GASTUNKはまたやりたいと思ってる
──解散から10年を経てのGASTUNK再結成は、そもそも何がきっかけだったんですか?
「X-JAPANのhideが亡くなって、追悼ライヴの話が俺のところへ来たんだよ。hideちゃんはGASTUNKを凄い好きだって言ってくれてたんで、できればGASTUNKとしてライヴをやりてぇなってメンバーには話してたんだ。ただ、最初に来たその話は流れちゃったんだけど、まぁどうせならやるかって話になって」
──今回DVD化される赤坂ブリッツでのライヴは、どんな手応えでしたか?
「凄い楽しかったね。緊張感もあったけど、あんなに面白いことは余りないなと思ったから。最初は、ブリッツでやる前にウォーミング・アップとしてどこかでライヴをやろうって話もあったんだけど、それもやらずに、全くの10年振りにみんなで気持ちを集中させたライヴだったんだよね」
──スキンヘッドに白塗りの表情からは窺えなかったですけど(笑)、素直にライヴは楽しめたんですね。
「うん。楽しかったし、メンバーのみんなからは気持ちとしてのロック・スピリットみたいなものが感じられて、立派なもんだなとも思ったね。10年間、みんなそれぞれ違うことをやって、違う人生を歩んできても、根本にはそんなスピリットがあるんだなっていう確認ができた。“GASTUNKはやっぱりロック・バンドだったんだ”って、俺は凄くハッピーな気持ちになれたんだよね。大した奴らだなと思ったし」
──DVDを観ると、意外とオーディエンスは若い層が多いですよね。今観ても十二分に凄味の伝わるDVDだし、GASTUNKの“Heartful
Melody”が今日においても有効であることの証明だと思うんですが。
「まぁ、嬉しいことだけどね。面白いライヴだったから一番やりがいがあったよね、単純に」
──BAKIさんのなかでは、GASTUNKは思春期のバンドという位
置付けなんでしょうか?
「どうかなぁ…。思春期って言ったら、俺にはGASTUNKの前にEXCUTEっていうバンドがあったからね。そのバンドで挫折して…挫折っていうか、パンクやハードコアっていうものに対して、もういいや!
って思ったんだよね、俺はね。だから、思春期のバンドっていうのとも違うかな」
──BAKIさんと言えば、未だにGASTUNKとイコールで結ばれると思うんです。解散から今年で17年経つ今、GASTUNKというバンドをどう対象化していますか?
「うーん、それは答えにくいなぁ…」
──未だにそれだけ生々しい存在というか…。
「まぁ、いろいろと大変なバンドだったからね(笑)」
──DEAD ENDやX-JAPAN、L'Arc〜en〜CielのメンバーもGASTUNKからの影響を公言していますが、ご自身としてはどう思われますか?
「単純に褒められることは嬉しいけど、やってることも違うし、みんなが俺の真似をしてるわけでもないしね。ただ、今回こうして過去のライヴ映像がDVDとして再発されるのも、自分が何十年前にやっていたようなことに未だ商品価値があるというのはとても有り難いことだと思ってる。それに対して自分がどう思うかとかは余りないんだよね。それは聴いてる人やレコード会社の人の判断であって。未だにGASTUNKをやっていたことの恩恵は受けているし、良くしてもらっているのは確かだけどね。運が良かったのもあるだろうけど、それはやっぱり有り難いことだよ」
──“メタルとパンクのクロスオーヴァーの元祖”と言われることに対しては?
「実際にそうだったからね。20年前はパンクとメタルが反目した判りやすい時代だったから。ハードコアやってるのに“速弾きィ!?”なんて言われたし(笑)、ライトハンド(右手でハンマリングをして音を出す奏法)がまだ出始めの頃だったしね。とにかく誰もまだやってないことをやろうってことに尽きたよね。当時は自信を持ってやっていたし、音楽的に特殊なもんだと思ってた。何か新しいことをやるっていうのは、バンドを始める時に凄く重要なことだからね。そんなチャレンジ精神が自信に繋がって、レコードを作ってみようって思うようになった」
──黒い長髪に白塗りというBAKIさんのヴィジュアルも、当時かなりのインパクトだったと思うんですが。
「小さい時に聴いてたKISSが俺の原点としてあるからね。人を驚かせたいっていうのが今もずっとあって、音楽だけじゃない部分でアピールするのが面
白いんだよね」
──GASTUNKの音源を今も聴くことがありますか?
「聴かない。ほとんど聴かないね。自分が生きていくためには作品を作っていくことしかないと思って頑張ってきたけど、過去の作品はどれだけ内容が良くても、次にもっと良いものを作ろうと思うから振り返ることはないね。自分がこれまで生み出してきた作品に胸を張れないものはないけど、常に次のステップを第一に考えてるから。作品が完成したら、その善し悪しはリスナーに任せるよ。個人的には2ndアルバム(『UNDER
THE SUN』、1987年発表)が一番面白いと思っていて、いろんなものを詰め込むだけ詰め込んで…でも全然うまくいかなくてね、合宿までして(笑)」
──ズバリ伺いますが、今後またGASTUNKが復活する可能性はありますか?
「意外な話かもしれないけど、メンバーの気持ちとしては…“またやりたいね”ってみんな言ってる、単純に。本当にできるかどうか、それは人が集まってやることだから今の時点では判らないけどね。約束はできないし。まぁ、タイミングが合えば俺もやりたいとは思うよ。やっぱり、ファンの人達が喜んでくれるからね」
#9とMOSQUITO SPIRAL
──それは非常に楽しみですね。今回のDVD発売がひとつの契機となれば嬉しいですが。
「まぁ、そんなに高望みはしないけど、今俺がやってるバンドのライヴも観に来てほしいけど…」
──GASTUNK解散後のソロ活動を経て始めた#9〈ナンバーナイン〉も、結成からかれこれ8年が経ちますね。
「もうそれくらいになるかな。#9ではベース&ヴォーカルをやっていて、バンドマンやライヴハウスの人達からは凄い褒められるんだけど…(笑)」
──間もなく発売される#9として4枚目のアルバム『Sing』に「Sing for
life」という曲が収められていますが、そのタイトルからしてBAKIさんの生き方を投影した作品と言えますね。
「“Sing for life”、それこそがロックンロールなんだと思う。俺もかなりアップダウンが激しいほうだけど、何事も続けるってことは本当に難しいことだよね。50、60、70(歳)になってもまだ唄うことができるかなと正直自分でも思うけど、そういう覚悟を持って唄ってるつもりだよ。ベース弾いたり、ギター弾いたり、いろいろと試してやってきたけど、やっぱり自分は唄ってナンボだし、これからもずっと唄っていきたいと思ってる。10曲作ったらそのうちの何曲か好きな曲があればいいほうだし、50、60になってもいい曲を唄えたら、それが大ヒットでもしてくれればなって思うけど(笑)。まぁ、単純に唄うことが好きだからね」
──#9では必要以上に声を張り上げるわけでもなく、ごくごく自然体なBAKIさんのヴォーカルが楽しめますね。「Try
Try Try」では「勘違いでも 思い込みでも どんどん勝手に やればいい/叫ぶなら叫べ
踊るなら踊れ 関係ないのさ 自分のことだろ」という歌詞があって、聴き手の心を揺さぶるBAKIさんの書く歌は不変だとも思いましたし。
「それは有り難いことだね。判りにくい活動をしてきたというか、GASTUNKに近いようなバンドを続けていれば見え方もまた違ったんだろうけど(笑)、基本的なところは何も変わってないと思うよ。ギターをちょっと弾いて唄ってみるとか…別
にブルース・シンガーになりたいわけじゃないけど、そういうのをできる人になりたいと思ってるね。#9はそんなに派手なバンドじゃないけど、俺にとっては自由度の高いバンドなんだよ」
──#9はBAKIさんのパーソナリティに近いバンドということですか?
「うーん、申し訳ないんだけど、自分のことはよく判らないんだよね(笑)。まだまだ模索しているんだよ。去年、MOSQUITO
SPIRAL〈モスキート・スパイラル〉っていうバンドを始めたのもそうだしね」
──LAUGHIN' NOSEのKASUGAさん(g)、元THE ROCKERS / THE ROOSTERZの穴井仁吉さん(b)、元THE
WILLARDのKYOYAさん(dr)という豪華布陣と組んだバンドですね。BAKIさんはシンガーに専念して。
「シンガーじゃないな。パフォーマーみたいな部分が大きいよ。ロックのシンガーっていうのは、観客に驚いてもらったりする役割が凄く重要だと思うんだよな。まぁ、ルー・リードみたいな佇まいのシンガーもいるし、俺も大好きだけどさ。でもそれよりは、もっとドーンとやってバカやって帰ります、みたいなところに憧れてるし、そう在りたいと思ってるしね。#9をやっていると、そういうパフォーマーとしての役割をやりたくなったりもするんだよ」
──去年の12月4日に渋谷DeSeOで正式なライヴ・デビューを果たしたMOSQUITO
SPIRALですが、結成のきっかけは?
「もともとDAMNEDのカヴァー・バンドとして集まったメンバーで、KYOYAがこのバンドのキーマンだと俺は思ってる。奴がWILLARDとかをやる前…俺がEXCUTEをやる時に『ぴあ』でメンバー募集して来たのがKYOYAだったんだよ。それが24年くらい前の話で、その頃から会っていたんだ。KYOYAとバンドをやるのは、単純に嬉しいんだよ。ずっと何か一緒にやりたいと思ってたからね」
──MOSQUITO SPIRALのデビュー・ライヴでは、GASTUNKの「DEVIL」が披露されたそうですね。
「うん。MOSQUITO SPIRALではGASTUNKの曲もやるからね。“やってみようよ”ってみんな言ってくれるんで。GASTUNKのメンバーとやるのと意味は違うけど、お客さんが喜んでくれるんだったら俺はやりたいと思うから。今の若いパンクスにもアピールしたい気持ちもあるしね。MOSQUITO
SPIRALは#9に比べてそういうパンク的なテイストが強いんだよ」
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#9
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──#9とMOSQUITO SPIRALの違いを端的に言うとどんな部分ですか?
「#9の共通言語はBEATLESなんだ。MOSQUITO SPIRALのそれはIGGY POPとかDAMNEDになるんだよ。あとはやっぱり、#9の場合は俺が歌だけじゃなく、ベースも弾いてるってこと。ちゃんと弾かないとメンバーに怒られるからね(笑)」
──どんなバンド形態であろうと、“Sing for life”というBAKIさんの本質は変わりませんね。
「人の気持ちや時代がどう移り変わっていこうが、こっちは歌を唄っていくしかないから。他の誰かになれるわけじゃないし、自分は自分のできることをただやるだけなんだよね。ポップなことをやりたいって俺はいつも思ってる。その時々でポップと言われることをやりたくて頑張ってるんだけど、それは人が絡むことだからね。判りにくいことは余りやりたくないんだ。チャレンジはしていきたいけど。ダメかどうか判んないことをやる前から諦めないからね。だからこれからも、俺はやるべきことをただやっていくだけなんだよ」
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