ホントの意味で恐ろしい人間の狂気 ボクは霊感とか全く持ち合わせていないので、飲み会とかで「オレ、守護霊が見えるんだ」などとのたまい、チンポをアンテナのごとくピンピンにしながら霊気を受信している霊感くんや、放課後の教室でいきなり「キャーッ! 吉田さんの肩の上に男の人の顔がッ」なんて騒ぎ立てて、みんなの注目を集めようとする不思議ちゃんを見ると、「霊なんかいるかッ! 死ね、腐れチンポ(or マンコ)」と叫びながら金属バットの底の部分でガッツンガッツン鼻骨を粉砕してやりたくなる。紳士だからホントにはやらないけど。 そういうタイプなので、肝試しやお化け屋敷、怪談話、ホラー映画の類を全然怖いと思えず、基本的には「あー、血がビュービュー吹き出してる! ユカイだなー」程度のスタンスでニヤニヤしながら観ている。 しかしボクにも子供時代、死ぬほど怖い物があった。それが「はだしのゲン」。絵が怖いとか、話が怖いというよりは、単純に「原爆落ちてきたらホントに怖いなー」(そりゃそうだ)という感じだったんだけど、冷戦が終わった後も、群馬の片田舎のガキのくせに核戦争の恐怖に恐れおののき、毎晩寝る前には布団の中で「原爆が落ちて来ませんように……」と世界平和をお祈りしてたもんだ。ま、今では「はだしのゲン」を上質なバイオレンス&ギャグ漫画として認識して、枕元の本棚に「はだゲン」(マニアはこう呼ぶのだ)全巻をズドーンと並べてるくらい好きなんだけど。 そんな原爆トラウマバンバンの時期に読んで、さらにトラウマを取り返しのつかないくらいザックリ刻み込んでしまったのがこの日野日出志の「地獄変」だ。恐怖漫画の巨匠・日野日出志が油の乗り切ってた時期に描いてしまった、まさに集大成であり代表作。 原爆の影響で奇形として産まれた地獄絵師が描き出すクレイジーにもほどがある自らの生い立ちの数々。家族の描写等は作者自身の内面、私生活に思いっきり踏み込んだ、ある意味自伝的な内容らしいんだけど、コレが自伝ってホントどんな人なんだ!? と思ってしまう。藤子不二雄にとっての「まんが道」にあたる作品って事でしょ!? ……ウワー。 でも、作者自身「悪霊よりも覚醒剤やってる奴の方が怖い」と語ってるように、クソつまんないオカルト話ではなく、ホントの意味で恐ろしい人間の狂気が妙なリアリティを持って描かれている。ホント狂ったとんでもない漫画なんだけど、こういう人、現実にいるもんなー。 余談だがボクはこの「地獄変」と「はだゲン」、そして原爆の影響で巨大化した精子の話、根本敬の「タケオの世界」を「三大原爆漫画」と呼んでいる。……こんな事言ってるヤツ他にいないよな。(青春冒険王・北村ヂン) ※EVENT!!! 2月22日に日野日出志さんのイベントがロフトプラスワンで開催されます。
部外者が覗き、紹介する超絶抱腹絶倒フェチ道紹介! 君もアッガイで欲情必至?! 『悪趣味ゲーム紀行』シリーズで業界を震撼させたがっぷ獅子丸…とか偉そうに書き始めたが、連れ合いの多田と違い私はそんなにゲームをやらない。だがそんな部外者まで愛読しちゃうほど、氏の表現力や着眼点は面白い! 今度のテーマは、何とエロ。ゲーム業界話でも怪談(お好きらしく、『ゲーム業界奇譚』にも素晴らしい怪談を寄稿している)でもない! エロ小説誌『二次元ドリームマガジン(通称ゲドマガ)』に連載されたコラムをまとめた、フェチ映像紹介だ。正直これだけならそう目新しくない…例えばむかーしブロスなどで柳下毅一郎氏が書いていたヘンなウェブサイト紹介連載とか、最近の下関マグロ氏のライフワーク、フェティッシュな人々観察とか。一般人がネットにそう気軽に触れられなかった頃、こういった「ディープな世界の入り口紹介もの」は本当に貴重な情報源だった。これだけ高速インターネットが普及し情報が溢れ返る現在、よほどの専門家が書いた文でなきゃわざわざ食指が動かない…そんなうるさ型のアナタにこそお薦め! 紹介されてるのはデブ女、大女妄想、超巨乳、動物交尾…と、知らない人にはそれだけで面白く、知ってる人は「何を今さら」と言いたくなるような有名どころフェチ。だが普段から趣味で変態さんたちをヲチしているわけではない、全くもって部外者のがっぷ氏の手にかかり、一見手垢のついた「フェチもの紹介」が抱腹絶倒のコラムとなっている。逆説的に、それら変態道への愛のなさ、「何でこんなモノを見て紹介せねばならんのだぁ」という首尾一貫したボヤキが読ませる芸になっている。正直に告白すると、私はお風呂での半身浴ひまつぶし用にこの本を読み始めた。しかしすぐに大後悔。爆笑に次ぐ爆笑、つい読み耽ってしまいのぼせて何度も卒倒しかけてしまったのでありんす。特に全身タイツ、通称「ゼンタイ」のネタには失神寸前に。顔無しもじもじくんみたいな全身タイツの男女がエプロンつけて仲良く夕食用意している画像、ロードムービー画像…。本でこれだけ長く深く笑ったのは久しぶり。あと女が虫を踏みにじり汁をまきちらし続けるだけの映像。本当に出演者が事故(自殺?)死し、関わったスタッフにも因縁めいた現象が起きている故AV嬢を、何と恐山で呼び出しファック/放尿したりする罰当たり映像とか! 本編もテンコ盛りだが、補強するコンテンツも抜かりなく、海野やよい、しのざき嶺ら錚々たる絵描きの方々が各1ページ自身のフェチについて絵コラムを寄せている。表紙カバーもめくれ! また絶品なのが巻末コラムの催眠術大検証リポート。プロの催眠術師とアシスタントに術をかけられ、身近にあるモノで手軽にHな気分になろうという捨て身ヤケクソ体験企画。フラワーロックもどきやアッガイの人形に皆で必死に欲情します。最終的にはPS2のコントローラーで!!!(笑)「このグリグリが…ハァハァ」てな世界、悶死もの。単なる第三者的に不可解深遠なエロ道をからかい詠嘆するだけでなく、自身も新たなエロを極めてみようと言う意気やよし! …しかしその後解けたのかしらん、と妙に気になってしまう1冊であります。 (尾崎未央)