“このライヴは特別
”という意識で臨んだLOFTでのライヴ
──『BEATS IS OUR LIFE』のライヴ会場は、LOFTだったんですよね。
φKI(Vo, Gt)「うん、俺らが初めてツアーを組んで東京に来た時も、LOFTだったしね。新宿LOFTっていったら昭和の時代から出演することがステータスだったし、デビューしてからも東京でのホームグラウンドって感じでやらせてもらってて。今回の結成20周年ライヴも、ヘンに着飾った場所でやるよりは、LOFTでやったほうがいいかなって思って」
──このアルバムに収録されてる6月19日のライヴ、覚えてますか?
山根英晴(Ba)「え、覚えてますよ。どうしてですか?」
──いや、年間50本以上のライヴを20年間続けていると、細かいところまでは覚えられないかな、と…。
φKI「そんなことはないよ。俺らは“やり逃げ”しないから。全部覚えてるよ、もちろん」
──失礼しました。で、この日のライヴは…。
山根「とにかく熱かったです。自分達もお客さんも」
谷元 敦(Dr)「お客さんも相当気合い入ってた。それは凄く伝わってきました」
φKI「うん、バンド側も“このライヴは特別
”って意識でやったし、お客さんもそのつもりで集まってくれたと思うし。ありがたいことに動員も凄く入ってくれたしね。ライヴ自体もめいっぱい、やれるところまでやりきった。良かったんじゃないかな」
──普段は演奏しない曲も、セットリストに加わってますね(「誰もが悲しすぎる」「GIRL」「STREET
BEAT」)。
φKI「まぁ、アニヴァーサリー・ライヴってことで、アマチュア時代の曲……というか、結成当初くらいに書いて封印してた曲をちょっとやってみようかなと思って。やってみたら、良かったですよ。古くなってなくて。ほぼ20年くらい前の曲だからね」
──初めて聴きました。
φKI「そうでしょう(笑)。デビューしてからは、1回たりとも演奏してないから。リハでもやってないし」
──20年前の曲を演奏すると、当時のことを思い出したりするんですか?
φKI「そういうノスタルジックなものはないけどね。うーん、どうなんだろう……。本番でがガツンとやった時に“いけるな”っていう感触があったというか。18、19くらいで書いた詞だから。それを20年経って、いい大人になって、バンと唄ってみた時の感触が気恥ずかしくはなかった。むしろ、大人になってこれを唄えることのありがたさを感じたよね。それは(バンドを)ずっとやってこれたってことでもあるので。単純に楽しかったですよ。特に新しいメンバーにとってみたら、新曲みたいなもんだしね」
谷元「CDにも入ってないですからね。(曲を聴いた時は)“あー、恰好いい曲だな”って思いました。もう、それだけですね」
──「新曲です」って言われたら信じてたかも。
φKI「いや、あれはやっぱりティーンネイジャーが書いた曲だと思うよ。あの詞を40代で書くのはどうかと思う(笑)。まぁ、もう封印を解いたからね。これからはたまにやると思いますよ」
──でも、20年前の曲を生々しい感情を持って演奏できるっていうのは、凄いですよね。
φKI「ロックンロールを続けてる者としては、素敵なことだ思う。俺はもともとはパンクから入ってるから、(この歳まで音楽を続けることは)あり得ないって思ってたよ、若い時は。自分が歳を重ねてるところなんて想像もつかないっていうか、そんなに老いぼれるまで生きてるはずがねぇ、ってところからスタートしてるから。でもね、10代、20代、30代を通
してずっとバンドをやってるけど、その年代なりの、男としての物の見方、感じ方っていうのがあって。その時々の歌を書いてるから、絶対にウソはないと思う」
──僕も30過ぎてロックを聴いてるとは思わなかった。むしろもっと必要としてる気がします。
φKI「いいことじゃないですか、それは。俺もきっと、根っこの部分は変わってないと思う。全く別
の人になったら唄えないだろうし、唄っても熱くなれないだろうし。もちろん、ずっとガキのままっていうのも気持ち悪い話だし、そんなわけがないことも判ってる。でも、(自分が若い時に書いた曲に対して)リアルに響く部分が残ってるんだろうね。あとは、ロックは単純に恰好いい、ってこともあるし」
──「十代の衝動」っていう曲がありますが、まさにその通りってことですね。
φKI「うん。その曲は20代の終わり……いや、違うな。30歳になって最初に書いた曲だ。これができた時に、“ひょっとしたら俺、あと10年くらいやれるかもしれないな”って思ったんだよね」
──なるほど。
φKI「年齢を重ねると、いろんなことがはっきりしてくるんだよね。見極めができる、っていうか。で、自分が何を求めてるかっていうのも見えてくるし。大事なものはオンリーワンじゃなくちゃいけないっていう人もいるけど、大事なものがどんどん増えていってもいいと思うしね、俺は。音楽、ロック、友達、家族…。自分にとって大事なものが増えていくほうが素敵だよね……って思えるようになりました(笑)」
生活の中心には常に音楽がある
──今回はライヴDVDもリリースされますが、これはどういう経緯で?
φKI「3月に2枚組のベスト盤を出したんです。その時のツアーで、お客さんからいろんなリアクションがあって。そのなかで“今のBEATSのライヴ映像が見たい”っていう声と“昔の映像が見たい。ヒストリー的な映像が見たい”っていう声が同じくらいあった。バンドとして見せたいものは何かっていったら、それはもちろん今の自分達ですよ。でも、ちょうど20周年っていうこともあるし、ボーナス的に大昔の映像、デビュー前の映像を入れるのもいいかなって思って。こういう機会でもなければ、出せるものでもないので。みんなで爆笑しながら見ましたよ」
──爆笑、ですか(笑)。
谷元「まぁ、“BEATSだな”って感じですよ。どれを見ても」
φKI「SEIZIに貫禄が出た、っていうのは確かだけど」
──少なくとも音楽的スタイルは変わってないですよね。
φKI「目に見える、見えないってことではなくて、自分達のなかで、小さなトライや小さな変化っていうのは、常に繰り返してるけどね。それをひとつにまとめた時に出てくる自分らの色、それは一番好きなことを好きなスタイルでやってるんだから、変わってないかもしれないね。いきなりヒップホップをやろうとは思わないから(笑)」
──普段聴いてる音楽も変わらない? φKI「どうだろう。ひとまわり、ふたまわりして戻ってきた感じかな、俺は」
山根「俺はBEATSを聴いてますね」
φKI「お、凄いね」
山根「普段から聴いてますよ」
φKI「ありがとう(笑)」
山根「朝はビートルズが多いですけど」
φKI「朝からBEATSだったら、暑苦しいからねぇ(笑)」
谷元「(笑)俺は一応、新しいものも触ってみたりするけど、普段聴いてるものは変わらない。キャロルとか。自分がちっちゃい頃に好きだったものをつい聴いちゃうよね」
SEIZI(Gt)「俺もバンドを始めた頃から変わってない、好きなものは。クラッシュ、ポリス、U2。それより好きなものが出てこないってことですよ、BEATS以外には。……うまくまとめたと思わん?」
φKI「俺が今一番楽しみにしてるのは、『ロンドン・コーリング』のリマスター盤」
──よく判りました(笑)。ちなみに僕が最近聴いてるのは、ザ・ジャムのライヴ盤です。
φKI「あー、いいよね!」
──演奏面ではどうですか? 昔と今を比べてみて。
SEIZI「最近のライヴで“この曲って、こんなに恰好良かったんだ”って言ってもらえることが多くて。そう思ってもらえるのは、バンド冥利に尽きますね」
──とにかく音が太くなってますよね。
φKI「うん、音は太いよね。でも、そりゃそうだよ。年を取ってキャリアを積んで、“若い時のほうが良かったね”っていうんだったら、もう先はないわけで。太いとか重いとか、なおかつ速いとか鋭いとか……そういう“らしさ”をどんどん突き詰めていきたいわけなんだろうからな、きっと」
──なるほど。20年ひとつのバンドをやるってことは、並大抵のことじゃないですからね。
φKI「特に今年は、いい意味で“それだけの年数、やってきたんだな”っていうのを感じさせてもらえる場面
が多いですね。それはたとえば、東京のライヴや地元の広島のライヴの時、昔のメンバー……OB達が遊びに来てくれたり(笑)。結成当初のメンバーとかも久しぶりに来てくれたからね。とっくの昔に音楽をやめてて、普通
の社会人なんだけど」
谷元「俺と山根はもちろん挨拶しますよ。“よろしくお願いします!”って」
──ホントですか? 谷元「いや、ウソウソ(笑)。でも、話はするけどね」
φKI「歴代のメンバー達が酒を飲みながら“あの曲が…”とか“あそこのフレーズが…”とかって話してるのは、凄く不思議な光景ですよ。もちろん楽しいことでもあり、嬉しいことでもあるけどね」
──まぁ、他のバンドでは見られない光景ですよね。
φKI「それも、自分達のバンドが今も現役でバリッとやってるから、ってこともあるだろうし。いや、ありがたいなって思いますよ」
──そういう歴史のあるバンドに途中から加入するっていうのは、どういう気分ですか?
山根「え、どういう気分って言われても…。楽しいですよ」
SEIZI「そういえば、後から(バンドに)入る心境っていうのは判らんねぇ、俺らには」
──いや、僕だったら、完全にビクビクするだろうなと思って。
φKI「ハハハハ。まぁ、ちょっとそういうところもあるけどね」
山根「俺はもともと好きでしたからね、このバンドが。もちろん最初はびびってましたけど(笑)」
──どんなバンドもそうかもしれないけど、強い気持ちが必要だと思うんですよ、このバンドのメンバーでいることは。
山根「うん、そうですね」
φKI「やっぱり、生活の中心になるからね、音楽が。それに1年のうち100泊くらいはツアーに出てるわけだから、一緒にメシ食って、音を出して、そこで気持ちいい人間でないと長くはやれないですよね。同じものを見て笑えるとか、同じところで泣けるとかね。今のチームは凄く気持ちいいですよ。ノリが合うっていうのは凄く大切、ずっとバンドをやってく上で」
今まで書いた曲よりいいものが出来なければやめたほうがいい
──φKIさんとSEIZIさんはどうですか? 2004年にTHE STREET BEATSをやってる気分というのは?
φKI「どうだろうね。やってるのが当たり前で、他に何もないわけだから、俺達には。これがなかったら…っていうのは全く想像できない。だから、“BEATS
IS OUR LIFE”っていうタイトルを付けた、っていうのもあるしね。この言葉はライヴの途中で叫んだんだけど、これがバーンとひっかかって、そのままタイトルになって」
──異常な説得力がありますよね、このタイトル。
SEIZI「これはいつも継続して思ってることだけど、明日のステージが終わったあと、“今日が今までで一番恰好良かった”って言われたいっていう気持ちがあって。今年はそのことを再確認させられることが多い」
──この前、THE MODSの森山(達也)さんに取材させてもらったんですけど…。
φKI「うん」
──「俺は音楽以外では、全く使い物にならない」って言ってましたよ。
φKI「全く同感です(笑)。俺も音楽以外のことは全くやったことがない。バイトもしたことないんだから、社会復帰は無理。他の選択肢は、あり得ない……それは“仕方ない”ってことではなくて、自分で選んだことだから。それを続けさせてもらってるというのは、ありがたいことだと思います。感謝ですよ、ホントに。自分がいくら一生懸命やってても、誰にも響かなければしょうがないし。自分達のバンド活動がしっかり形になっていて、いつも次の展開が待ってるっていうのは、凄く幸運なことだと思ってます。今はツアーのリハをやってるんだけど、今年中にはレコーディングに入って、来春くらいには新しいアルバムを出したいと思っているので。ロック・バンドとしては、これ以上素晴らしい流れはないですから」
──新しい曲をどんどん聴きたいですからね、ファンとしても。
φKI「うん、曲作りもやってるんだけどね…(と言いつつ、額の汗をふく真似をする)」
──やっぱりしんどいですか、新曲を作るのは?
φKI「しんどいっていうかねぇ…。もの凄くたくさんの断片とかフレーズが頭のなかでとっちらかってて、それをまとめる作業なんですよ、曲作りっていうのは。あれもやりたい、これもやりたいってことばっかりで、何にも形になってないっていう時期ですね、今は。それはしんどくもあり、楽しくもあるんだけど、まぁ、自分が試される時ですよね。今まで書いた160曲よりいいものが出なければ、やめたほうがいいわけだし」
──どんどんハードルが高くなる。
φKI 「そうです。もちろん勝算があるから、挑むわけですけど。俺達に出来ることっていったら、いい曲を作って、聴いてくれる人に何かしらの力強さとか、前に進み出す勇気を与えてあげることなので」
──ロックが必要な人って、確実にいますからね。
φKI「うん、必要な人には必要ですよね。少なくとも、自分にとっては必要ですから」
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