玉置浩二・幸せになるために生まれてきたんだから BOOK
志田歩 (雲母書房)1800円

玉置浩二賛歌いっぱいの・・・

 わたしゃ、玉置浩二には全く興味がない。安全地帯というバンドにも、薬師丸にもほとんどすれ違った事すらない。20年前ぐらい一度だけキティミュージックの田中副社長の頼みで私が新宿ロフトにブッキングしたことがあって、お客も大して入らなかったし、なんかロフトとは無関係な芸能界的なバンドだな?っていうイメージがあったもんだ。それからすぐ一躍売れたバンドになって、売れちゃったら別 に安全地帯はロフトに出演する必要性のないわけで、私の「玉置浩二」という思考回路はここで断絶するのだ。この玉 置と私が接点があるとすれば、バツ二(ばつに)と言うところぐらいかも知れない(笑) しかし私はこの執筆者・志田歩の本の紹介を書かねばならない。なぜか? 私は志田が好きだし、友達だし、渡世の義理で「うん、まかしとけ、ルーフトップに志田の本の書評は俺が書くよ」って言ってしまった手前書くことにしたのだが……、何回かこの本の表紙を開いては見るのだが、この本の主人公がどれだけ人間的に、あるいは音楽的に優秀だとしても私にとっては興味を持てないでいるのだ。だから相変わらず後書きと帯文だけで私はこの本の紹介をするしかない。志田歩ってなんか、変なイレギュラーアウトサイダーなんだよな。慎太郎や田中康夫が出た学校を卒業して3000倍の競争率を突破してぴあに入社するところなんざぁ〜私なんかとは違った人種なのかと思ったら、もういい年して売れないバンドやったり、平気で会社を辞めて食うや食わずの音楽誌なんかのフリーランスのライターなんかやっている男だ。さらには下北沢の町並みを破壊する都市計画の反対運動に深く関わったりしている。わたしゃ、玉 置浩二より志田歩の方が面白いと思っているのだ。
 さて本書だが玉置浩二の音楽性、人間性に深く魅了された男の執念の作品と見た。 「・・・とはいえ、そのように少しずつ見えてきた玉置のエネルギーと発想のスケール、そして音楽の才能は、こちらの予想をあまりにも越えた巨大なものだったため、・・・そのさなか恥ずかしながらインタビューする立場の僕が、話を聞くうちに、涙で言葉を詰まらせ、取材を滞らせてしまったこともあるし、関係者の証言に込められた玉 置の愛情の深さに、声を上げて泣きながら猛烈な勢いで文章を書き連ねていった夜もある」という後書きはまさに志田は全く玉 置のファンであるがために冷静さを失っているように見えるが、もしあなたが玉 置浩二のファンだったらたまらなく、あらゆるところで同じような価値観を共有出来ることだろうと思う。 (平野 悠)

ロコ!思うままに BOOK
大槻ケンヂ (光文社)1,524円+税

大槻ケンヂはやはりロッカーだった!

 もう30歳だっちゅうのにボクは、どうにもこうにも一人で寝るのがさみしくって、毎晩CHEEKYくま三姉弟と川の字(一本多いか)になって一緒に寝ているのだ。さらに、部屋で一人でいる時にはくまちゃんとおしゃべりする時もあるし、時々はリュックの中にくまちゃんを入れて出かけたりもする。……まあ端からみたらお薬数週間分くらい出てしまうような姿なのかもしれないけど、生きづら〜い世界の中で生きてくために、ボクにとってくまちゃんは非常に重要な存在なのだ。程度の差はあれ、みんなにもそういう物ってあんでしょ?  大槻さんの歌詞や小説では、そんな感じで世界と自分との距離を上手くとることが出来ない社会不適応者、ダメ人間たちがたくさん描かれている。今回の短編集にも、キチガイ親父によって10数年間奇妙な館に閉じこめられていた少年、中身カラッポのアイドル、少女ゾンビを弄ぶ再殺愚連隊、そしてボクの心を見透かされたかのような、ぬ いぐるみのくまを溺愛する男……等々、数々のダメ人間たちが登場。そして、そんな彼らが生きづらいこの世界を破壊すべく行動を開始する。その鍵はロックンロール! チンポに脳を支配された若きバンドマン、アイドルに夢中な少年、さらには特攻隊員までもがロックンロールを手にして、今、目の前に広がる世界をぶち壊す!
 ロフトプラスワンでのイベント「のほほん学校」では杉良太郎とかのカラオケを歌ってばっかりいて、どう考えてもロック業界一ロックに興味がなさそうに見える(?)大槻さんの、ロックへの熱い思いほとばしった、ニヤリと笑えて、泣けて、ちょっと独りで体育座りしたくなるような物語の数々。文章がまた、疾走感、ライブ感にあふれていて、「ダヴィンチ・コード」は上巻の途中で飽きちゃったボクも一気に読んでしまいましたよ。さすが、20年選手のロックミュージシャン大槻ケンヂ! 
 ちなみに「ロコ!思うままに」イメージソングを収録した「特撮ベストアルバム・ロコ!思うままに」も発売中! こちらも併せてドーゾ。 (メリーソート至上主義・北村ヂン)

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教えて!メガネ君 ヨシダプロ初作品集 BOOK
ヨシダプロ (イースト・プレス) 6/30発売 1000円

ヨシダプロの初単行本が発売されるよ! 要チェックや!

 mixiでも大人気(マイミク999人は、ほかに高橋名人ぐらいらしい)、ニフティのデイリーポータルZでも大人気のイラストレーター&ホームページャ−、「ヨシダプロ」ことヨシダプロが初の単行本を作ったよ。どうやらメガネ君とメガネ犬がいろいろ教えてくれるらしいんだけど、「メガネ生物学」「メガネ家庭科」「メガネ音楽」って、意味がわからないよね。描き下ろしワールドカップ漫画(「ドイツ代表vs多摩代表」)とか、ファミ通 漫画賞受賞作(ってどのぐらいすごいのかな?)とか、全然試合が始まらない高校野球漫画とか新撰組とか。つまりはマンガがいっぱい載っていて、メガネ君が案内してくれるらしい。  もちろんヨシダさんのことだから、漫画以外のコンテンツも超充実。読めば読むほど気力が失せる英単語帳「なえたん」や、学生時代に誰もがやっていた、授業中の落書きを集めた「僕のクラスのデスノート」みたいな、微妙に時代とリンクしてるようなしてないような、笑えるネタが漫画の合間に入ってる。  そしてヨシダプロといえば忘れちゃいけないのが、黒ラブラドール犬のモモ。レイザーラモンの格好させられたり、犬村さんになって家事を手伝ったり、ヤギと戦ったり(?)、いつもラブリーな行動と愛嬌ある瞳でみんなを萌えさせてくれるモモも、カラーページで登場(真っ黒だけどね)。さらにおまけで、モモ特製ポストカードまでついてくる。
 多分ヨシダプロを知らない人は、ここまで読んでも何がなんだかさっぱりわからないよね。でも、こう説明するしかないぐらい、とにかくいろんな面 白いことをやってるのがヨシダプロ。手っ取り早く知りたい人は、デイリーポータルZの日曜日か、ヨシダプロホムーページ(←誤植ではない)をみるといいかも。あ、でも、もしよかったら、この本をちょっとでもいいからのぞいてみると、ヨシダプロが何者なのか一番よくわかるかも知れないね。 (永山多摩雄)
●6/15(木)、ヨシダプロさんが表紙と漫画を描いた『オキナワ放浪宿ガイド120』の発売記念イベントにヨシダプロさんが登場(出演:ヨシダプロ/カベルナリア吉田ほか)。
●6/28(水)には、『教えて! メガネ君 ヨシダプロ初作品集』発売記念イベントを、ロフトプラスワンで開催(出演:ヨシダプロ/林雄司/住正徳)。

KKKベストセラー BOOK
中原昌也  (朝日新聞社)1890円

中原君への手紙

 元気ですか中原さん。こっちはいつも通りです。相も変わらずです。毎日様々なジャンルの方々をお呼びしてきらびやかなイベントを開催していますが、あまりにきらびやかすぎて詳細を未だに旧友や親類に説明する事能わず、社会的にはふらふらしてるのと変わりません。入れているイベントの方も相変わらずです。もっと自分の興味の範疇外も仕事として入れて行かなくてはいけないのですが。社内政治活動も全然です。もっともそんな事ができるのならハナからここには来ていないと思うのですが。サブカルの殿堂、なんて言われてますけどそもそもサブカルなんて物は最初から存在していない、ってみんないつ気づくんでしょうね。砂上の楼閣の上のあやふやな日々が続いています。
 んな感じで不安になったり、キツくなった時にはいつも中原さんの事を考えてしまいます。今回の『KKKベストセラー』読みました。相変わらずですね。自作のサントラCD付き、切り取るとはやりのホワイトバンドになる特殊装丁のカバー(図版上部参照)、そんな照れ隠しのギミックも面 白かったですが、いつも通りの苦吟に満ちた文章、読んでいて安心しました。「書く事は苦痛で苦痛でたまらなく、生活のためでなかったらこんな事やりたくない」「マス目を埋める作業がたまらなく辛い」と。でもそれでも書く事を止められない、そしてありきたりなまるで作文教室の教本から抜書きしたかのような素っ気ない文章でカモしても溢れ出てしまう、自己存在に悩む中原さんの存在、それ自体が文学者の根本的な姿だとその事に本人は果 たして気づいているのでしょうか。
 ただ心配なのはそのスタイル、厭世観が中原さん自身を凌駕してしまわないか、と言う事です。ねこぢるさんでも青山(正明)さんでも、そういった内面 の獣を飼いならせなくなっていった…そんな人たちを数多く目にしてきた(利用して商売してきたんだろ、と言われたら返す言葉もないですが)だけに心配です。うまくそれをいつものようにシャレや下ネタで制御していって欲しい、そんな風に思います。中原さんのような文学者が倒れて、石平みたいなタレント作家ばっかになったっていい事ないですよ。個人的に、あなたはカフカの再来だ、と思っているのですから、余りご自分に過負荷をかけぬ よう。ご自愛ください。 (多田遠志)

異形コレクション「闇電話」 BOOK
井上雅彦監修 (光文社文庫)781円+税

祝・ゴミ鍋マスター推理作家協会賞受賞!!!!!!

   我らがゴミ鍋マスター平山夢明氏、前々から私は「来る来る」主張してましたが、マジでキターーーーー! 言わずと知れたホラーアンソロジーの名シリーズ『異形コレクション」第32巻の「魔地図」に発表した短編「独白するユニバーサル横メルカトル」が、かの推理作家協会賞にノミネートされ…ただけでなく、なんと初ノミネートにして受賞という大快挙を成し遂げられたのです! くぉんなめでてーことは近年なかったぞ!
 ご本人がブログで記していることを読んだり、ゴミ鍋の際にちらちら舞台裏を聞いたりなどしていると、平山さんの短編作成法はほんといっつも「あん時ゃドシャ降り!」的。半分以上できたネタを惜しげもなく捨て、いちからやり直し、執筆陣の中でも多分かなり最後の方と思われるギリギリの提出… それでもそのギリギリ張りつめた感が、乗りに乗ってる時、サイコーなんです! 細かいこと言い出すと「あれ? あの話はどこへ行った?」とか色々あるんですが(笑)、そんなことネジ伏せて余りあるスピード感、躍動感。「地図」そのものがグロテスクな事件の真相を語るという、普通 だったら大いにネタばれになりそうなことをさっさとタイトルで謳ってしまう潔さ! まさに「オンリーワン」であり、平山さん以外には書けない作品であります。この文字通 り“異形”な短編に由緒ある賞が与えられるとは、まだまだ世の中捨てたもんじゃない!
 さて異形シリーズ最新刊第35巻「闇電話」にも平山さんの短編『それでもおまえは俺のハニー』が載ってますよ! “飲んで飲んで! FUCKFUCK! BANGBANG!” いやもう最高!!!!  あまりにもひどい汚言の数々。読み終えるとピーナツバターがイヤんなります(笑)。恐らく監修者の井上さんはこの作品を(平山さんの入稿が殺人的に遅いので)読めないうちに、紹介文を書かれたのじゃぁないかな、と勝手に推測。もしそうだった場合、アンソロジーの中で待ちに待った最後の入稿作品がこれだったと知った時の心境は…察するに余りありますが、推理作家協会賞祝いでどうか許してあげてください…m(__)m←勝手に代わりに謝ってる
 受賞を知った“ザ・ゴミ鍋ッツ”でささやかな祝いの席を設けさせていただいた時の平山さんは本当に嬉しそうで、数々の名言を残して楽しそうでありました。死ぬ ほど笑ったことだけ覚えていて詳細がどうしても思い出せない、まさにゴミ鍋ステージの再来…という感じでしたが、少し再録してみると、「タイトルは『汚れたお数珠』だよ!」「そのお数珠が伸びるんだよ…“口ではそういっても…夜のネズミが鳴いてるじゃねぇか”って」(笑)。いったい何の話だったのか?? そして受賞後第1冊めとなるはずの単行本タイトルは「いま、殺りにゆきます」(笑)。今後も目が離せませんよ!(尾崎未央)

モンティ・パイソン レアリティーズ コレクターズBOX  DVD
(デックスエンタテインメント)6/2発売 8800円(税別)

「全ての笑いはここにあり!」みたいなモンティり形の事は言いませんが

 死んで欲しい芸人、てのが僕にはある。仕事にも差し障りがあるので、ここではあえて名を伏せるが、歯並びの悪い彼が賢しげに言う事には、「モンティ・パイソンとか正直何が面 白いのか判らない。時代遅れって感じで」「それに比べたらラーメンズさんの笑いって今のモノ、って感じですよね」その後かれの「ロックとお笑いの融合」などのタワ言が続いたのは言うまでもない。ラーメンズが明らかにモンティ・パイソンの影響下にあるのは見れば判る話、彼の無知蒙昧さは言うまでもないのだが。しかし、モンティが判らない、つまらないとは言いづらい今のラーメンズのような対象であった事は否めない。「判らない」=バカ、というレッテルを貼られてしまうような。
 そんなインテリっぽい、難解であるというイメージを持たれがちなモンティ・パイソン(判らない人はお調べ下さいね)。確かにオックスフォード、ケンブリッジの英国名門大出身者が構成メンバーなのは確かだが、そういった奴らがウンコチンコも含めたクッだらない事をする、その落差を楽しむ、そこを誤解されているだけのような気がする。ツラが、動きが面 白い、その程度の今のお笑いの感覚で観たとしても十分通用する破壊力があると思う。ちっとも古びてなどはいない。ただ、それを知っている=知的な笑いに興味がある、と思われたい、そんな道具に堕してしまっている嫌いもあると思う。そんな誤った認識が先のモジャモジャ芸人の発言を生んでしまうのだ。
 幸い日本はモンティ環境は恵まれている。DVDで本編も、メンバーの映画作品も見る事ができる。研究書、インタビュー本も多数発行されている。そんな中、モンティ以前にオックスフォード組とケンブリッジ組が別 々に撮ったコメディ番組『アット・ラスト・ザ・1948・ショウ』『ドゥ・ノット・アジャスト・ユア・セット』が、揃ってDVD化された。シュールな状況や言葉遊びが多いオックス組、肉体的、見た目の笑いの多いケンブリッジ組、この2者が融合して歴史的コメディ番組を形成した、そんな貴重な映像と言えるだろう。
 プラスワンでも数回モンティイベントは開催されており、コントの台詞をそらで言える、そんな熱狂的ファンで埋め尽くされたものだ。僕のイベントの1つのゴール、として+1にモンティメンバーを呼ぶ、というものがある。M・ペリンとか世界の旅番組とかやってたんだから何とかなりませんものかね。最悪G・チャップマンの骨壺でもいいから。 (多田遠志)