブッキングでライヴをやっていても“伝わるものは伝わるやろ!”と思ってるんです。ただその反面
ではそれが正しいのかどうかという気持ちもあったんですけど、fOULの方々と打ち上げの席でそんな話をした時に“やっぱりそれで正しいんやな!”って確信が持てたんですよ。おこがましいですけど、他のバンドで初めて“おお、同志やな!”と思えたんです。まぁ、こっちが勝手に思ってるだけなんですけどね(笑)。あとは、惑星とか好きですね。ああいうロックンロールであそこまで説得力のあるバンドって観たことなかったですから。ジャンルを超越していいと思いましたね、惑星は。またベースの清水(義将)さんが凄くいいキャラですよね。「あのブン殴るようなベースの音、何なんですか!?」って突然訊かれたことあるんですよ。“ブン殴るようなベース”って…あれは名言ですよ!(笑)
──シェルターで行われる今度の<LION TIGER Vol.1>では、BAZRA、MOOOLS、the
blondie plastic wagonというまた個性派バンドとの共演ですね。
コウセイ あ、そうそう、俺、MOOOLSも好きですよ。福岡で一緒にライヴやった時はたまらんかったですね。ああいうポップな感じは凄い好きなんで。
──余り多くのバンドと同じハコでやるより、SPARTA LOCALSは2マンくらいでじっくりと観たいですね。
光広 うん、一緒にライヴやるのは3バンドくらいが僕は理想ですね。
コウセイ 例えば<砂上の楼閣>で凄くいいのは、登場するバンドが少ないところだと思うんですよ。じっくり観ることができていい。でも、俺らが<砂上〜>に出た時は2マンっていうプレッシャーが半端じゃなかったですよ(笑)。
伊東 2マンって聞いて、耳を疑ったもんなぁ(笑)。
──しかもサブタイトルが“スパルタクスの反乱”でしたもんね。
コウセイ どんどんブッ潰しにかかってる(笑)。
──そもそも“SPARTA LOCALS”っていうバンド名の由来は何なんですか?
コウセイ 特にないんですよね。何か意味を付けたほうがいいですかねぇ?(笑)
──他にいくつか候補があったんですか?
コウセイ …“シニカル・キャバレー”とか(笑)。それ、曲名にはなったんですけど。
光広 “SPARTA LOCALS”と“シニカル・キャバレー”とで苦渋の選択やった(笑)。
コウセイ 俺がベッドの上でずっと考えてて。その2つを持ってったら皆シッブイ顔したもんな(笑)。で、「どっちかって言ったら“SPARTA
LOCALS”かな?」って。俺はもうバリバリ恰好いいと思ってて。じゃ、由来は“スパルタ地方”ってことにしましょうか?(笑)
光広 出身は福岡じゃなくてスパルタ地方ってことで(笑)。
──あと、SPARTA LOCALSはCDのジャケットやフライヤーにあるコウセイさんのイラストが凄く印象的ですよね。
コウセイ そうですね、昔はイラストレーターになろうかなとも思ってましたよ。
──やっぱり血ですかね?[註:安部兄弟の父上は70年代に『ガロ』などで活躍した漫画家の安部慎一氏。代表作に『やさしい人』『ピストル』等]
コウセイ ウチのクレイジー・パパですか?(笑) 無頼派の末裔ですからね、親父は。「俺は無頼派だ!」って自分で言ってますけど(笑)。
──でも集めたくなるようなフライヤーですよね。
コウセイ そういうのを凄く意識したんですよ。他のフライヤーを見ると恰好悪いし、ただコンピュータ使って作るのも安易やないですか? やっぱり視覚効果
として重要というか、こういうのも表現の場であると思ってるんで。こういう絵から“どういう音なんだろう?”って興味を持ってもらいたいし。手書きの本気さを伝えたいんですよ。
──年内の音源仕込み、“レインボーサウンド”が今後どう進化するのか期待しております。
コウセイ はい。演奏力を向上させて、いいライヴができて……それで普通
の生活ができれば(笑)。
──バンド屋になった時点でもうカタギには戻れないじゃないですか(笑)。
コウセイ そうなんですけどねぇ…。取りあえず貯水槽を洗う仕事からは脱却したいです(泣)。
──その悲哀を歌にして…ブルースそのものですね(笑)。
コウセイ 根底に悲しみがあるのがSPARTA LOCALSの音楽ですから(笑)。■■
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