復活30回目

「石原都知事殿、歌舞伎町を愚弄するのは許さない!」

 十数年前、新宿の西口に巨大な東京都庁がやってきて新宿の大半はホワイトカラーの連中に占拠されるようになった。その時私は「余計な奴等がやってきた」と思った。そして新宿西口は公務員とそれに群がる高級ホテル等が広がり面 白味のないオフィス街になった。
92年「暴対法」の施行ににより、権力の弾圧はそれまで新宿の街を「支配、安定」させていたヤクザ組織を追いつめ壊滅状態にしたが、しかしその利権は警察が握ることになり、新宿はより無秩序、無国籍な混沌とした「漂流街」となった。
街は「猥雑」ににぎわっていればいるほど面白い。色とりどりの風俗の看板コピー、人情あふれる裏通 り、風俗のお兄さんの客引きの肩口から怪しげな小さな声が聞こえる。「旦那さん、いい子いるんですよ、もう、5千円ぽっきりで、、、」くずれかけた路地のエロビデオ屋では黒いカーテンの向こう側から、「お客さん、こっちにすごい裏ビデオがあるって、、、」と招きいれられる。おっ、なんて魅力的な響きだろう。この怪しげなふれあいこそ、歌舞伎町の醍醐味なのだ。
西口に居を構えた23年の歴史を持つロックの「新宿ロフト」もトークライブハウス「プラスワン」もその拠点を歌舞伎町のど真ん中に移した。その理由はいろいろあるが、この不可思議な街・歌舞伎町の混沌とした無国籍の街にこそとてつもないパワーとエネルギーを秘めたあらゆる可能性が内在していると信じたからなのだ。ロックという表現(新宿ロフト)が、あるいは人と人とのコミユニケーション(トークライブハウス・プラスワン)形態が健全で、お上の決めた権力に守られた中で生きながらえたとしても、果 たしてそれがなんになろう? 何か新しい創造が生まれるとでも言うのだろうか?という問題意識がふくれあがる。
「歌舞伎町は恐い」と人は言う。確かに私も歌舞伎町の深夜に街を徘徊するには今だ若干緊張する。街を歩き、他人とちょっと肩がふれ合うたびに、早くもこちらから「どうもすいません」と先に謝ってしまう癖がついてしまっている。これが深夜の歌舞伎町を徘徊する者達の「鉄則」なのだ。そうすると大抵同時に相手からの謝りの声が聞こえたりして笑ってしまったりもする。
「新宿のある地域においては夜など歩ける状態ではない、どこの国にいるかわからない事態である」
これは「三国人」発言で大問題を起こしたファシスト石原慎太郎都知事の言葉だが、「夜なんて歩ける状態でない」とほざかれた歌舞伎町の夜は相変わらずにぎわっていて、確かに圧倒的多くの風俗店はあるのだが、映画館、コマ劇場、ライブハウス、パチンコ店、大衆居酒屋、病院、新宿区役所、マクドナルド、喫茶店などが営業している。歌舞伎町を離れてラブホテル街を通 って大久保方面に行くとそこはもっと「異空間」になる。ハングル語の飛び交う焼き肉屋では日本人が平気で朝鮮料理を食べている。実に面 白いのだ。誰もが朝鮮人だろうがペルー人だろうが気にしない。まさに人種のるつぼの国際都市なのだ。こんな素晴らしいくスリリングな街がかつて日本のどこに存在していたであろうか?
この歌舞伎町のなんでも飲み込んでしまう「懐の深さ」はアメリカのマイアミシティやニューヨークに似ていると思った。マイアミの市長選挙はいまだにスペイン語と英語で行われる。スペイン語しか通 じない地域はごまんと存在するからだ。世界一犯罪の多発するかの有名なニューヨーク市は市長の「世界中の最先端の文化が凝縮しているこの街こそ、世界で一番面 白い町である」と豪語する。だから世界中からその人種の壁を越え、芸術家を中心とした雑多な人達が集まって来る。
この石原発言とニューヨーク知事の街に対する思い入れの相違はどこから来るのか? 所詮、都庁は新宿の町には似合わない丸ノ内からやってきたよそ者なのだ。そんな連中に言われたくないというのが歌舞伎町の住人の意見なのだ。石原発言の根底は、何か騒乱事件があったなら軍隊を使って鎮圧したくって仕方がない、そして彼の目指すところは「日本核武装論」であり、そういう意識が見えかくれする。
そして、問題は今や日本の警察は他の省庁と同じように、自分たちの利益にならないことは全くやらない団体となってしまった。
「もし、一般の市民がストーカー行為をされて警察に泣きこんでもなにもやってくれないが、これが有名企業重役のの子息であったら、警察は動いてくれる。なぜなら、天下り先を確保出来るからだ」だとジャーナリストの寺澤有氏は言う。警察署長を2~3回やると家が一軒建つという。そこまで、日本の警察は腐りきっているという。都民が支払う税金の中から警察官の給与は支払われているわけだが、その超過勤務手当が一人月平均6万円都から支払われていて、その半分の3万円が警官に支払われずどこかに消えているという。警察に「裏帳簿」があるのは当たり前なのだ。石原都知事は歌舞伎町のことを言う前にこの腐敗堕落した警察組織にメスを入れるべきであろうと思うのだが、、。
歌舞伎町を今や隠れ場所すらなく、子供の遊ぶ影すらなくなってしまった無味乾燥な都市の公園の様にしてはならないと思う。「怪しげな空間」こそなんとも言えない魅力が存在するのだ。
「世界中の最先端の性風俗の凝縮した歌舞伎町こそ、世界で一番面白い街なのだ」位 のことを言える都知事を我々は望む。
どっちにしてもかって「太陽族」でセンセーションなデビューをした芥川賞作家「石原慎太郎」は自民党の代議士になりさがり、そのヒステリックに叫ぶ「反米論や中国敵視」は確かに聞いていてその心地よさに酔い知れてしまう日本人感情はあるのだろうが、オーストリアの極右自由党党首ハイダーの様に実に危険な存在であることはまちがいない。石原都知事誕生を絶賛していた「不屈の共産主義者、塩見孝也」(元赤軍派議長)氏はじめ多くの知識文化人は「反省文」を提出して欲しいものだ。
          プラスワン席亭・平野 悠

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