自分たちの音だけを手に全力でぶつかった記念すべき一夜 渾身の一撃。もしくは開眼の一発。どう形容しても言い足りないけれど、あえてたとえるなら、ベースの合田
悟が大好きな阪神タイガースの、主砲・金本の豪快なフルスイング(もちろん特大ホームラン)を間近で見るような興奮が襲いかかるニュー・シングル「体温」のレコ発と、LOFTの6周年を記念するランクヘッドのワンマン。一文が長くてゴメン。年頭よりアルバムのレコーディング、そしてセカイイチらとともに各地を巡ったツアー「VINTAGE
LEAGUE」を終え、よく考えたら東京では今年初のワンマン。めっさ満員の会場は、まさに人の波をかき分けなければ先へ進めない。「『○○○』、歌うかな?」「どうしよう、始まっちゃうよ?」等々、あちこちで交わされている。ライヴ前独特の、緊張とワクワクが交錯する落ち着かなささえも心地いいほど、とにかく誰もが待っていたんだよ!
この日を。 気づけば、小高の白いシャツは汗でびったりとはり付いている。その小高が客席に身を乗り出すようにして言った。「俺は天才じゃないけん!
自分の思ったことを一生懸命歌うから!!」。そして「体温」。奇しくもこの日、25歳の誕生日を迎えたこの男。流れを断ち切るのを避けるように、ここまで特にまともなMCも挟まなかった彼が、やっとのことで一息ついたと思ったらこんな名言を吐いた。ヤツの一声に、うぉー、だか、わぁー、だかよく判らないけど熱い雄叫びがあちこちで勃発。胸の奥から湧き出た興奮のカタマリを、まるで取り出して手につかんで差し出すように、おびただしい数の拳が上がる。瞬間、ステージの4人とフロアの何百人もの間に、確かに何かが通
じているような感触があった。大きな声で叫ぶ人もいれば、思いはあっても声を上げることのできない人もいる。ただ手を上げることに、尋常じゃない勇気が必要な人もいる。ランクヘッドを愛しているというただそれだけの共通
点で集まった、生まれも境遇も性格も考え方もまったく違うオーディエンスたち。そのバラバラだけどクソ熱い気持ちが、4人の放射する熱とぶつかった、とてつもなく汗まみれの幸せな瞬間がこの日確かにあった。小高の声は割れ、サビはメチャクチャだった。さっきよりももっと近く、マイクが届くギリギリのところまで身をせりだして歌っている。どうしようもなく、そうするより他に彼も私たちも手段を知らなかったのだ。 |
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