◆若手と探りながら話していくのが面白い
――まず、『笑魂伝承』は振り返ってみてどんな感じですか?
洋七 もう6回やろ? そりゃ無茶苦茶おもろいな。これが何かに繋がればいいなと思ってる。
――今回、テツ and トモの回を観てても思ったんですけど、やっぱり真剣な話ができるってのがいいですよね。
洋七 そうそう。時間も関係ないし、テレビ的なことじゃないからな。テレビなんて、枠決まったらそこまで話せないことあるし。
――じゃあ、このイベントの一番の魅力ってのは、そこですかね?
洋七 そう。タレントのゲストを完全にばらしてしまえる。
――楽屋とかでは、師匠クラスになると若手は簡単に喋れないですからね。
洋七 せやな。向こうがな。俺は別にええねんけど。舞台になれば、話変わってくるからな。若手あんま知らんけど、そこを探りながら話していくのもおもろいねん。
――で、やっぱり芸人のほうが絡みやすいってのはあるんですか?
洋七 そやな。ツッコミ、ボケを知っとるからな。
――僕が観てて思ったのは、2回目の大槻ケンヂさんの時はあんまり噛み合ってなかったなぁと思ったんですけど。
洋七 噛み合わんでええねん、ああいうのは。ミュージシャンやから。お互い訊いたり、訊かれたりで。そんな、漫才みたいにはならへん。あれでええ。充分オッケー。そんな、ずーっとミュージシャン捕まえて笑わされへんからな。
――個人的に一番面白かったのは、浅草キッドの時に、漫才ブームの裏側の話やたけしさんの話が聞けたことですわ。
洋七 まぁ、俺も一番よく知ってるからな、浅草キッドは。玉袋、預かってたからな、半年くらい。
――そうなんですか?
洋七 弟子の頃、「洋七、預かってくれ」ってたけしに頼まれて。あいつら、最初から漫才希望やったからな。「漫才やるんやったら、洋七んとこ付けぇ」ってな。軍団には、漫才するような奴おらんかったからな。目立ったらええと思っとる軍団やから。だから、やっぱり確実に残ってきたのは浅草キッドやろ? ちゃんと、芸をな、10年かかってもコツコツコツコツやってきたからや。他、何処おるかわからん奴一杯おるがな。風呂入って「熱ち熱ち!」とか。前から言うとってん、たけしが。「お前ら、芸せんか!」って。でも、誰もせーへん。苦しいからな。しんどいから。で、今になって「どーしょう、どーしょう」って。やっぱり、ちゃんとしとけば役たつねん。
――今後は、大御所同士の絡みも観たい気がするんですけど。
洋七 吉本以外やったらええけどな。吉本やったら、みんな知ってるもん。きん枝兄やん、呼んで何訊くねん?
ってな。「おまえ、よう知っとるやないかい!」で終わりや。
――たけしさんとか、プライベートで仲いいじゃないですか? でも公の場で絡んだのって『たかじん
NO バー』【註2】くらいですよね?
洋七 あれくらいやろな。あと、『北野ファンクラブ』で漫才やったけど。でも、イヤやなぁ。何かイヤやなぁ。
――大御所同士の絡みって面白いと思うんですよ。『松本紳助』も、番組の内容以前に松本(人志)さんと紳助さんの因縁を背後に感じますから。
洋七 あれはおもろいな。あれで、松本ポイント上がった思うで。先輩の前では敬語になるやろ? ちゃんとしてはるってイメージが世間についたわ。本当は視聴者に見したらあかん一面
かもしれんけどな。
――他には、越前屋俵太【註3】さんとか、凄くプラスワン的な感じするんですけど。
洋七 俵太、遠い所住んでるやろ? 京都の。呼ぶの大変や。ロフトは儲かりもせんのに(笑)。なんぼか払わな、あんまし言いにくいて。みんなやってみたいよ。いくよ・くるよとかああいう所で喋ったらどうなんのかな?
って思うけど、年間6人やからな。ふた月に一回で、やっぱり難しいな。
◆ますだおかだの優勝は妥当やな
――で、“M-1”【註4】の話をしたいんですけど。ゲストに来てくれた人で決勝まで残ったのは、ますだおかだとテツ
and トモじゃないですか。実際に審査員として出てみて、あの大会はどんな感じでした?
洋七 やっぱ、優勝は妥当やな。漫才ってくくりをつけたらな。ただ、よーいどん笑わし大会やったら、違ったかもわからん。
――漫才抜きでほんまにおもろい奴を決めたら、ですか?
洋七 でも、あん時はあれしかなかったな。
――ますだおかだだけ? 正統派と言えば正統派ですね。
洋七 あとは、好き嫌いの問題や。結構、緊迫してるから。ただ、テツ and
トモを漫才と取んのかどっちかみたいなところがあったから、審査員みんな引いてただけや。
――みんな、引いてたんですか?(笑)
洋七 一応、漫才グランプリやからな。吉本的に言えば、漫才に楽器はいらんねん。「喋くりせんか!」ってな。
――師匠、基本的に点数は高かったですよね。点数って、どういう基準で付けられました?
洋七 やっぱり、レベル高いところで決勝させてあげなな。せっかく1,750組から選ばれてんねんから。とりあえず、70点が普通
かなって。
――低い点数とか付けたりするのはダメですか?
洋七 決勝戦でな、60点、60点、60点…やったら決勝戦ならへんやろ? 80点、90点付けて、観てるほうにも「おお、上手いな」って錯覚させな。決勝戦やけど、ひとつのショーやねん。バラエティやねん。それをな、50点とか55点とか付けて「下手!」とか言うべきものちゃうやろ。客、引いてたもん。
――画面からでも伝わってきましたよ。(西川)きよし師匠、凄いフォローしてましたもんね。
洋七 そうやろ。ああいうのは良くない。大概や。己が受けたいと思ったら、大きな間違いやからな。変わってるわと思うわ。受けたかったんちゃう? 向こうを盛り上げな。こっちは有名人ばっかりやねんから、そりゃ盛り上げようと思ったら盛り上がるかもしれんけど。こっちは、審査員やって。自分らが出て来る時にああゆうこと言われてみ、冗談でも。「おもろない」とか「出て来るようなものじゃない」とか。
――みんな、凄い緊張してますよ。
洋七 そうやねん。それやて。みんな緊張して、ドキドキやねん。誰も舐めてかかってきてないねん。あんなん、ミスキャストやって。書いといて。
――紳助さんが選んだんじゃないんですか?
洋七 いや、そうじゃないと思うよ。
――師匠には紳助さんから直接オファーが来たんですよね?
洋七 まぁ、兄弟弟子【註5】やからな。「兄さん、頼んますわ」言われたら、断られへん。まぁ、断る理由もないしな。漫才やっぱ、好きやし。
――(中田)カウス師匠と点数が似てたのは?
洋七 席、隣やったから、「何点ぐらいやと思う?」って毎回訊かれてたな。意見交換や(笑)。でも、ガチンコやったから、おもろかったよ。
◆漫才って、やっさんじゃないけど 何でもできんとあかん
――“M-1”以外で、最近の若手はどうですか?
洋七 キングコングとかが、漫才の間を覚えたらええやろな。ギャグに走ろう、走ろうとしてるからな。品川庄司はイチ押しや。テンポええし、声デカいのは武器やで。おぎやはぎとかは声小さいねん。声を上げて、ボソボソ喋る方法もあるねん。吉本新喜劇見てみいよ。あれじゃ笑い取れへん。やっぱり、技術なんて素人が見てもわからへんことやからな。終わってから「声、上げぇ」言うてあげたがな。
――品川庄司は関西弁じゃないというこだわりはないですか?
洋七 別にないな。タレントとしてテレビよう出てるけど、「漫才もおもろい」と言われなあかんわな。
――笑い飯はどうでした?
洋七 もっと、勉強せなな。一発、ポコっとハマっただけや。それだけの話。薄いわ。こないだ一緒に番組出たら、滑ってたもん。むっちゃ漫才こけてた。すぐ出したらあかんよ、会社も。せめて、あと2年くらい頑張らさな。
――ダブルボケってのは、新しいって言われてますけど。
洋七 新しないよ。昔からあった。皆見てへんだけや。ダブルボケ言うても、どっちもツッコんだりしてるしな。自分らで、ダブルボケっていう売りを作ったのは偉いな。やってることは一緒。俺なんて、ツッコミボケや。ネタもふるし、ツッコむし、ボケるし大変や。真面
目なこと言うて、ドーンと落とす。でも、落ちたらそれは大きい。人がふるんじゃなくてな。説得力があるから落ちるねん。いかにほんまみたいな顔をして、オチを平然と言うんよ。「ボケまっせー」言うてボケても、笑いが半減するからな。だからそこに、フットボールアワーはワーっと笑われへんところがあるんよ。もう、ボケるのがわかるからな。漫才ってな、やっぱ、やっさん(故・横山やすし)じゃないけど、何でもできんと。ツッコミもわかっといて、ボケてみたりするから、おもろいねん。
――予定調和ですもんね。
洋七 今頃のは、型決めたらそれだけ。フットもボケたら、ボケただけ。まぁ、まだ7年目やからな。センスはええねん、あのネタの作り方は。決勝戦のネタでボケが違うパターンを持ってきてたら、優勝してたやろな。
――ネタ自体は嫌いではない?
洋七 嫌いちゃうよ。あれは上手い。いとし・こいし【註6】みたいなもんや。
――いとし・こいしですか?(笑) 最高の例えですね。で、最後なんですけど、もし漫才ブームの時に“M-1”的なものがあったとしたら、優勝は誰がしてたか予想できます?
洋七 俺やな。B&B。絶対優勝してるわ。■■
【註1】『オレたちひょうきん族』終了以降で、この2人が絡んだのはほぼ皆無。上岡龍太郎と笑福亭鶴瓶の『パペポTV』の最終回での2人の絡みは伝説になっている。
【註2】関西の雄、やしきたかじんがホスト役を務める番組。最終回でビートたけしをゲストに迎え、たかじんが媚びへつらう姿は多くの視聴者を失望させた。
【註3】『探偵ナイトスクープ』の探偵として有名。洋七師匠の企画した映画『THE
HEART MAN』の監督でもある。
【註4】島田紳助が提案した、漫才のNo.1を決める大会。優勝賞金は1,000万円で、第1回の優勝者は中川家であった。
【註5】研究熱心な島田紳助は島田洋七の喋りを盗むために、同じ島田洋之助師匠に弟子入りしたのである。
【註6】夢路いとし・喜味こいし。上方漫才の大御所。平成11年には大阪市指定無形文化財に認定される。
吉本興業 presents
B&B・島田洋七の笑魂伝承vol.7
〜ゲスト・ハリガネロックと激笑トーク対決!!〜
2003年4月1日(火)新宿ロフトプラスワン
【時間】19時開場/20時開演
【チャージ】2,000円(飲食代別)
*前売券は3月2日より発売開始!
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