●ずっと探求者でいたいです
―――前回ROOF TOPに登場されたのが2002年10月なので2年前で、その間にメンバーが替わられたりしていますが、まず最近のART-SCHOOLは木下さんから見てどうなかんじですか?
木下 メンバーは替わったけど、それ以外は今も昔も変わってないような気がするんだよね。人間的とか音楽的な成長してるとは思いたいですけどね。
―――その新しいメンバーはどうやって集められたんですか?
木下 戸高(賢史 / guitar)くんは、何年か前にDOPING PANDAと一緒に福岡行ったとき、お客さんとして見に来ていてその時にCDもらって仲良くなって、福岡ツアー行ったときよく飲んでましたね。ギターの音も才能あるし、センスがいいんですよ。宇野(剛史
/ bass)くんはメンバー募集を見て応募してきた野生人(笑)です。テープで応募してきた中から選んで、さらに絞ってその中からセッションしてそこから選んだんですよ。
―――でも、やはりメンバーが替わられたりしつつも、基本的には木下さんが作詞作曲されてるんで、多少音が変わったと思うにしても今までのアートを残してるなっていう気はしたんですよ。今回の『LOST
IN THE AIR』もそう思ったんですけど…。では、このアルバムについて聞かせて下さい。まずこのタイトルはどういう意味で付けられたんですか?
木下 響きがいいからですね。
―――このタイトルが1曲目のタイトルと同じで、詞を読んだときに“空気みたいな大事なものを失った”という意味に取ったんですが。
木下 どうなんですかね。あんまり言ってしまうとイメージが固定されてしまうんで、説明しないことにしたんですよ。でも、全曲が響きで決めた訳じゃないんですよ。2曲目の『FLOWERS』は、心の花を贈りますよっていう気持ちがなきにしもあらず…です。
―――なきにしもあらず…?でも、木下さんの口から“心の花”という言葉を聞けるのが珍しいですね。
木下 いやいやいや。いつの間にかそういうキャラになってるけどね。笑ってるイメージがないとか、神経質に一日中座ってそうとかね、機械的だったり、感情あるのかっていうね(笑)。そのキャラを打破しないとな。
―――確かに冷静そうなイメージがあるから、“心の花”とか言われると「おっ?」って思っちゃうんですよ。すいません…。ところで、このアルバムで特に気になったのが3曲目の『羽根』なんですけど、まずこの詞の中にある「太陽が似合わない人ね」っていうフレーズは…。
木下 それは現実に言われた言葉です。
―――はい。このフレーズ見たとき、実際に言われたのかなって思ってました。野外イベントとか出られてるときはいろんな意味で心配になりますね。
木下 いっつも炎天下なんですよね。普段バンパイアみたいな生活してるからここ最近もひさしく太陽なんか見てないですしね。
―――なんとなくイメージ通りです(苦笑)。あとこの曲には「小三で終わった」っていう意味ありげなフレーズがあるんですがどんな意味合いがこもってるんですか?
木下 僕は小三まで明るかったんですよ。絵を描くのが好きで、外向的だったんですよね。でも、小三の時に無理してる自分に気付いちゃったんです。それで洋楽とか主にメタルを聞き始めて…。
―――小三で?
木下 うん。スレイヤーとか聞いてましたね。あと中島らもさんの本読んでたり。小三で確実になにかが変わったような気がします。
―――こんな自分じゃないって思ったことがきっかけなんですか?
木下 いろいろな音楽を聴き始めて、その曲に対して「気持ちわかるなぁ」って思ってる自分がいて、そこに気付いたときに、何か今の自分違うって思ったんですよね。でも、普通
そんなに小さい頃から気付かないですよね(笑)。そのころは宇宙とか宗教の本とかめっちゃ読んでたし。何で人間生きていかなきゃならないんだろうって(笑)。
―――すごい小学生だ…。じゃあたとえば歌謡曲とかはあんまり聞いて来なかったんだ。
木下 全然聞いてないですよ。表向きはみんなには言ってなかったけど。
―――へ〜。でも、そういう木下さんだからこそこういった詞が書けるのかもしれないですよね。読むだけでも感じるものがいっぱいありますから。
木下 そうですね、すごくいい詞をかけるようになったと思いますね。ずっと成長したいと思ってるから、成長したいというか探求者でいたいと思ってるから、音楽的にね。日本でいい詞を書く人っていうのはあんまりいないと思うんですよ。いないからがんばれますね。
―――いい詞というか、読んだ人が何かを感じる詞がね。
木下 そうだよね。
●君と僕の歌
―――そういえば、今回このアルバムを聞いていて、前作もそうだったんですが、より“女性像”が浮かび上がってきてるように取りました。なんとなく“性”的なイメージもしましたね。このCDを制作する上でイメージしていたことってあります?
木下 ギリギリに追い込んだところでのコミニュケーションを歌いたいなと思って。基本的にYOU
& MEソングが作りたくて、言葉にするとばからしいんだけど、結局ロックって君と僕の歌っていうところしかないのかなって。別
にYOUが男の子でもいいんですよ。ライブって人がいっぱいいるけど、君と僕っていうのは1対1でしょ。でも、ひとつになれないんだよね。そういうとこが共有できるかなと。だからこの先もYOU
& MEソングはずっと歌うと思いますよ。それしか自分はできないし。あとね性的な感じがしたというのはね…。
―――前作に比べると生々しいっていう気はしたんですよ。今まではそういう言葉でもオブラートに包みつつな詞が多かった気がするんだけど…。
木下 でもやりたいとか書いてないじゃん(笑)。ほんのちょっぴり隠してるからよけい生々しく感じるのかなあ。
―――それはあるかもしれないですね。隠していた方が生々しいっていうのはね。でも、今までは人間の一番深い闇みたいなところで「死」のイメージだとしたら、今回は「性」だなと。
木下 生きることとか死ぬこととかSEXは絶対歌にしますよね。それしか書きたいことないし。大声で歌いたいことがないです。
―――そういうことを聞き手に伝えたいと…。
木下 キッズでもティーンネイジャーでも結局は心を熱くさせられるかだと思うんですよ。あとは大人が聞いても楽しめるものを。
―――確かに大人の人が読んで「分かる」っていう詞ですもんね。ところで、前作から今作を作るまでの心境の変化とかあったりしました?
木下 前作はメンバー変わってすぐっていうのもあったからかなり勢いで作ったな。今回は、世の中がより重苦しいカンジがしたんですよね。でも、そういうとこから一歩出たいなって思ってるんだよ、みたいなものを作った気がしますね。って、そこだけだとすごい暗い人みたいなだな、俺…。今のART-SCHOOLというか俺にしか作れないものを作ったと思ってます。
―――この作品はいつぐらいから作られてました?
木下 これ以外にもたくさん作っていて、昨年の秋冬にかけてはよく作ってましたね。
―――秋ですか…。秋って何にもなくても妙に寂しくなる季節じゃないですか?
木下 寂しい。
―――そういう時に作った曲だから今回のようなどこか寂しげな仕上がりになったのかなっていう気がしたんですが。
木下 うーん。でも、ポップに作ったことがないから。日々いろんなことありますからね…。だから今年は山場な気がするんですよね。今年生きて行けたらたぶんずっと生きていける気がするんですよ。
―――え?
木下 気分的にね。だって人間いつ死ぬかわからないじゃないですか。
―――じゃあ今年は大きなプロジェクトを考えてたりするのですか?
木下 アルバム作って、大規模なツアーやってっていう年末ぐらいまでの予定は立ててますね。今年は音源いっぱい出すと思うんですよ。曲はいっぱい作っててイイ感じなんで。不器用に歩いてきてるけど、それなりにがんばって大きくなっていってるよーみたいな姿を見せてあげたいですね。DVDも出したいなと思ってるし。すごい忙しそうでしょ?
―――はい。
木下 そうですよね。ね、山場でしょ(笑)。あとは精神的には乗り越えればね。
―――今年始まったばかりだし、まだ2005年1発目のリリースですからね。
木下 1作目はちょっと重かったけど、2作目はポップなものを作りたいと思ってますよ。『LOST
IN THE AIR』が灰色の部屋の中みたいなイメージで作りたかったけど、次は照りつける太陽みたいなイメージはないけど、やわらかい光の感じにしたいですね。
―――もうこの作品の曲はライブではやってたりします?
木下 やりたいんですけど、技術的に難しいんですよね…。
―――2月からはツアーも始まりますからね。どんなライブにしたいですか?
木下 凄く危ういカンジになるんじゃないかな。ぜひ見に来て下さいってカンジじゃないんで…。見ればいいじゃん!って思います。(笑)。
―――ライブ見るとお客さんのノリが想像以上だからビックリしますよ。
木下 基本的には目閉じて歌ってるからわかんないけどね(笑)。自分自身にいっぱいいっぱいなんですよ。
―――(笑)あとアルバムに関して読者のみなさんに伝えたいことがありましたら。
木下 いいと思うから買って下さい。今回はこういうアルバムですけど、次は明るいですよ。そこで始めて「変わったね」って言われたいですね。次もちょっと楽しみにしててください。
●違う一面を見つけてみました。
―――ところで、余談ですが前回のインタビューでダウンタウンが好きということがかなり反響あったんですけど、最近はどうなんですか?
木下 好きですよ。お笑いのDVDとかめちゃめちゃ見ますよ。おぎやはぎとバナナマンとアンガールズ。その3つはすごく好き。おぎやはぎとか自分でDVD買ってますからね。ミュージシャンのDVDはあんまり買わないのに、おぎやはぎのはピーンと来る。人間心理とか、お笑いの中でも冷たいカンジがすきですね。アンガールズは何か分からないけどオモシロイと思います。
―――やっぱりそういう一面もあるんですよね。
木下 ありますよー。なんとか打破していかないと。イメージほんとヤバイからね(笑)。
―――じゃあ、KINOSHITA NIGHTでお笑いの方が出るってどうですか?
木下 いやいや(笑)。でも、KINOSHITA NIGHTは夏にやろうと思ってます。東名阪と福岡で。
―――もうバンドは決まってるんですか?
木下 そうだね〜。去年の3月以来やってないから、いいメンツでできたらと思ってますよ。期待しててください。
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