バンド結成前よりギターウルフを敬愛して止まなかったという惑星・岸田研二。以前より惑星という名前が印象に残っていたというギターウルフ・セイジ。両者が惹き付け合ったのは必然だったのか!? 2月19日に下北沢SHELTERで遂に実現する惑星×ギターウルフという強力な2バンライブ! それを記念して、RoofTop誌上で一足早く両者の爆音対談が実現! 隠されたロックの秘密が今、次々と明らかにされる!?
(interview : 北村ヂン)
──この2バンドの付き合いっていうのはいつごろからなんですか。
岸田 もともとはボクが一方的にずっと好きだったんですよね。惑星自体も、ギターウルフのライブを高円寺の20000Vに観に行っていて、そこで偶然会ったメンバーで結成したのが始まりですから。
セイジ 田舎の高校の同級生と偶然に会ったんだよね。
岸田 その時ボクは、高円寺に行くのも初めてだったから、すごく早く着いちゃって商店街をブラブラしてたんですけど、そうしたらセイジさんに会ったんですよ。ホカ弁持って歩いてましたよね。
セイジ 本当!?
岸田 ボクは友達と行ってたんですけど、その子が声をかけて「がんばって下さい」って話して握手してもらったんですよ。そしたらライブ中に一緒だったその子がステージに上げてもらって、ギター弾かせてもらってて…だからすごい覚えてるんですよ。
セイジ まあ、あの頃はライブの直前とかに弁当食えたけど、今は食えないなぁ…。あの頃よりライブが激しくなってるんじゃないかな、今は吐くもんね。昔のライブはそんなに動いてなかったし。
岸田 昔より今の方が動きが激しくなってるっていうのはすごいですよね。結構普段から、体とか作るために何か運動とかしてたりするんですか。
セイジ イヤ、そんなダサイ事…。
岸田 (笑)こう言う時は絶対やってるんですよ。
セイジ ロックの秘密に触れちゃダメだよ。
──セイジさんの方は惑星の事をいつごろ知ったんですか。
セイジ オレの方は…、惑星っていう名前が格好いいじゃない。だからずっと気にはなってたんだよね。しかも写
真とか見たら仮面ライダーかなんかやってる顔だし(笑)
──ギターウルフのアルバムや曲にも「惑星」っていうキーワードは入ってきますもんね。
セイジ うん。それで一昨年、北海道で初めて一緒にやったんだよ。
岸田 そうなんですよ。RISING SUN ROCK FES.で。
──憧れのギターウルフと…、念願叶ってっていう感じですよね。
岸田 ボクらの後にギターウルフだったんですけど、ボクらは終わってすぐにラジオがあったんで残念ながらライブは見れなかったんですけどね。でも、その会場の中を移動してる車の中で「セイジさん観てたよ」っていう話になって、やたら感激したのを覚えてますね。
──セイジさんはその時初めて惑星のライブを観たんですか。
セイジ うん、格好よかったよ。それで、そのRISING
SUNの後に「トーキョージェットナイト」っていうウチらの企画に、銀杏BOYZやJET
BOYSと一緒に出てもらって…。
──結構RISING SUNでのライブが印象に残ってたんですか。
セイジ そうだね。まあ、名前聞いた時から結構印象あったからね。…それで今回の2バンだよね。
──2バンでやるっていうのは、やはりイベントで一緒にやるのとはまた違うと思いますが。
岸田 やっぱり緊張しますよね。自分がずっと格好いいなって思ってた人たちと、今になって一緒にライブやれるっていうのは。ここまで来るのに10年かかったけど。
──対等な位置で一緒にやれるっていう事ですからね。
岸田 上がりますよね、そういうのって。
──今回の2バンは惑星のツアーの一環ということなんですが、ツアーの他の日も色んなバンドと一緒にやるんですよね。
岸田 ツアーは全部で30本くらいやるんですけど、DOPING
PANDAとか、Radio Carolineとか、detroit7とか、…中には怒髪天の企画に呼ばれて行くのとかもあるんですけど。
──わりとタイプの違うバンドとも一緒にやっていますが、その辺はこだわりはなく面
白そうだったら…という感じなんですか。
岸田 逆に、自分たち自体がジャンルがない所でやって来ているんで。いいなって思ったら誰とでも一緒にやるっていう感じですね。最近ではライブとか見に行くと、もう出て来た瞬間にいいなって思うか、アレーッて思うかわかっちゃうんですよ。もう出て来た時から人間性が出てるというか…。例えばセイジさんなんかは、いつ会ってもセイジさんだし。そういう人たちって格好いいと思うし、一緒にやっていきたいと思うんですよね。もちろん自分もそうありたいなって思うし。
──わりとジャンルとか関係なく、その人自体が出してる物にひかれてると。
岸田 そうですね。そういう意味ではセイジさんたちと比べると、自分たちって神経質過ぎるのかなって思う時もあるんですよね。
──それは音楽に対して。
岸田 それもあるし、バンドのあり方に対してとか…。妙に頭で考えちゃう部分があるんで。そういう時にセイジさんたちと話すと、ホント、感じたままに動くっていうか、初期衝動に忠実であるっていうのも必要だなって思いますね。
●バンドは独裁!?
──惑星は普段の活動とかでも頻繁に話し合ったりしているんですか。
岸田 すごく多いですね。それがちょっとイヤでもあり、楽しくもあるんですけど。
セイジ オレたちは一切話し合わないからね。
岸田 (笑)ツアーしたり、セットリストとか決めたりするのも全然話し合わないんですか。
セイジ いや、まあちょっとは「やりたい曲ある?」とか聞いたりもするけど、基本的には全部オレに任せてくれてるから。話し合ったりして色んな人の意見を聞きながらやると、思ってもみなかったアイディアが出て来る事もあっていいんだけど、あんまりそれをやり過ぎちゃうと変な方向行っちゃうし。主導権は自分で握っておかないと。…オレ、あんまり民主主義とか好きじゃないんだよね。
──独裁なんですか。
セイジ 確かに民主主義っていうのもいいんだけど、ある意味、独裁じゃないと良くも悪くも強烈なカラーっていうのは出ないような気がして。上手いこといけばいいけど、みんなで持ちつ持たれつってやってても出ないでしょ、そういうのって。だからウチの場合はそういう感じだね。要はオレが部活のキャプテンなんだよ。
──惑星の場合は誰かが主導権握って…みたいな感じではないんですか。
岸田 まあ、ある程度はボクがやってますけどね。すごく打たれ弱い自分がイヤなんですよ。周りから色々言われると気になっちゃって「何聞いてるんだオレ」って思って腹立ったりするんですけどね。
セイジ そこで押し通さないと。
岸田 30代は独裁で行きます、ボクも! セイジさんが言ってることはホントよくわかるんですよね。持ちつ持たれつやってると、バンドって楽しいし、上手くて心地よい音楽にはなっていくと思うんですけど、そうじゃないでしょっていう。もう強烈な「コイツらどうなっちゃうの!?」っていうようなカラーは出てこないですよね。
──みんなの平均値取っていっちゃうとそうですね。
セイジ まあ、強引に飛ばしていけばどうにかなるよ。その中でちゃんと一緒にやってくれるかどうかっていうのも、リーダーは気にしなくちゃいけないんだけど。強引にやっていく中で「バカじゃないのこの人?」って感じで笑いを取りながら(笑)メンバーを動かしていけばいいじゃん。
●黄金の40代
セイジ イヤー、しかし岸田君ももう30代なんだ。
岸田 先月なったばっかなんですよ。セイジさんはどうでしたか、30になった時とか。
セイジ 28くらいの時に、現場の仕事やってたんだけど「…あと一年ちょっとで30か…」って思ったら愕然としたね。30っていったら、もうすごい大人じゃん。でも、29の時にアメリカ行って初めてライブやって、30代直前にアルバム出て、この10年間で八枚もアルバム出したから、結構よかったね。充実した30代だったよ。またこれから黄金の40代を過ごそうと思ってるけど。
岸田 ボクも最初はとまどいましたね。本当に初めてセイジさんたちのライブを最初に見た時くらいから音楽やってて、30になった今も音楽の事はホント好きで。…でも、なんか周りは皆知らないうちに普通
の顔して就職してたりして、いいパパになってたり、家庭作ったりしてて…時々「何やってんだろうな、オレ」って思ったりする、ちょうどそういう過渡期だったんで。でも就職してるヤツは就職してるヤツで「どうしようか」とか思ってたりするんですけどね。
セイジ よく「30になった途端ガクッと体力が落ちた」とか言ってるヤツいるじゃない。ふざけんじゃないよって思うよね。そういうヤツは30っていう言葉を聞いただけで落ち込んでるんだよ。本当は関係ないからね。
●世界五大エロパワー
岸田 そういえば、この間初めてセイジさんと飲みに行ったんですけど、その時「惑星はもっとメチャメチャやんなきゃダメなんだよ」って言ってましたよね。酔っぱらってたから覚えてないかもしれないですけど(笑)
セイジ オレはそんな失礼なこと言わないよ。
岸田 イヤイヤ(笑)。でも確かにそれはすごい思うんですよね。ボクの場合、半分音楽をリスナーとして冷静に見ちゃってる部分があるんですよ。もっと音楽が好きだっていう感情を剥き出しにしてやりたいんですけどね。
セイジ そういう時はアメリカツアーとかやるといいと思うよ。長いツアーをやってるとバンド自体がタイトになるというか、研ぎ澄まされていくからね。惑星は海外でやらないの?
岸田 イギリスとかに行きたいとは思ってるんですけどね。ボクら2003年にイギリスのCHERRY
REDというレーベルからリリースしてるんですよ。ギターウルフって本当に世界でしっかり音楽やっててすごいと思いますよ。セイジさんは海外とのやりとりってどうやってるんですか。英語結構しゃべれるんですか。
セイジ オフコース!(笑)。…でも、もちろん最初は全然わかんなくって、行ったはいいけど誰も英語なんてしゃべれないから。でも、オレがなんとか交渉するしかないじゃん。それで「プリーズ!」とか「アイウォント!」とか言ってやってるうちに、ある程度その辺の交渉に困らないくらいにはなったよね。今ではツアー行く時は、各地方の友達に連絡したり、でっかいブッキングエージェントに交渉して行くこともあるし。
岸田 最初は本当に自分たちで行って交渉してライブやったっていう感じなんですか。
セイジ 最初に言った時は、THE 5.6.7.8'sのよっちゃん(YOSHIKO)が「ガレージショックっていうイベントがシアトルであるんだけど、空きがあるから出てみないか」って言ってくれて。
岸田 その一本のために行ったんですか。 セイジ とりあえずはそれに出て、後はどっかのライブハウスを見つけて、ドーンってドア開けて「たのもーうッ!」…とかやろうと思ってたんだけど(笑)。でも、その一本出たら「シカゴでやらないか」とか「メンフィスでやらないか」とかみんなが声かけてくれて。結局6、7本出来たんじゃないかな。その時に生まれて初めて連続でライブやるっていう事を経験したね。
──日本でもツアーみたいな経験ってなかったんですか。
セイジ なかったね。二日連続でライブやるなんて信じられなかったもん。まあそれで、メンフィスでテープを渡したら、それがファーストの「WOLF
ROCK」っていう形になって日本に送り返されて来て。それが出たら「MAXIMUM
ROCK'N ROLL」の表紙になったりして…。それからは、ちゃんとアメリカツアー出来るようになったのかな。でも、やっぱり最初は組んでもらってライブをやらせてもらうっていう立場だったから「サンキューサンキュー」って頭下げてばっかりだったんだよ、…でもいい加減イヤんなってさぁ(笑)。オレは絶対に向こうから「よく来てくれました」って頭下げられるようなバンドになりたいって思って。何度も廻ってる内に、今はようやくあっちから「サンキュー」って言ってくれるようになったけどね。
岸田 海外でちゃんと認められて、あっちで出したアルバムが逆に日本に入ってきて、こっちでも評価されてるっていうのは本当にすごいですよね。そういえば、カリフォルニアでのライブのビデオをこの間観てたんですけど、セイジさんが絡まったコード引っ張ったらJC(ギターアンプ)がグルーッて縦に一回転してて(笑)「アメリカってすごいな」って思いましたねー。
セイジ それは、ライブ中になんか怒ってたんじゃないの。ライブ中は世界五大パワーを使うんだけど、その中の一つに怒りパワーっていうのがあるんだよ。
岸田 怒りパワー…。他の四つは何があるんですか。
セイジ ピラミッドパワー、おばちゃんパワー、酒パワーとか色々あるんだけど。怒りパワーは、自分らの前に出たバンドが格好いいライブやってたり、自分たちの時に客が全然ノッてなくても、そこでシュンとするんじゃなくて、逆にとりあえず怒る。そしたらなんとかなるから。そういう時のライブって演奏はメチャクチャでテープなんか聴けたもんじゃないんだけど、自分の心にも客の心にもなんか強い物を残すことができるじゃない。状況を破壊しまくったら、メチャクチャな形にしてもどうにかなるもんだよ。…本当は「良いライブが出来たー」ってなれれば一番いいんだけどね。
岸田 なるほど! ロックの秘密が一つ明らかにされましたね。
セイジ あとは、長いツアーとかでライブ中に体が疲れてる時に使うのはエロパワー。とりあえずいやらしい事考えると体が結構元気になってくるから。これマジ。自分の体で完璧に証明されてるからね。
岸田 セイジさんのエロパワーって、一体何を考えているのかすごい気になりますけどね。
●ロックの秘密
岸田 セイジさんって、曲はどんどん出てくるタイプなんですか。
セイジ イヤー…、出てくる時は出てくるけど、やっぱ苦しいよね、昔から。「オールナイトでぶっ飛ばせ!!」っていう曲を作った時には、もうこれ以上の曲は出てこないだろう…って思ってたんだけど「環七フィーバー」が出て来て、これでもうダメだ…って思ったら「ミサイルミー」が出て来て…、かろうじて続いてる感じだよね。
岸田 リリースとかがなくても、作らなきゃっていう意識はあるんですか。
セイジ ツアーをいっぱいやってると、いい加減飽きてくるじゃない。なんか違う刺激が欲しくなるというか。だから、ツアーをいっぱいやって新しい物を欲しがるっていうのは必要なんじゃないかな。昔はレコード会社から「早く作れ、早く作れ」って言われるのも、ふざけんなとか思ってたけど、そのおかげで「狼惑星」「ジェット
ジェネレーション」は出来たんで、そういうのがないとどんどん曲は出来ていかないんじゃないかな。
──わりと「曲を作ろう」と思って作るタイプなんですね。
セイジ というか、日々常に曲の事を考えてるからね。色んな事をキャッチできるように。変な看板があったら「何!?」とか、気になる言葉があったら「ハッ」としたり。全てが曲のアイディアにつながってるから。メモとかはしないけどね。メモなんかしても無駄
だから。その時、強烈なイメージが来てたら興奮して絶対に覚えてるもんだから。メモをしないと覚えてないようなものは後から見てもイマイチだね。
岸田 ロックの秘密がまた一つ…(笑)
──それじゃ最後にシェルターでの2バンに向けて一言。
岸田 とりあえず今度のシェルターは本当に楽しみです。…イヤー本当、感動させたいし、感動したいですね。
セイジ シェルターはオレが日本で一番大好きなライブハウスの一つだし、シェルターでやること自体も楽しいし、惑星と2バンでやるっていうのも結構…今から緊張しています。
岸田 イヤイヤ(笑) セイジ エロパワーを使ってがんばるよ。皆も使うといいと思うよ!
GUITAR WOLF INFORMATION
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