なぜ「彼女」たちは生きた爆弾になったのか? う〜ん、凄い!一介のロシア20数歳の女性ジャーナリストであるユリアがロシアチェチェンの「自爆テロに向かう女性達」の真実を求めて、直接チェチェンに入り、ロシア警察や諜報部を相手にして、内側からの取材活動を始めるのである。彼女は永遠にやむことなく続く戦いの中でお互いに殺し合う「あちら側」や「こちら側」の連中に会って取材したのだ。当然この本はロシアでは出版禁止になる。 「私は1年かけてチェチェンの隅々を回り自分自身を爆破したこれらの女性達に関する事実を一片ずつ集めて来ました。・・・嘘・嘘。嘘があふれています。私達は皆、偽りの中で生きているのです。私たちはテレビのブラウン管から流れる言葉を信じています。」 と筆者ユリアが言う通り、これは日本のマスコミにも国民にも言える話だ。本書は「この女性達は本当に自らの信念を持って自爆テロを行なったのだろうか?」と言う一つの疑問から取材活動が始まるのだ。 麻薬漬けにされた女性、ドンファンみたいな色男に騙される女性、貧困で両親から売られた女性、夫が理由なく処刑され一人残された女性、こういう「スカウトマン」に連れさらわれた選択肢のない女性達は、好むと好まざるに関わらず体中に爆弾を抱え、夢遊病者のごとく標的に向かい、彼女たちを操る男達はリモコン操作をしながら、一方ではビデオカメラを回しながら自爆テロを行うのである。 筆者は訴える。チェチェンではイスラエル人によって殺された自分の肉親の復讐の為に死に向かっているんではないのだ! 「遠隔操作で彼女たちは自爆させられているのだ!」と・・・。(平野悠)
菊地さんはいったいどこまでいってしまうのだろう 「毎月、JポップのシングルCDを3枚選び、発売4週目までの売上げ枚数を予測する」というのが、この本の表向きのコンセプトです。が、それはあんまり重要じゃない。そもそも、何枚ぐらいの誤差ならOKなのか、その辺、実にいい加減。本文に登場する担当H氏は、答え合わせの度に「また外れです……」を繰り返し、一方の菊地さんは「5000枚差ぐらいニアピンにしない?」とか「なぜか3枚とも予想結果が84200枚に!」とか、どんどん暴走。 この本には2003年9月〜2005年5月分までが収録されているのだが、ミリオンセラーは2003年に1枚、2004年に至ってはゼロ。さらに、最終総売り上げと4週目までの売上げがほとんど変わらないのだ。ショボッと売れて、サクッと忘れられる。その繰り返し。CD、思ったほど売れてないのだ(菊地さんも始め、実売数のきっちり10倍の数字を予想してしまうという凄いんだか凄くないんだか分からないナゾの能力を発揮しているし)。 でもまあその中でも、売れたり売れなかったりの差はあるわけで、平井堅の微妙なソフトヴォイスに隠されたサービス過剰さと売上げの関係を指摘したり、ORANGE RANGEが他の「パクリ」と違ってなぜここまで肯定されたかを論じてみたりと、一応、「商品」としての音楽を毎回、異常なハイテンションで語っている。まあ、ヨタ話も挟みつつ。どこまで本気なのかわかんないまま、論理だけはスッキリと、勢いにまかせてザクザク語ってゆく手付きは、やっぱり天才的。どんな素材でもあっという間に調理してみせる板前みたいで、とにかく読んでいてヒジョーに心地よい。普段Jポップをほとんど聴かない菊地さんはこの企画を、面白がってんだか無理矢理テンション挙げてやってるんだかわからないが、まあ、読むヤツの怒りだか爆笑だかなんかその辺の感情を刺激してくれることは間違いない。 この饒舌体の文章は、もしかしたらダンスホールユニット、ジャズグループ、映画音楽にもの書きに音楽講師、環境から産み出されるものなのかも。菊地さん、死なない程度にこのまま過剰な横溢を続けて下さい。音楽でも文章でも。 (LOFT BOOKS:今田 壮)