SxOxBは世界的に最も影響力の大きい日本のバンドだ。特に90年代以降のバンドに対しては確信をもってそう言い切れる。今国内のライヴハウスで活動しているファストなバンドを観ても“SxOxBチルドレン”は無数だ。SxOxBはパンク/ハードコアをベースにしつつ、スラッシュ・メタルやデス・メタルも飲み込んで進化したから各シーンに支持者が多い。決してスタイリッシュに陥らず、まさにパンクな発想で自由に音楽をクリエイトし、期せずしてグラインド・コアやファスト・コアの先駆者となり、ジャンルも国境も超えて既成の壁をデストロイしてきた。
SxOxBは1985年に、トッツアンを中心として大阪で結成される。無論DISCHARGEなど英国のハードコア/パンクにも衝撃を受けたが、さらに速いMINOR
THREATやDEAD KENNEDYSなどの米国のパンク/ハードコアの速さに触発され、トッツアンが始めた。その後メンバーがナオト(b)、セキ(g)、ヤスエ(ds)となり、80年代後半の日本のハードコア・パンク・レーベルを代表するセルフィッシュから、86年12月にファースト7"
EP『Leave Me Alone』を発売。当時の宣伝文句は“世界最高速”だったが、それもあながちウソではなかった。当時ヤスエはS.O.Dの速さも意識したそうだが、NAPALM
DEATHがファーストの『Scum』をまだ出していない時期だし、ブラスト・ビート使用の先駆的なSIEGEやLARMにしても音源を聴くのが困難な時代だ。それを考えれば、衝撃の大きさは想像できるだろう。また、裏ジャケットにはキャップ+スケボーといったスラッシャーなメンバー写
真もあり、いわゆるファッション的にも日本のシーンのなかで先を行っていた。要するに、グラインド・コアやファスト・コアの原形であるとともに、日本におけるスラッシュ(メタルのほうではなくパンクの流れのほう)の先駆けとも言えるのだ。
87年にはセルフィッシュからファースト・アルバム『Don't Be Swindle』を発表。その頃トッツアンは、NAPALM
DEATHの『Scum』のサンクス・リストにSxOxBの名も列記されていたことを契機に、リー・ドリアン(当時NAPALM
DEATH/現CATHEDRAL)と手紙のやりとりを始めた。それは89年のSxOxBの自主レーベルであるサウンド・オブ・ベリアル発のNAPALM
DEATHとのスプリット・ソノシートや、NAPALM DEATHとの欧州ツアーへと繋がる。そのヨーロッパ・ツアーでの経験はSxOxBの視野を何倍にも広げることになった。
ベーシストがカワタカに代わり、90年も精力的に活動を続行。そして秋には再度ヨーロッパ・ツアーを行い、CATHEDRALを始め、英国のDOOM、AGATHOCLES、ENTOMBED、E.N.T.、AGNOSTIC
FRONT、SAINT VITUSらとライヴをやった。無論、日本のバンドとしては初めて『ジョン・ピール・セッション』に出演したことも重要だ。そして12月には、セルフィッシュからセカンド・アルバム『What's
The Truth?』をCDで発売。リー・ドリアンのライズ・アバヴからLPでも同時発売された。海外でライヴをやった影響か歌詞が全て英語になり、よりシリアスな内容が増えた。音楽的にはスラッシュ・メタル/デス・メタル色が強まった。
SxOxBはデス・メタルをじっくりと消化し、満を持して93年3月にトイズファクトリーからサード・アルバム『Gate
Of Doom』を発表。ミックスはDISCHARGE、NAPALM DEATH、CARCASS、BRUTAL TRUTHを手掛けたコリン・リチャードソン、ジャケット画はDEATHやMASSACREの作品も描いたエド・レプカ。確かにデス・メタル・アプローチだが、トータルで見てどこにもないヘヴィ・ミュージックな仕上がりで、歌詞も精神世界的なものになっている。当時はこういう系統の日本のヘヴィ・ミュージックがメジャーのレコード会社から発売されたこと自体異例で(COCOBATのメジャー第1弾作よりも早い)、活動展開方法においてもSxOxBはイノヴェイタ−だった。94年2月にはコリン・リチャードソンをプロデューサーに迎え、英国にて4枚目のアルバムのレコーディングを行う。7月に『Vicious
World』としてリリースされた作品は、大元のルーツであるパンクのグルーヴ感が加わり、ヘヴィだがポップでもあるSxOxBらしいサウンドとなった。
しかし95年6月、トッツアンが自殺。リーダーの死によってSxOxBは解散も考えたが、まもなく再始動を決意。96年には、SxOxB脱退以降RISE
FROM THE DEADを率いていたナオトがヴォーカリストとして復帰。サンプラー/キーボード担当のメンバーも加えた5人編成で、実験的な音作りなどの試行錯誤を繰り返し再度4人編成となり、当時バンド活動休止中のセキに代わってカツミ(元OUTO/現SOLMANIA)がゲストでギターを弾き、99年にスペシャライズドファクトより5枚目のアルバム『Dub
Grind』をリリース。音的にはセキ不在でナオトの影響なのかメタル色が薄れ、打ち込みでの音作りも加味。しかし2000年3月、新宿ロフトのライヴをもって自分のバンドRISE
FROM THE DEADに専念するために再びナオトが脱退。その後SxOxBは、多少スタジオに入ったとはいえしばらくの間活動はほとんど止まっていたが、2002年10月、ファスト・コア系バンドだった滋賀県のバイパスの元ヴォーカル、エツシが加入。まもなく新編成でレコーディングを行い、2003年1月に東芝EMIから発売のコンピに新曲を提供。3月には大阪で復活ライヴを行い完全復活を果
たす。現在SxOxBの音源はほとんどが廃盤になっている為、9月に今では入手困難になっている初期の曲を中心に新ヴォーカルのエツシを迎えて全25曲を再録。セルフカヴァーによる初のベスト・アルバム『Still
Grind Attitude』を発売した。
SxOxB mini interview @ なんばHatch / 2003.9.13 (sat)
SxOxB are... YASUE (ds), ETSUSHI (vo), SEKI (g), KAWATAKA (b)
──94年発表『VICIOUS WORLD』以降、NAOTOさんの加入により音楽性がかなり変わっていったと思うのですが、新ヴォーカリストETSUSHIさんの加入で以前の音に戻った経緯を教えて下さい。
YASUE「NAOTOが入った時点で…その前にRISE FROM THE DEADやってたでしょ。その感性も活かしつつ、NAOTO個人の感性も活かしつつ。NAOTOの声質とかで考えるとヘヴィなものでもないというのもあったし、初期の『LEAVE
ME ALONE』とかあの辺のニュアンスっていうのがNAOTOが帰ってきた時点であったし、その辺の音でやっていこうかと。キーボード入れてNAOTOがサンプラー使いつつギター弾きつつ、まぁ今までにない音を…。ちょうどその時、NAOTOと僕が現代音楽にハマってて、その要素をいろいろ採り入れていったんかな。そのなかにもグラインドの要素を採り入れてんねんけど、ヘヴィさは薄れてたかな。NAOTOが抜けた時点でヴォーカル探しててね、ETSUSHIと出会って彼の素声が結構太いさかいね、いっぺんウチでやってみいひんかっていう話をして、スタジオでリハーサルしてSxOxBの旧曲を唄ってもらって、なかなかドス効いてる声やから、これは以前に戻せると思って。ヘヴィさを求め始めたんかな、また。やっぱりヘヴィ&グラインドかな。もうこの先もこれでやっていくつもりです。他にも音的要素は採り入れると思うけども…。だいぶ冒険した! 長かった!」
──約10年ですもんね。
YASUE「何をしよう、次は何をしようと、メンバー全員手探りでやってたと思う。決めごと嫌いやさかいに、その結果
があれやったんかなぁ。でも悪いっていうのは僕らにはなくって、それなりに面
白い冒険できたと思ってる!」
──ベスト盤のアルバム・タイトル『STILL GRIND ATTITUDE』の意味を教えて下さい。
YASUE「ええやん! 何でも(笑)。トータル決算! 言うたら今までの音の、グラインドやり続けてきてこれからもやっていくだろう、その精神!
これはETSUSHI加入で出来たタイトルやねん。この看板背負ってやっていく。永遠的なものかな」
──ジャケット・デザインについて教えて下さい。
YASUE「80年代から始めてるバンドやさかいにメンバー自身もオールド・スクールなのが好きなのもあって、クラスだのディスチャージだのコラージュ物のジャケットが好きで。それにSxOxBらしさのデスっぽい感じに、今までの作品には必ず入れてきたドクロと手は絶対外せないので今回も入れてます」
──最近聴いてるバンドとかあったら教えて下さい。
YASUE「ソイルワークかな」
──それは何人ですか?
YASUE「モンゴル人。ウソ(笑)。 北欧のメロディック・デスでもないけど…他は古いけどマイナースレートとかメロコアのルーツかな。トータルでスラッシュっていうジャンルがあってんけど、S.O.Dとか出てた時のなかの一部のバンド。あと何気なくいつも聴いてんのはスカやで。マッドネスとか好きやな」
SEKI「よく聴いてんのはトランス」
KAWATAKA「80年代のA.O.Aとかクルシフィックスとかメタリカ。あとロックステディ系。好きなラーメン屋は豚龍(京都)」
ETSUSHI「関係ないやん、そんなん!」
──またヨーロッパとかへの海外進出も考えていますか? リー・ドリアン(ナパーム・デス初代ヴォーカル)とか今、何やってるんですか?
YASUE「クレープ屋。ウソ(笑)。行きたい気持ちはいつでもあるけど、時間と機会があればって感じです。ナパーム・デスとのヨーロッパ・ツアーも、あれは80年代、90年代でやったことで、また新たな方向も考えたいです」
──今回の作品は再録のベスト盤ですが、次回の新作に期待が集まっていると思います。予定は?
YASUE「今月、来月ぐらいから新曲作って、これから新生SxOxBのスタンスを確立していって、次はフル・アルバムを来年頭ぐらいに出せたらいいかな」
──アルバムの内容はどんな感じになりそうですか。
YASUE「新作に関してはグラインドっていうことと、ブラスト重視されてるパートとロー・テンポを同じぐらい考えていこうと思っています」
ETSUSHI「まだ曲にはなってないけど、セッションっぽく作っています。『GATE
OF DOOM』(3rd アルバム)とかあの辺が自分の声にも合ってると思うし…」
YASUE「でも、これからは自分の歌い方でいけるから」
──歌詞はETSUSHIさん担当ですか?
ETSUSHI「そうです。歌詞と並行して早くメロディを考えたいです」
──既に今年1月に発売されたコンピに現メンバーで新曲を発表しましたよね。
YASUE「実は1曲でクレジットされてるけど本当は2曲で、あれはSEKIが作った曲。それを全員でアレンジしてリズムを俺が考えて、歌詞と歌はETSUSHIに任した」
──今までの作品も大半をYASUEさんが作曲していることと、強力なヴォーカルETSUSHIさんが加入したことを考えると、次のアルバムはトッツアンの頃の作品を超えるクオリティの高い作品が出来るような気がしますがどうですか?
YASUE「僕自身も凄い期待している部分もあるし、可能性がかなり広がったっていうのは言い切れるね。キー・ポイントはETSUSHI!」
──最後に大阪と東京のレコ発ライヴの意気込みを聞かせて下さい。
ETSUSHI「音源よりいいライヴ魅せます!」
KAWATAKA「久しぶりのワンマンやし、気合い入れて頑張るんでみんなも気合い入れて観に来て下さい…観に来てね…観に来いよッ!!! ちょっと偉そうかな」
SEKI「ラウド・ミュージックのなかにもヒップホップが入ったり、メロディックとか細分化したジャンルのなかにもまだ壁があると感じるし、それしか聴かへん人とかいるやん。またルーツ的なものにも目を向けて興味を持って観に来てほしいです。自分らも全力でやるのでいろいろ体験して感じてほしいです」
YASUE「音の面とライヴ・パフォーマンス、圧倒的な演奏を魅せますので乞う御期待! 行くでノリノリで」
★Release
SxOxB DISCOGRAPHY
◆V.A.『LAST PUNK OSAKA』(BEGGARS CONNECTION/'86年)
◆1st 7"EP『LEAVE ME ALONE』(SELFISH RECORDS/'86年)
◆V.A.『消毒GIG全国HARDCORE PUNK選抜大会』(SELFISH RECORDS/'86年)
◆1st Album『DON'T BE SWINDLE』(SELFISH RECORDS/'87年)
*'92年に『LEAVE ME ALONE』とカップリングCDとしてTOY'S FACTORYから再発
◆V.A.『MY MEAT'S YOUR POISON』(加害妄想/'87年)
◆S.O.B階段『NOISE VIOLENCE & DESTROY』(ALCHEMY RECORDS/'88年)
◆V.A.『EYE OF THE THRASH GUERRILLA』(SELFISH RECORDS/'88年)
◆ソノシート『SxOxB & NAPALM DEATH SPLIT』(SOUNDS OF BURIAL/'89年)
◆V.A.『TASTE OF WILD WEST.1』(徳間ジャパン/'90年)
◆無料配付ソノシート『SOUNDS OF BURIAL PRESENTS』(SOUNDS OF BURIAL/'90年)
◆2nd Album『WHAT'S THE TRUTH』(SELFISH
RECORDS/'90年)
*'94年に『SxOxB & NAPALM DEATH SPLIT』とカップリングCDとしてTOY'S
FACTORYから再発
◆限定200枚ソノシート『SxOxB STUDIO SESSION '92』(SOUNDS OF BURIAL/'93年)
◆3rd Album『GATE OF DOOM』(TOY'S FACTORY/'93年)*メジャー・デビュー・アルバム
◆4th Album『VICIOUS WORLD』(TOY'S FACTORY/'94年)
◆V.A.『THE CHRISTMAS ALUBAM』(SONY RECORDS /'96年)
◆V.A.『POISON JUNKY』(Ki/oon SONY/'96年)
◆V.A.『10TEMPLATES』(NIPPON CROWN/'98年)
◆5th Album『DUB GRIND』(SPECIALIZED FACT/'99年)
◆V.A.『RADIATE』(SPECIALIZED FACT/'99年)
◆VIDEO『history of ...SxOxB』(SPECIALIZED FACT/'00年)
◆V.A.『PROJECT M@SSIVE〜万引きシバク!〜』(TOSHIBA EMI/'03年)
◆Self Cover Best Album『STILL GRIND ATTITUDE』(VIRGIN RECORDS/'03年)
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★Live Info.
SxOxB『STILL GRIND ATTITUDE』RELEASE PARTY
【大阪公演】-ONE MAN LIVE-
2003.10.24 (fri) @ 十三FANDANGO
18:30 OPEN / 19:30 START
ADV 2,500yen (+drink) / DOOR 2,800yen (+drink)
info; FANDANGO 06-6308-1621
【東京公演】ゲスト:COCOBAT
2003.10.31 (fri) @ 新宿LOFT
18:00 OPEN / 19:00 START
ADV 2,500yen (+drink) / DOOR 2,800yen (+drink)
info; LOFT 03-5272-0382 |