●ビークルがアンチテーゼになればいい
──ビート・クルセイダース(略してビークル)の最近の話題はなんといってもメジャーへの移籍ですが。
ヒダカ まあ、俺たちブラックマネーが大好きなんで(笑)
──でも、やってることはあんまり変わってないですよね?
ヒダカ ぶっちゃけそうです。本人達に悪気はまったくないんでしょうけど、モンゴル800などがインディーズでミリオンヒットをガンガン出して以降、インディーズの概念が変わってしまったじゃないですか。やってる現場の僕らの気持ちは変わらないんですが、ユーザー側の捉え方はもう僕らが思っているようなインディーズじゃないだろうなと。それがいいことか悪いことか結論を出すつもりはないですが、僕らがインディーズ時代にラストラムでやってたことがメジャーのやっていることと変わらないんだったら、別
にメジャーでやってもいいじゃないかと思ったんです。あとは、友達であるアスパラガスとかザ・バンド・アパートとかが、もしメジャーに行ってもきっと俺たちみたいに器用に立ち回れないじゃないですか。でも僕はメジャーの音楽を聴く人達にも彼らの音楽を聴かせたいんですよ。だから、ただのおせっかいおばちゃんなんです。ビート・クルセイダースがメジャーにいることで、彼らみたいなバンドをうまく紹介できたらいいなぁと。ケミストリーや平井
堅さんが稼いでくれたお金を使ってそういうことができるんだったら、そんなにパンクなことはないじゃないですか(笑) まあROOFTOPだからこんなこと言えるんですが。
──“僕らが思っているインディーズ”とは具体的にはどういうものなんですか?
ヒダカ (先月のROOFTOPを見ながら)それこそアルケミーレコードですよ。ラジオでかかったら「なんじゃこりゃ?」ってなるような。でも今のインディーズはそういうものじゃないですよね。インディーズの現場でCDを出している人達でさえ、そういうものが何なのかよくわかってないと思うんです。別
に僕らはアルケミーを広めるためにやっているわけではないですけど、インディーズにはそういう流れがあってやっているということを忘れさせたくない。お客さんにも、やっている人達にも。だから、ビークルがメジャーにいることがアンチテーゼになればいいなあと。「泣いた赤鬼」の青鬼くんみたいなもんです(笑)
クボタ 僕はヒダカ君よりもうちょっと下の世代になるんで、スナッフィー・スマイルとか、ああいうのがインディーズのイメージですね。まずはライブに行って、よかったら7インチを買うみたいな。僕はインディーズ時代のビークルを外から見ていて、やってることがすごいメジャーっぽいなあと思ってました。
──夜中にCMとかガンガンうってましたもんね。
ヒダカ ただ誤解してほしくないのは、僕らがやっていることは誰にでもあてはまることではなくて、みんなインディーズからメジャーにどんどん行こうぜって意味じゃないんです。これは単に選択肢の問題であって、道を作ろうという意志のある人がこういうことをやればいいと思う。まさにハイスタの「メイキング・ザ・ロード」ですね。あと、もう一つ危機感があるのが、地方のライブハウスの人に聞くと、若い人達にはヒップホップやレゲエの方が受けててバンドものはお寒い状況らしいんです。そりゃあ、なんとかせにゃあいかんだろうって。僕はもちろん打ち込み系も好きですけど、やっぱりバンドにはバンドにしか出せないものがあると思うんで。
●80's感覚とメロコア以降
──ビークルはヒダカさん以外のメンバーが一新したわけですが、クボタさんはどういうきっかけでビークルに入ったんですか?
クボタ 僕はポップキャッチャーというバンドをやっていてビークルとは昔からつきあいがあったんですが、バンド以外にレーベル(CAPTAIN
HOUSE)もやっている関係で、そこから新生ビート・クルセイダースのシングルを出そうという話になって。
ヒダカ そのついでにベースも弾いてくれと。そういうノリでしたね。
──なるほど。タロウさんはどういう経緯で? メンバー中一番若いと思うんですが。
タロウ 若いっていっても、もう29歳ですよ…痛て!(※ヒダカからビンタされる)
ヒダカ メンバーというより完全に主従関係ですね(笑)
タロウ まあ犬ですよ。俺が誘われたのは不遇だったからですね。あいつ不遇そうだってことで(笑)
ヒダカ メンバーを入れるとき、最初は若い奴を入れてリフレッシュ!って気持ちもあったんですが、全然知らない奴だと感情移入できないなあと思って。それよりも、前から対バンとかしてて、今はバンド辞めちゃったり解散しちゃったりしてるうだつの上がらない負け犬どもが4,5匹集まれば野良犬のチームができるかなと思って。気分はARBのデビューシングル「野良犬」ぐらいの気持ちでね。
タロウ あと僕以外はみんな30代だからリアルタイムで80'sを体験した世代だし、僕もギリギリ聴いてた世代なんです。
ヒダカ だから話が早いですよ。それこそBig Audio Dynamite(註:ミック・ジョーンズがクラッシュ脱退後に結成したバンド)みたいな感じでって言えば、それで通
じちゃうから。
クボタ キーボードのケイタイモは、モンハンというバンドのベースでもあるんですが、プレイヤーとしてもすごく幅広いですね。
タロウ やっぱ、80's感を持った人のキーボードですよね…痛て!(※ヒダカからビンタされる) すいません、わかったような口きいて・・・
ヒダカ 80'sは基本にあるんですが、僕はもともとレーベルの仕事をしていたおかげでメロコア以降も一通
り聴いてきたんです。それは今、強みになってますね。
クボタ たぶん新生ビークルになってからの変化よりも、インディーズ時代のビークルの方が変化が激しかったと思うんですよ。
ヒダカ そうですね。1stはかなりまじめにUSインディーな感じをやって、それ以降4枚目まで相当変化していきましたから。
クボタ 今は何をやってもOKな感じになってますね。
●根底には「爆裂都市」
──今度、人気ロックマンガ『BECK』のアニメ化にあたって、主題歌をビークルが担当することになり、しかもヒダカさんが音楽監修もされるってことで、相当熱い展開になってますね。
ヒダカ 『BECK』にはアイドルも出てくればUSカレッジチャートの話まで出てきて、内容がすごく幅広いんですよ。そう考えるとベリーズ工房からソニック・ユースまで語れる俺は結構合ってるんじゃないかと(笑) 原作のハロルド作石さんはアニメ化に際して音楽にはすごく気をつかっていて、やっぱりマンガは10人が読んだら10通
りの音が鳴っちゃうわけじゃないですか。それに一つの音を付けるというのは相当リスキーな作業でもあるわけですよ。実は、3、4年前に僕はハロルドさんと雑誌で対談をしていて、ちょうどアメリカ・ツアーから帰ってきた所だったんで、アメリカのクラブ事情を教えたりしたんですよ。そしたら、ちゃんとそれをマンガの中で活かしてくれて、それでいい友好関係が築けたんです。今回、アニメ側のスタッフもビークルを推薦してくれて、インディーズ時代のそういった活動が実った形になりました。
──なるほど。それなりの下地があったうえでの起用だったんですね。
ヒダカ そうなんです。決してメジャーになったからデカイ仕事がきたってわけではないんです。例えば、某アニメGの主題歌をわけのわかんないアイドルが歌ってるっていうのとは違いますよ。まあ、同じソニーだからあまり文句言えないですが(笑)
──その主題歌が「HIT IN THE USA」っていう大胆なタイトルなんですが、前作のミニアルバム『A
PopCALYPSE NOW 〜地獄のPOP示録〜』に続き、またもやアメリカがテーマですね。
ヒダカ 同世代を見ると、イギリスのキュアーやエコー・アンド・ザ・バニーメンは好きだけどアメリカのヴァン・ヘイレンはだめとか、逆にハードロックは好きだけどティアドロップ・エクスプロージョンはわかんないとか、そういう人が結構多いんですけど、俺は両方好きなんですよ。ビート・クルセイダースってUKっぽいってよく言われるんですけど、アメリカっぽい要素も決して忘れたくないんです。特に今のような社会状況であればなおさら、かつて俺達が聴いていたヴァン・ヘイレン、ポイズン、モトリー・クルーといった80's感、湾岸戦争以前のキラキラしたアメリカをもう一度認識したいなと思うんです。だから折に触れてアメリカを引用しているんですね。ぶっちゃけ白人って独善的だし、マイケル・ムーアじゃないけどアホでマヌケだと思うんですが、それでも彼らの作り上げたものってよかったから。
クボタ だから「HIT IN THE USA」には“アメリカを叩く”って意味もあるんです。
──ああ、なるほど。
ヒダカ 普通は「ベスト・ヒット USA」のイメージですが、多分アメリカ人が見たら“アメリカを叩く”の意味に取ると思うんです。そういう両方の意味を込めていますね。甘いコーティングがしてあるけど、食べてみると唐辛子がたっぷりみたいな。基本的にいやがらせが大好きなんで(笑)
──それこそマイケル・ムーアじゃないですか。
ヒダカ ライブでの「おま○コール」も最初いやがらせでやってたのが、最近は女の子にも受け入れられちゃって困ってます。早く新しいいやがらせを考えないと(笑) でも、もともとロックやパンクって親が聴いていやだなと思うようなものじゃないですか。非常階段をラジオでかけたらディレクターに止めてくれと言われるような。そういう意味では、今後もどんどん毒を盛っていくんで、みんな、俺達がただのお面
をかぶった面白い人達だと思ってると痛い目あうからな!(笑)
──やっぱりロックは子供が聴いたらトラウマになるぐらいじゃないとダメですよね。
ヒダカ そうですよ。俺、いまだにクラウス・ノミとか忘れられないもん。あの強烈なルックスでオペラ歌ってるって一体何だったのかと。そういうのは忘れたくない。体裁よくして受け入れられようとは全然思わないです。だからお面
も続けていくでしょうし、わけのわかんないことはずっとやっていきますよ。ライブハウスも毒があるのはロフトぐらいじゃないですか? そもそも社長が毒みたいな人だから。
──まあ、あの人はどうかしてますけど。
ヒダカ その「どうかしてる」感がロックですよ。ルースターズの大江さんもやっぱりどうかしてたじゃないですか。そういう意味で言うと、俺達は大江さんみたいにカリスマ性はないから、なんとか努力してどうかしてる感を出さないといけないんです。単純にルースターズはうらやましいですよね。ファーストのジャケットとかすごいじゃないですか。俺達がああいう風にやっても、ただボーっとつっ立ってるだけですから。だからお面
かぶったりおま○こ言ってみたりいろんなことしてるんです。
クボタ ルースターズといえば、僕はやっぱり中学生の時に観た「爆裂都市」は忘れられないですね。
ヒダカ あれはトラウマだよね。だからといってあれはあの時代にあの人達がやったのがすごいんであって、同じことをやってもしょうがない。今、俺達がやりたいのは、メロコア以降のパンク感を忘れずに、でも根底には「爆裂都市」もあるっていう。
──そういう意味で言うと『地獄のPOP示録』は、地獄とPOPの両面があるっていうものですよね。
ヒダカ インディーズ時代の最初のシングルのタイトルが「NEVERr
POP ENOUGH」だったんです。その時は、パワーポップやポップパンクみたいな意味をそこに込めていて、トイ・ドールズみたいなのを聴いて欲しいなと。それがビート・クルセイダースがだんだんでかくなっていくにつれ普通
にポップだねと言われるようになっちゃった。でも、俺としてはファイヤー・スターターやヤング・ワンズみたいなポップを言おうとしてたのに、それが忘れられちゃって。だからインディーズ時代はそこから逃げようとしてたんですね。どんどんひねってひねって。でもメジャーにきた今、もう逃げないで俺達はポップだと言い切ってみようかなと。そんなことを考えている時にちょうど「Apocalypse
Now」(註:「地獄の黙示録」の原題)の文字が目にとまって、「ああ、これにPを足せばいいな」って(笑)
──ビート・クルセイダースのPOPには地獄ももれなくついてくるぞと。
ヒダカ まあ、ロック界のカーツ大佐になりたいですね(笑)
★Release
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DefSTAR
RECORDS
DFCL-1167 1,020yen (tax in)
OCTOBER 20TH IN STORES!!
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★Live Info.
<fuzz maniax @ LOFT 4 DAYS supported by smart>
10月21日(木)新宿LOFT
w/ ストレイテナー / sports / 髭
OPEN 18:00 / START 18:30
PRICE: advance-2,800yen / door-3,300yen(共にDRINK代別)
【info.】shinjuku LOFT:03-5272-0382
<エキゾチック・ジャパン 04>
11月3日(水)千葉商科大学/11月5日(金)神戸STAR CLUB/11月6日(土)宮崎WEATHER
KING/11月9日(火)福岡VIVRE HALL/11月10日(水)名古屋APOLLO THEATER【ワンマン】/11月28日(日)札幌COLONY/11月30日(火)仙台CLUB
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