『PxBxR』の芯を成す「足を鳴らせ」
──まず、昨年、独自のレーベル“GATE”を立ち上げた経緯から教えて下さい。
「僕らはメジャーもインディーズも両方経験をさせて頂きまして、お互いの良いところ、悪いところを僕達なりに感じて、たくさん勉強になりました。インディーズとメジャーのそれぞれ良いところをうまく一緒にできないか?
そのなかで自分達が現時点でやるべきことは何なのか? スタンスは? …と考えていくうちに、今後は自分達を自分達がしっかりプロデュースできなきゃと思い、だったら自分達の責任でやることが一番近いんじゃないかと思いまして、このレーベルを立ち上げたんです。昔からやってみたかったというのもあったし、いろんなタイミングを含め、そういう時期だったということもあると思います」
──“GATE”(門)というネーミングは、バンドとファンを繋ぐ出入り口にしたい…という意味から取られたのでしょうか?
「するどい!! そうですね、出入り口、門出、この門をくぐって!! みたいな感じで“GATE”に決めました。いろんな人との出会いがある場所であって欲しいし、今後FULL
MONTYに限らず、他のバンドのリリースなんかもやりたいと思っています。その時に“GATE”から出ていくバンド、そういうのが増えてくれたら嬉しいですね。この“GATE”がいろんな音楽、バンドの一つの選択肢にもなっていきたい。メジャーを選ぶバンド、インディーズを選ぶバンド、そして“GATE”を選ぶバンド…そういうことになればもっと“GATE”も楽しくなってくると思うし、そうなっていけるようにメンバーとスタッフで盛り上げていきたいです」
──昨年秋にライヴ会場とオフィシャル・ウェブ・ショップのみで限定発売されたマキシ・シングル『足を鳴らせ』は、スピード感溢れるサウンドに乗せて「さあ足を鳴らせ/もっともっと描いてる
世界はあるはずさ/たった一つの自分である為に」と前向きに唄いかける力強いナンバーでしたが、何か吹っ切れたものを感じたんです。やはり“GATE”設立がひとつの転機となるような出来事だったんでしょうか?
「まさにそういうことですね。自分達のなかで吹っ切れたこと、しかしそのなかでも僅かながら不安もあり、人の意見との交差、流れ、けど怖くてもやんなきゃ始まんね〜じゃん!!
みたいな気持ち、叶うかどうか判らないけど、結果が出る前に諦めてしまうのは嫌だな〜と思いました。全国のバンドマン、仕事をやってる人、学生、誰でもそういう時ってあると思うんです、自分の人生の分岐点が見えてきたりすると。そういう時だからこそ、足を鳴らし、しっかりと見つめていこうぜ!!
っ感じで書きました。僕ら自身にも当てはまることだし、この曲を作った以上、とめれない、やめられないってプレッシャーもありますね」
──自らレーベルを興すことで、FULL MONTYとしての活動の焦点がこれまで以上により明確に絞れてきたと思うんですが、ご自身としてはどうですか?
「やりたいことなどは、昔からあまり変わらないし、自主になったからと言って、それができるかどうかは判りません。実際メジャーにしかできないこと、インディーズにしかできないことってたくさんあるし、FULL
MONTYとしてやりたいことはたくさんありますね。だからと言ってどっちにこだわるってよりか、活動に関しては柔軟にやっていきたいと思っています。単純に言うと、ライヴハウスももちろん大事だけど、ホールなどでもやってみたいとか、自分達をアピールできる場所はどこでも構わない。そのなかでどれだけFULL
MONTYを表現できるかってことを重要にしていきたいです。けど、そのなかで、FULL
MONTY的にカッコいいこと、悪いことは、しっかりと持っていきたいですね」
──『足を鳴らせ』で得た確かな手応えが、本作『PxBxR』にも脈打っていると思います。それだけ、今のFULL
MONTYにとって『足を鳴らせ』は非常に重要な曲じゃないかと思うんですが。
「そう言って頂けると嬉しいです!! 『足を鳴らせ』は、FULL MONTYのスタンダードな曲になっていくと思うし、『PxBxR』に収めた個性的な曲のなかでも、芯を持った曲になったと思っています。もっともっと皆に浸透してくれると嬉しいし、それができるかどうかは、皆の力であったり、何より自分達のライヴが大切になってくると思います。プレッシャーなんだけど、プレッシャーと向き合いつつも、それを感じなくなるぐらい、もっともっと自分達のモノにしていかないと、『足を鳴らせ』が可哀想だと思っています。もちろん他の曲もそうなんですけどね。自分達のなかでも、見えてきたものはメンバーそれぞれあると思います」
パワー感、スピード感、グルーヴ感の著しい成長
──タイトルの『PxBxR』は“PUNK×BRASS×ROCK”という、まさにFULL
MONTYの音楽性を集約した言葉ですが、このストレートで潔いタイトルからも、本作への並々ならぬ
自信が窺えますね。
「まさにそう言って頂けると!! 皆が聴いた瞬間に、パワーを持ったアルバムが作りたかったんですね。ロックやパンクが判らない人達でも、再生した瞬間に、何だか判らないけどカッコいいね〜みたいなアルバム、あっなるほど!!
これがパンク・ブラス・ロックね!! って納得してくれる、判りやすいアルバムを作りたかったんです。自分達でも自信のあるアルバムが出来ました。パワー感に限らず、スピード感、グルーヴ感、いろんな感覚が成長できたと思っています。毎回そうなんですが、不安なモノを皆に届けたくはないし、皆からは入り口が広く感じられるけど、FULL
MONTYの音楽が判りやすく出たアルバムだと思います」
──アルバムを制作するにあたってのコンセプトは?
「やっぱ初期衝動というか、昔先輩の影響でピストルズやクラッシュやラモーンズ、ストレイ・キャッツのアルバムを聴いた時、クソガキだった僕は聴いた瞬間に良い意味でやられたんですね。今考えると音は悪いし、かなりウマいとも言えないし、しかし理屈じゃなく単純にカッコいい!!
って思ったし、凄く力を持ったアルバムだ!! バンドだ!! って思ったんですよ。そこからバンドにのめり込んだというか、ロックやパンクを知ったというか。そしてザ・モッズ、ルースターズ、ARB、シーナ&ザ・ロケッツ、ロッカーズなどを先輩に教えてもらい、やはりその方々もスゲ〜パワーあったんですね。ジャンルは違うかもしれないけど、そういうのを目指したくて、作りたくて」
──制作期間はどのくらいだったんですか?
「レコーディングに1週間、ミックスに1週間ぐらいです」
──また随分と早いですね。あえてその短期間で仕上げようとしたんですか?
「あえて短くってわけではないんですよ。ただ、不安なままでレコーディングに入りたくなくて、レコーディングに入る時は、こうやるってのをあらかじめ決めて入るんですね。だからそれを形にするのには、あまり時間がかからないというか。それ以前の曲作りやリハで考えてることを形にして、迷いがなくなったらレコーディングするって感じです。時間があれば良いってもんでもないし、時間があるレコーディングをしたことがないので、それもやってみたいですけどね」
──「LIVE HOUSEの夜」では、バンジョーにPRINCE ALBERTの野口忠孝氏、マンドリンにJim
JamのBIN氏、コーラスにUNSCANDALのメンバー、「迷い道」ではギターにTHE
PANの荻原 剛氏が参加するなど、ゲスト・ミュージシャンも多彩ですね。
「『LIVE HOUSEの夜』は、実は本来あの形でやってみたかった曲で、アコーディオンなども入れたかったんですが、ちょっと事情がありまして、しかしいい感じで表現できたと思っています。僕はいつもアコースティック・ギターで曲を作るので、あれが理想的というか、ヘッドロックの『パンクロック・バトルロイヤル2』に参加したヴァージョンは、逆にFULL
MONTY用にアレンジした感じです。声を掛けたら気軽に皆参加してくれたし、遊びに来たついでに!?
みたいなノリもありましたしね。楽しかったし、参加してくれた皆には感謝してます!!」
──『足を鳴らせ』リリース後に全国57ヵ所のツアーを精力的に廻るなかで、よくこれだけの充実作が完成しましたね。長期ツアーを通
じて得た経験は、このアルバムにも反映されていますか?
「もちろんツアーでの経験は反映されてると思います。当然そうでなければツアーをやる意味も薄れてくると思うんですね。詩にしても、曲にしても、絶対にツアーの出来事などが絡んでくるのは当然あります。ライヴをやる度に、地元のバンド、お客さん、スタッフ、いろんな人と接すれば接する程、いろんなことを教わるし、それで皆こんなこと思ってるんだね〜ってそれを詩にしたり、自分達のライヴをビデオなどで振り返ってみると、弱点というか、もっとこうやろう!!
みたいなのが出てきて、それを次回作には見直して取り入れて…って感じですね。ツアーじゃなく、レコーディングの時ですが、アメリカに行った時に感じた詩が、1曲目の『カリフォルニアの夕日』だったり、割と単純ですね」
ライヴ1本1本をどれだけ大事にできるか
──いわゆるパーティー・バンド的な側面は“納得するまでバカをやる”が信条のFULL
MONTYにとって非常に重要な部分だと思うんですが、本作ではもっと自分自身の内面
を見つめ直したような、より深みのある作風に変化してきていますよね。前作『WILL』から幾分そんな兆候は見られましたが…。
「単純にパーティー・バンドとしてではなく、ちゃんと自分達のメッセージ、自分達のスタンス、楽曲、そういうのもライヴでしっかりと表現していけるバンドになりたいですね。騒いで盛り上がったからOKってわけじゃないんですよ。自分達の弱みもさらけ出していかないと。僕らはそんなに強い人間じゃないし、もっともっとそれを含め、ライヴやCDでお客さんと接することができて、楽しいだけじゃダメだし、逆にどんなことに対しても楽しいことって必ずあるはずだし、それをお互い見つけながらやっていきたいです。だから、バカをやるってことも勘違いされないように伝えなきゃ、ってのも感じています」
──「見上げた空は曇り 一人ぼっちの迷い道」(「迷い道」)のなかだけれども、
「今を感じ 振り返るその足下に 見つけた道しるべ」(「道しるべ」)へ向かって、それでも前へ歩いていこうとする揺るぎない強い意志が全編に貫かれていますね。絶望に正面
から向き合った人間だけが感じ取れる希望の光…みたいなものが、本作の主なテーマじゃないかと思うんですが。
「(笑)それだけだと、ものすごくカッコいいですね!! しかしそうだと思うんですね、悪いことが起こるから前向きに考えることができるし、その悪いことを自分でちゃんと理解して消化して、それから前向きにやっていかないと、本当に僕らはただのバカになってしまいますからね。そのなかで希望の光を見つけようとするか、しないかだと思うんですね。小さな問題だろうが大きな問題だろうが、人それぞれで重要度は違うし、だからこそ考えなきゃダメだし、考え過ぎもダメだし。こう思うって素直さ、見直す勇気、そういうのは大事だと思います」
──スピード感、爽快感、パワー感、グルーヴ感も、これまで発表されてきたどの音源よりも格段に増しているし、バンドとしてのまとまりがよく出た作品になりましたね。サウンド面
で今回気を留めた点はどんな部分ですか?
「やはり5人としてのバランスですね。その5人のバランスでFULL MONTYらしさって出てくると思うんですね。誰かを前に出す時は、誰かが引っ込む、皆が皆でしゃばるんじゃなくて、5人として、歌として何処までお互いが判り合えるか、そこを一番気にします。僕らは皆自分大好きっ子なので、大変ですが、お互い理解もしてます。個々の音も良い音を出せてると思うし、誰かの邪魔をしない音作りってのも考えました結果
がこの『PxBxR』です」
──これまで以上にコラース・ワークにこだわったのは、バンドとして新機軸ですよね。
「そうですね。僕らには今回重要でした。その辺は変わったというか、FULL
MONTY的に成長したと感じて欲しいです。一番挑戦してみたところですね。いい感じのバランスだし、表現はできたと感じています。5人としてできる音の厚みを増やしたかったし、その部分を強調したり、単純にここに入ったらいいよね〜って話しながら決めていきました。ホーンとのバランスが難しかったですね」
──FULL MONTYの真髄はやはりライヴでこそ発揮されるものだと思いますが、それにしても全国57ヵ所のツアーを敢行したと思えば、またすぐにアルバムのレコ発ツアーが現時点で32本も決定していて…(笑)。これだけの本数のライヴをこなすのは、やはりFULL
MONTYがあくまで“現場主義”を貫く故ですか?
「ツアーやライヴハウスにこだわりすぎるのも嫌なんですね。ライヴハウスは自分達が育っている場所ですし、大事にしていくことは当然で、まだ全国のライヴハウスに恩返しもしていないし、今後もやっていきたいと思ってはいますが、大きい場所などでもやっていきたいんです。ただそれが現状でできるのか?
というと、正直そうでもないし、ライヴに関してやりたい場所などはたくさんあります。ライヴはやって楽しいですしね。ただライヴを数多くやれれば良いって問題でもなく、どれだけ1本1本を大事にできるかだと思うんです。ダラダラ100本やるぐらいだったら、年間10本とかをキッチリやりたいし、本数では決してないです」
ライヴハウスからこの世界を変えていく
──ライヴでのダイレクトなファンの反応に励まされることも多いでしょうね。
「もちろんです、正直ありますよね。皆の反応がないと不安になってくる時もあるし、だからと言って不安なままステージに立てないし。自分達だけ満足して、お客さんを置いていくわけにいかないですしね。皆が僕らの曲を聴いて、良かった!!
とか、元気になります!! とか言われるとやっぱ嬉しいですし、逆にそういう声で僕らもやんなきゃな!!
とか、皆に元気を与えるだけじゃなく、皆からも元気は貰ってるよって曲もあります。僕らもいつまでもテンションが高い人間ではないですし、皆が落ち込む時があるように、僕らも落ち込む時はありますからね。ぶっちゃけ大事です」
──そこまでライヴにこだわり続けるFULL MONTYだからこそ、「LIVE HOUSEの夜」のような歌にも説得力があると思うんですよ。「LIVE
HOUSE そうここから 届く君のその声が/この世界を変えていく 時が果てるまで」という…。
「変えることは僕らだけじゃ単純に無理があるんですね。皆の声であったり、ライヴハウスの声であったり、スタッフの声であったり、そういうのがウマい具合に重なれば、どんなジャンルでさえ、変えていくことができると思っています。僕らが育った場所、リアルタイムで感じられる場所としてライヴハウスってのが一番近いし、最初は小さいかもしれないけど、ここからできることってたくさんあると思っています。単純に想い出の場所にしたくないですしね。そこから次のステップに行きたいと思っていますけど、まずはここからだとも思っています。そのなかで皆と過ごす空間で楽しい夜を僕らは過ごしていきたいって感じです」
──ライヴに臨む際、一番気にかけるところは?
「ん〜、何でしょうね?(笑) 集中してるけど、如何に力を抜けるか。力を抜くって言い方は悪く聞こえるかもしれませんが、手を抜くってことじゃなく、リラックスですね。実際は100%なんだけど、それを80%でやるみたいな…判りづらいですか?
特別120%出そうとも思わないし、手を抜くなんてことはしたくない。毎回が100%だけど、次に繋げる余力も残しとかないと、次のステージで100%出せない、僕らはそんなバンドなわけです。あとは、その日の体調、状況がどうであれ、自分達を出すってことでしょうか」
──自主企画『極』が来たる2月18日の渋谷club asiaで遂に30回を迎えますね。もう一方の自主企画である『KNOCK
OUT NIGHT』もまた復活させて頂きたいところですが、それぞれのイヴェントの趣旨を改めて聞かせて下さい。
「『極』は単純に好きなバンド、カッコいいと思うバンドに出演してもらい、バンドもお客さんも楽しめるイヴェントにしたいです。全国各地にカッコいいバンドって年齢関係なくたくさんいるし、今後もいろんなバンドに出演してもらいたいと思っています。いろんなバンドが“出たい!!”って思ってくれるイヴェントにしたいですね。『KNOCK
OUT NIGHT』は、友達なんだけれども、ただ仲が良いだけでなく、お互い刺激し合ってライヴしようよ!!
どっちが勝つか? 負けるか? みたいな感じで、結局勝ち負けって決められないんですけどね。お互いが勝ったと思ってるし。単純にお客さんも好きなバンドを長い時間観たいだろうな〜と思って、じゃあ2マンはどう?
って感じで始めました」
──ツアーに次ぐツアーの日々ですが、2005年のFULL MONTYの展望を。
「ん〜、秘密です!! やりたいことはたくさんありますが、まずは目の前の問題などをちゃんと消化していきたいですし、焦りたくはないですね。きっちりライヴして、そのなかでまた曲作りもするだろうし、曲があれば、出したいアルバムが出来れば出すだろうし、海外でもライヴやってみたいんですけどね〜。大きなイヴェントや学園祭にも出してもらいたいし、けど声が掛からないし……ヨ・ン・デ・ク・ダ・サ・イ〜〜〜!!
個人的な今年の抱負はもう制覇してしまったので、あとはバンドのみに集中します!!」
──最後に、ツアーで訪れる全国のファンへメッセージをお願いします。
「初めての人とかが多いとは思いますが、とにかく今回のアルバムを聴いて足を運んでもらいたいです!!
ライヴに来てもらえれば、もっと理解できて一緒に楽しめると思います。今回のアルバムのツアーはツアー・ファイナルを決めていないので、皆のところへも行くことができると思いますし。逆にいつ終わるか判らないので、スケジュールをガンガンチェックして、近所に遊びに来て下さいね!!
今年は昔の曲もやるし、コアなお客さんから、新しい方まで楽しめると思いますよ!!
ぜひ皆さん遊びに来て下さいね!!」
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