らもはだ司会=大村アトム
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第一回=ガンジー石原
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第二回=大槻ケンヂ
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ポカン。
ロフトプラスワンで行っている「らもはだ」の開演間際はいつも、こんな感じがある。だたっ広いのっぱらに放り出されたような気分だ。
らもさんのゆっくり繰り出される渦のある言葉、それを待つ間がはじめ戸惑いを感じさせるが、あまりにも広過ぎて、自分がどこにいるのかはじめにはわからなくなる。四方八方に広がる中島らもという人間を、ゲストという座標軸をもとに鮫肌文殊と大村アトムと泳ぐこと、これが「らもはだ」のイベント性なのかもしれない。そんな不定形娯楽施設広場「らもはだ」。実は活字という形になることを前提にしている。
そして『It's a Only Talk Show』という本になった。 この本が形になり、今私の手にあること、関わらせてもらったことを感謝して、いままでの「らもはだ」を振り返りたい。
哀しくも愛おしい
●第一日目のゲストは、らもフリークにお馴染み、ガンジー石原。リリパットアーミー旗揚げに参加、現在は「オオサカシックレコード」の連載等ライター&エディターとして活動をしている。途方にくれるような、この顔力で伝わるだろうか。もはや人を超えてお地蔵さんの佇まい。見る者を哀しくも愛おしくさせる。
らも「チャーハンライス事件。チャーハンやったら大盛りを頼んだらいいじゃない。おそらくはチャーハンをおかずに見たててご飯を食べるという作戦だと思うけど、なんでそんなことするん?」
ガンジー「白いご飯が好きやから。チャーハンいっぱい食ってもあかんでしょ。」
らも「……(笑)」
トークライブ「らもはだ」はここから始まる。
text:斉藤友里子(ロフトプラスワン)
らもズチルドレン
●続いてのゲストは、いわずもがな大槻ケンヂさん。親子を思わせるような関係性が。バンドシーンの話から、エロビデオ借りる時はどうする等、大槻さんと鮫肌さんが盛り上がる中、途中トボけたふりして大槻さんの表情をみているという、らもさんの父性とらもさんには嘘をつけなさそうなオーケンが微笑ましい回。
らも不在1 タイで足を虫にさされ 欠席
●三回目にして欠席。なにが起こるかわからない人だと再確認。
主賓級不在でイベントを行うのもプラスワン初ではないかと思う。
ザッツ無礼講 ピンチヒッターとして、オーケン参加。ゲストに作家の室井佑月さん、飛び入りでキッチュさんこと松尾貴史さん。
「ダメよ! そんなんじゃ!」と男性陣に渇を入れる室井さん無礼講な酔っぱらいぶりに、タジタジ。
いい男たち
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第四回=仲畑貴志 |
●「おしりだって、洗ってほしい。」等数々のコピーを生む、コピーライターの仲畑貴志さんのゲストの回
仲畑「春になって芽吹き始めると、その葉っぱが手の大きさになるまで生きようなんて想いながら歩くんだよね。そうしないと危なくてしょうがない。らもちゃん、そういうことってある?」
らも「ある。」
仲畑「じゃ俺も鬱なのかな」
らも「うん。仲畑さんも内面がピュアだから傷ついてることたくさんあるわけよ。ストレスがいっぱい蓄積してて。で、ストレスがたまったら、どうしたらいいかというと、野蛮なことをしたらいい」
〜略〜
仲畑「道を歩いていると、すぐドツきたくなる衝動ってそれかな?」
人は時がたてばいつしか角がとれ丸くなっていくものという通説が、当てはまらない男たちが目前にいた。
恋しさ健気さ?
第五回=ムッシュかまやつ |
●また本書の次回号に掲載予定だが、井筒監督と本上まなみさんも登場した。井筒監督は仲畑さんに続く男臭のある回だったが、本上さんの回は一点して、恋しい気持ちになるくらい、かわいらしいらもさんを見ることになる。彼女のために曲を作り、おもちゃのピアノで演奏も行った。
楽屋で「喜んでくれるやろか……」と恥ずかしそうに訊く、らもさん。めちゃくちゃかわいかった。しかし健気というか、マメ? モテの秘訣か。
ロックンロール ラブ らもさんの熱烈なラブコールに応えての登場となったムッシュかまやつさん。本上さんとはまた違ったラブラブ具合はロックギター少年。男にも惚れてこそ、男なのか。
アトム「らもさんよう喋りますねェ。」
鮫肌「いつもの倍ぐらい喋ってるね(笑)」
いがみあっているようにみせかけて 往年の漫才師
歌手『火垂るの墓』等作家の野坂昭如さんがゲストの回。ぷい、と外を向く一枚。別
にケンカしていた訳じゃない。センスに信頼があるもの同士の漫才というべきか。トークの応酬に、会場笑いつつも圧巻。
野坂「『お笑い人生相談』だっけ。あれは非常に面白い回答のしかたでしたね」
らも「いやぁ、野坂さんの『ホテルの墓』もよかったですよ」
アトム「そんなレベルのケンカせんといてくださいよ。」
そしてロックンロール
第六回=野坂昭如 |
鮫肌さんのイラストコメントにもあるが、らもさん「原発反対!」と途中「電気全部消してぇ」と会場中の電気を消し、真っ暗な中でギター演奏をしたハプニングも。「アンプも電気」とつっこみも忘れない、ツメ具合。
野坂さんがゲストの回の終演。ふと、らもさんの顔をじっとみていたら考えたくもないことを思ってしまった。
どっかにいっちゃうんじゃないか。
仕方がないような、でもそうしてほしくないと胸に気持ちが詰まった。と思ったら逮捕。不謹慎かもしれないが、ああよかったのかもしれないと思った。大麻とかを持っていて、誰かにらもさんが裁かれるのは、私個人は馬鹿馬鹿しく思っている。でも、ああ、言葉を嫌でも使わなくちゃいけない所へいなければいけないのなら、らもさんはきっと地面
にいてくれる。
この本を手にして、文字を追えば、ますます実感した。
悲しさも、情けなさも、愛しさも、恋しさも、野蛮さも、ズルさも、若さも、老いも全部の気持ちに正直な人間。流れ込んでくる自分や人の想いを見つめるだけで日がくれちゃう。そんな面
倒すぎる作業を、らもさんは日々しているのかもしれない。そして、鮫肌さんやアトムさん、ゲストの人たち、主催のダ・ヴィンチの岸本さん、らもさんの周囲にいる人たちも。でも、みんなその面
倒を、笑いをもって、やっている。そんなオトナがいてくれると思うと、この世にいることが「ああ、よかった」と思えて仕方がない。まだまだ、いてもらわないと困ります、らもさん。早く帰ってきてね。
取材協力(最大の感謝を込めて)
ダ・ヴィンチ 岸本亜紀
イラスト 鮫肌文殊
写真 北島元朗
(C)メディアファクトリー
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