快楽的なグルーヴを打ち鳴らす“GLOW”なバンド・サウンド
 オーソドックスなロックンロールを貫きながら、決して懐古趣味や“マニア向け”に陥ることなく、極めて快楽的なグルーヴを打ち鳴らす。Radio Carolineの新しい音源『GLOW』には、20代には決してマネができない、強靱で危険なバンド・サウンドが渦巻いている。PATCH(vo, g)、ウエノコウジ(b)、楠部真也(ds)の3人が生み出す音楽を聴いていると、本当の意味でのオトナ(自らの意志を全うするタフネスと技術を持ち合わせた人たち)のロックンロールがこの国に根付きつつあることを、ガツンと思い知らされるのだった。前作『Dead Groovy Action』から本作に至る、1年間のバンドの変化(または“変わらなさ”)を訊いた。(interview:森 朋之)

この3人でやればやるほど何かが出てくる
──ぴったり1年振りの新作ということですが。
楠部:そう、ホントにちょうど1年なんですよ。あっという間に1年経ちましたね。メンバー全員、1年分、年を喰ったわけです。
──どうでした、この1年は?
ウエノ:うーん、そうねぇ…。早いっちゃあ早いし、長いっちゃあ長いし。
楠部:僕はちょっと人見知りになりました。東京という街に揉まれてますよ(笑)。いい人もいれば、胡散臭い人もいるので。どっちかって言うと、胡散臭い人のほうが多いような気がしますね。気合いが入ってるように見せかけて、実は上辺だけの人間というか……まぁ、僕のことはどうでもいいです(笑)。
──(笑)何か大きな変化はなかったですか?
楠部:うーん、何やろう…。
PATCH:別にないなぁ。
楠部:あ、メガネのレンズを変えました。視力が落ちちゃったので。それくらいかなぁ。
PATCH:そういうことであれば、俺もありますよ。裾の広がってないズボンを買いました(笑)。いつも2人からヤイノヤイノ言われてたんですよ。“まーたラッパズボンかよ”って。なので、普通 のスラックスを一本買ってみました。こだわりなんですけどね、ラッパズボン。
──ウエノさんは?
ウエノ
:新しいことは、『GLOW』を録ったってことじゃないですか? それ以外はだって、やってること同じだもん。
──なるほど。『GLOW』のレコーディングはどんな感じで始まったんですか?
楠部:(収録されている)曲に関しては、ほとんどライヴでやってる曲ばっかりなんですよ。「DIRTY HEAVEN」くらいじゃないかな、ライヴでやってなかったのは。ライヴのなかで、いい感じにやれてる曲を入れたっていうか。
ウエノ:うん、ちょうどいい感じの5曲になったと思うよ。最初はシングルがいいなって思ってたんだけど、7インチ(のレコード)が10インチになったっていうか。昔のロカビリーのレコードとかって、10インチが多いじゃないですか? ああいう感じですよね。
──アナログ盤も出るんですよね。
ウエノ
:出ます。ヴィニール代が掛かっちゃうから、CDよりもちょっと高いんだけど。
──去年の『Dead Groovy Action』と聴き比べると、ちょっと雰囲気が変わってますよね。シブさが増したというか……うまく言葉にはできないんだけど。
ウエノ
:うん、変わったほうがいいと思うし。1年目に出したほうが普通 にいい音、2年目に出す音っていうのは、やっぱり違うと思うんですよ。核になるものは変わらないけど、その上で変化していくのはいいことなんじゃないかなぁ。俺もどこが変わったのかは判らないけど、良くはなってるんじゃない?
PATCH:“ギュッ”としてきたんじゃないですかね、単純に。ライヴも結構やったしね。100回練習するよりも、1回のライヴのほうがビシッとくるからね、やっぱり。
──音楽的な部分ではどうですか? 
PATCH
:えーとね、昔から余り考えてなかったんだけど、今はもっと考えないようになった。最近は“まぁ、いいか”って感じでやっちゃうことが多いんだけど、そのほうがまとまりがいいんですよね。特に今年の4月くらいからのライヴはどれもいいんじゃないかな。もちろん、前から良かったんだけど。
ウエノ
:(笑)
PATCH:あとは、『GLOW』をレコーディングしたってことも大きいよね。ツアーが始まる前にこんなに恰好良くなっちゃっていいのかな、ツアーの前に飽きちゃったりしないかなって思うから。
──変な心配っすね。
PATCH:そうだね(笑)。や、それくらいいい感じで回転してるってことですよ、バンドが。それが変化なのか成長なのかは判んないけど、やればやるほど何かが出てくるわけですよ、ミドル・エイジの俺たちでも。
──ミドル・エイジってことはないでしょう(笑)。
PATCH
:じゃあ、それはナシで(笑)。でも、やるたびに何かが出てくるんだよ、ホントに。もしかしたら“残り汁”とか“出がらし”かもしれないっすけど。ライヴで言うと、メンバー3人の立ち位 置が自然と決まってきて、それがぶつかり合うことで良い反応がどんどん生まれてる。真也とか多いですよ。“うわ、すげぇフレーズだな!”っていうのがいきなり出てきたり。まぁ、その次のライヴではできなかったりするんだけど。
楠部
:一瞬だけですからね、そういうのは。必死でやってるから、よく覚えてないっていう。
PATCH:俺にもあるみたいですよ。ウエノさんが言ってくれるんですよ。「あのフレーズ、良かったね」って。でも、こっちは覚えてなかったりするんですよね。「え、どれ? ホント?」って。
──アレンジはセッションのなかで固めていく、っていうスタイルも変わらず?
楠部:そうですね。「今の感じ、ええんちゃう?」って。そこで3人の意見がぶつかるってことも、そんなにないし。ズレたことを言うヤツがいないというか。
PATCH:まぁ、アレンジって言えるほど大したことやってないけどね、もともと。

キラキラしてるのは若い人に任せます(笑)
──でも、音楽の趣味って変わったりしませんか?
PATCH
:どうかなぁ…。
ウエノ:俺はいろいろ聴くけどね。4つ打ちとかも全然いけるし。もちろん、古いものも好きだし。
PATCH
:4つ打ちはダメですね、俺は。
ウエノ:(笑)
PATCH
:やっぱり古いものになっちゃいますね。新しいものはテレビで聴くくらい。
楠部
:俺も新しいバンドはほとんど知らないっすね。レコード屋に行っても、ブルースとロックンロールとジャズとロカビリーの棚しか見ない。(他のジャンルを)見る必要もないと思ってるから、そっちが深すぎて。あ、でも、この前スペシャで“ナイン・インチ・ネイルズ”っていうバンドの曲が流れてて、恰好いいなぁって思いました。有名なんですよね、あれ。
ウエノ
:めちゃくちゃ有名だよ(笑)。
──(笑)えーと、今回のレコーディングの方法についてはどうですか? 前作と違うところって言うと…。
楠部:スタジオが変わってますからね。当然、音も違うとは思いますけど。今回は川越のスタジオで録ったんですけど、そこって、凄い古い機材が揃ってるんですよ。レコーディングも16チャンネルのアナログ・テープを回して。
ウエノ
:加納(直喜)さんっていうエンジニアさんがいて、その人が手作りで作ってるスタジオなんですよ。“ホントに動くのかなぁ?”って思っちゃうくらいの機材があって、雰囲気も凄く良くて。そういうスタジオって、あんまりないんですよ。奥行きのある感じで録れたらいいなって思ってたんだけど、いい感じになったんじゃないかな。楽しかったよ。
楠部
:ソリッドな部分もありつつ、ふくよかな雰囲気もあって。アナログ盤で聴くと、そのあたりがもっとはっきり判るかもしれないっすね。
──音自体が気持ちいいっていうか。歌詞もそんな感じですよね。意味とか内容よりも、とにかくイケることが重要っていう。
PATCH:うーん、こういう言い方って失礼なのかもしれないけど、歌詞にはそれほど重きを置いてないんですよ。雰囲気とかイメージが恰好良ければそれでいい、っていう。あとは恋の歌とかね(笑)。
──では、それほど悩むこともなく?
PATCH
:曲を作ってる時に思い付くことも多いですからね。セッションしてる時に浮かんできたフレーズを広げていったり、そこに前から気に入ってる言葉を加えたり。たまには“うまく書けない”って悩むこともありますけど、まぁ、それほど大したことは言ってないので(笑)。俺の歌詞を読んで「PATCHの心の闇を垣間見たような気がする…」とか言われても、そんなの全然ないから。もちろん深読みしてもらってもいいんだけど、ヴォーカルも楽器のひとつっていうか、鳴ってるもののひとつだから。曲とマッチしてるっていうのが一番大事だと思います。
──『GLOW』っていうタイトルは?
PATCH:あ、それは僕ですね。というか、僭越ながらアイデアを出させてもらって、「いいんじゃない?」ってことになって。5曲を通 して聴いてると、そんな感じかなって思ったんですよね。“成長(grow)”じゃないよ。“モワッと光る”とか“ほてる”っていう意味だから。
──確かにそんなイメージですよね。
PATCH:同じ“光る”でも、“bright”じゃないなって。キラキラしてるのは若い人に任せます(笑)。
ウエノ:俺は“キラキラ”でもいいけどね。あ、でも“ギラギラ”のほうがいいか。
PATCH:湿度が高くて、モワッとしてる感じっていうか。爽やかな汗じゃなくて、老廃物が出てくるイメージ(笑)。
──(笑)でも、随分とシャレた単語を知ってますね。
PATCH:『GLOW』っていうのは、10年くらい前に友達がやってたイヴェントのタイトルなんですよ。その友達から意味を教えてもらって“いい言葉だな、いつか使いたいな”って思ってて。
ウエノ:うまく言い表してるというか、(バンドの)今の感じだよね、“GLOW”っていうのは。
楠部
:うん、ピンと来る感じですね。
──確かに子供にはできないロックンロール・アルバムですよね、『GLOW』は。全く落ち着いてる雰囲気はないんだけど、危なくてギラギラしたオトナっぽさがあって。
PATCH
:ちゃんと就職しなかっオトナって感じ(笑)。自分たちは何も意識してないんだけどね。ただ“ゴキゲンだな”って思ってるだけで。
楠部:“ゴキゲン”も死語だけどね(笑)。
PATCH:別に無理してるわけでもないし、狙ってるわけでもなく。自然とやったらこういうグルーヴになる……それだけですけどね。
──バンドの音楽的方向性なんてものを考えてるわけではない、と。
ウエノ:考えてないよ(笑)。考えてることって言えば“ライヴをやりたい”とか“またレコードを作りたいな”とか、そんなことくらいで。あとは、まぁ、楽しければいいね。

■Release info.
New Album & 10inch Vinyl including 5 songs
GLOW
COLUMBIA MUSIC ENTERTAINMENT,INC. / TRIADIN STORES NOW
1.DISCO MEXICO
2.BLACKY BLACK
3.DIRTY HEAVEN
4.BEAT FOR LIVE
5.IN AND OUT
CD: COCP-50852
1,680yen (tax in)
VINYL: COJA-50854
1,890yen (tax in)
 
Live info.

Radio Caroline "8 GLOW TOUR"
6月13日(月)下北沢CLUB Que
OPEN 19:00 / START 19:30
【info.】CLUB Que:03-5433-2500
6月15日(水)仙台CLUB JUNK BOX
OPEN 19:00 / START 19:30
【info.】GIP:022-222-9999
6月17日(金)札幌BESSIE HALL
OPEN 19:00 / START 19:30
【info.】WESS:011-614-9999
6月21日(火)福岡DRUM Be-1
OPEN 19:00 / START 19:30
【info.】サンライズプロモーション西日本:092-718-3939
6月22日(水)広島NAMIKI JUNCTION
OPEN 19:00 / START 19:30
【info.】夢番地広島:082-249-3571
6月24日(金)大阪JUSO FANDANGO
OPEN 18:30 / START 19:30
【info.】夢番地大阪:06-6341-3525
6月25日(土)名古屋ell.FITSALL
OPEN 19:00 / START 19:30
【info.】ジェイルハウス:052-936-6041
6月27日(月)新宿LOFT
OPEN 18:30 / START 19:30
【info.】LOFT:03-5272-0382
ALL AREAS:advance-2,800yen (+1order) / door-3,300yen (+1order)
【total info.】VINTAGE ROCK:03-5486-1099(平日12:00〜17:00)

Radio Caroline OFFICIAL WEB SITE http://columbia.jp/radio-c/

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