『電車男』には正直マジでむかついていた。「泣ける!」とか言っている割にその実、中身は負け犬女がオタな男に脱オタを迫って…と、一般
には「カルト教団からの逆洗脳」てなものなのかも知れないが、腹立たしい事この上ないのであった。と同時に、正直「またかよ」とも思った。知識も収入も何もかも、サブカルどもやお笑いに群がる負け犬女予備軍共よりは上回っている知的高等遊民のはずのオタクは、何故にいつまでたっても不可触民扱いのままなのか、もうそんなバイキン扱いなんてうんざりなんだYO!
…と思っていた矢先に、『電車男』に良く似たタイトルの本が出た。『電波男』なるその本は、鼻っ柱ばかり強い負け犬女共をなぎ倒し、ブッタ切り、ついでに凄い勢いで無理解な3次元にさっさと見切りを付けて“萌え”のたゆたう2次元への旅立ちを誘う、『マトリックス』にも似た危険な思想書だった。「オタク」という概念が発生してから20年以上経って初めての、「彼らの側」からの本格的な逆襲がこの本を期に開始されるだろう。著者の本田
透氏はプラスワンにて「妹祭り」なるイベントも開催しているが、そこに集まる多数の人々は何か彼から福音を、啓示を受けようとしているかのように見える。口幅ったい言い方ではあるが、「時代が動いている」感があるのだ。そんな騒動の発端である著者、本田
透氏にお話を伺った。(interview:多田遠志@中野のメイド喫茶が満員だったので隣のサ店にて)
──まずは『電波男』に行き着くまでの本田さんの活動についてお聞かせ下さい。
本田:HPの「日刊アスカ」(※1)を立ち上げて、そこでたまったネタで同人を1000部創ったんですよ。その後は映像学校とか行ってたけど、一文にもならない。卒業してもイケメンでもなく仕事もないので途方にくれまして。月収12万、田舎の山奥で安い賃金の所でTVもなく、ビデオなく、発狂しそうになってきて、こりゃいかんって事でチューナーつけてテレビを観られるようにして。そんでPRIDEにハマったんですよ。で「猪木暗黒神話」ってのをやってたんですけど、こりゃネタがホントになりそうだ、しゃれにならんって事で同時にハマっていたアニメの方に傾いていくんですよ。シスプリ(※2)なんかにハマっていって。今で言う「萌え」に突き当たった、と。
──『電波男』はプラスワンのイベントから生まれた。その経緯について。
本田:鬼畜祭り(※3)では酷い映像ばかりかかったんですけど、なにより安田理央さんの持ってきた『強制子宮破壊』(※4)がすごかった。タダでさえおとなしいオタクのお客さんは3次元でもう十分傷付いているのに…凄惨な光景を見てドン引きしている彼らの顔を見て、「ああ、これは何とかしなくっちゃなぁ」と。実際現実の世界ではもっと惨い事が展開されている訳ですからね。彼らの意見を代弁しないと。仲間の誰かが言わないと、このままでは「オタクは犯罪予備軍」などと世間に言われっぱなしになってしまうし。いつまでたっても圧倒的弱者ですよ。誰かが暴れないと、「ナメんなよ」て。まぁ、先達としては岡田斗司夫さんが率先して早くからオタキングを名乗ってましたけど、その後が出てこなくて…。オタク同士で論争したって仕方がない。内ゲバなんてしてる場合じゃない、外の世界と戦わないと、と思って。
──『電車男』とタイトルも似ているし、本屋でも並べられてますよね。その辺は意識して?
本田:あー、あんまり考えてなかったんですよねー。駄洒落レベルで。僕のやっているサイト「しろはた」だって「あかはた」からの思いつきですもん。あ、降伏してますって意味もあるかな。間違えて『電車男』で泣いてるような女が買わないかなー、くらいの。でも、サブカルコーナーに置かれて埋もれて行くのはいやでしたね。一般
のコーナーに置かれている本にして、日頃オタクをバカにしている奴らに手に取らせてガーンと思わせよう、と。一般
とオタクの境界線を破壊して、オタクを馬鹿にしてるやつに読ませたい。文化的にいくらオタク的なものが取り上げられても、オタクはどっちみち馬鹿にされるんですよ。どうせ出すんなら「鼻で笑われて終わらせたくない」でしたね。
──オタクの腹腹時計、球根栽培法(※5)ですね! あまり触れられてないことですが、ここ10年のアニメ、オタク業界は世間一般
からするとエヴァンゲリオン以降のブレイクがない、と思われているんじゃないでしょうか。エヴァなしにはいまの「セカイ系」とやらもなかったでしょうし。そのエヴァと庵野を、本田さんは『電波男』の中で「自分がオタクやめるのは勝手だけど、他の人に後足で砂をかけて行くのはよくない」と数行でバッサリ切り捨てていて、大変感じ入ったのですが。
本田:庵野さんと僕は逆だと思うんですよ。彼は2次元より3次元が大事。1人でそうすればいいのに他の人にもやめろってのがむかついたんですYO!
エヴァとは何か、それを突き詰めて、もうあんな人どうでもいい、オタクとしては終わった、と。キャシャーンでキリキリ(※6)が総括してくれましたし。ただ、エヴァによってオタクがある程度世間に認識されたし、文化的に、世界的に認められているのに今のオタクの虐げられた立場はおかしい、と。みんなエヴァのせいですYO!
僕は敢えてそんなオタクに「そのための護身だ」と言いたい訳ですYO! 僕個人はすでに2次元へと旅立ってしまいましたが、世間と折り合いを付けていかなければ行けない、戦っていかなくてはいけない彼らへの、2.5次元への勧め、なんですYO!
──本を出したあとの反響は大変大きいようですね。その評価は聖書or毒書扱いで実に極端です。その辺を見るにつけ、エヴァ以降の大空位
時代が続いたところで出てきた本田さんは祭り上げられている格好だと思うが。
本田:次の一手なんて電波男で出し尽くしましたYO!
まぁ、『電波男』が理論だとするなら、実践は創作活動とかイベントなんでしょうね。
──竹熊健太郎さんが心配なさっていますが、忍び寄る「モテの魔の手」については?
本田:モテの魔の手は分けへだてなくやって来る。どっちみち信用できないですよ、女性なんて。こちらの仕事の邪魔しなけりゃいいんですけど。とりあえず40まではやりたいこともたくさんあるから、女性に大しては完全に護身します。40くらいになったら、ネタ涸れも起きるかもしれない。そこで初めてモテの魔の手に落ち、ドーピングして再生するという道もありますが…とはいえ、僕は脳内で充足しているから、別
に喪女(※7)もいらないなぁ。たぶん40になっても枯れませんし。
──キモメン系文学雑誌『ファントム』について。これもある意味プラスワンのイベントから生まれましたよね。
本田:そうですよね…あれは『電波男』イベントが実現の後押しになりましたね。普通
の文芸はいやで、オタク向けな読み物をやりたかったんです。でも『ファウスト』(※8)はイカンです。サブカルっぽい、オタクをバカにしている!
『ファウスト』、作品の応募要項に年齢規定があって20代しか書けない! そんなのおかしいですよ。ライトノベルで育ったイイ歳の大人だって多いし、これからだって増えていくんだから、需要はあると思いますYO!
年令広めの小説ジャンルを作りたいんです、大人のおたく向けの。一生読める、生涯学習ライトノベル。ビッグコミック方式です!
ジャンルを超えたオタク系で活字中心媒体ですが、漫画もありでやりたい。もちろん負け犬女は仮想敵ですYO!
──最近の王子さま事件(※9)などなど、何かあるとやたら取りざたされるヲタ系の扱いについては。
本田:さっそく僕のところにも取材が来たんですけど、わざわざ大きく騒ぎ立てるため10年前のエロゲー持ってきて「関係ありますよね」だって。ほんとマスコミは自分達の意見に当てはめたがるよねぇ。先に記事ありきで。『電波男』は王子みたいに鬼畜のルートに堕ちないための萌えを説いているんですよ。もともとエロゲーって世界にしてもマスコミの報道してるようなものでは全然なくて、萌え系8:鬼畜系2、くらいのものです。それをマスコミはおたくのエロ=キモい=鬼畜って短絡的に当て込んでしまう。それに、オタクはあんなことはできないです。殴ったり蹴ったりなんて、DQNしかやらないYO!
オタクはむしろ「乙女回路内蔵→女の子にシンクロする能力がある」から、女性キャラにとてもとても共感してるし。でも、今後もこういった事件が起こるのだとしたら、2.5次元という新たな世界に向けてのガイドライン的な『電波男2』が必要なのかもしれないですね。
──今後について、あとウチでのイベの今後の展開についてお聞かせ下さい。
本田:取りあえずの目標としては「萌えられる対象」を自分自身の手でつくりたい。それはアニメでもゲームでもジャンルは問わないんですが。僕がこういう風にがーっと言っていることを誰かが萌え要素でまとめてくれたっていい。皆が萌え妄想の生産者であり同時に消費者である状態、これこそまさにほんだシステムの実現ですよ!
──オタクも増えてますけど、同時に確実に負け犬も増えている訳で。喪女育成やほんだシステムの実現の為、今後とも頑張って下さい。
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