Highball Night With Single Malt supported by suntory LEGENDARY LIVE

LOFT PROJECTのスタッフが新宿ロフトで観たライブで一番印象深いものをレポート!隔週更新!!

第2回 「幻のバンド ルースターズ」 平野 悠(ロフト席亭)

THE ROOSTERS

 ロフトWeb班のアカセ嬢から、新宿ロフト30周年ページ用に、「Legendry Live」(伝説の……)というタイトルで、「一番印象深いライブレポートの原稿を書いてください」という指令が来た。「なんとも難しい注文だな……一番印象に残るライブかね……?」なんてぶつぶつ言いながら、私だって考えてみたぞ。始めは、「そうか? かの梅造大先生がじゃがたらだったらわたしゃ、じゃがたらに負けず劣らずの不良バンド・フールズしかないな」なんて思ったけど、今回はそういう切り口ではなくって、ちゃんとしたバンドが良いなって考え直した。ロックなんか知らない私でも、いろいろ思い出深いバンドはありすぎる程あるけれども、私らライブハウスのスタッフは、日々あまりにいろんな事がありすぎて、店での事件(ケンカ・セックス・ロケンロール)や感動やその他もろもろの事は、その日の「恐怖の打ち上げ」で全て忘れなければ仕事にならないのである。全てその日にあったことはその日のうちに忘れるように訓練されているのだ。


<やはりリバプールサウンドの大江ルースターズしかない……>

ライブ写真

 80年代に起きたムーブメント、誰が名付けたか「めんたいビート」は丁度、新宿ロフトのメインブッカーが突然やめてしまって私が新宿ロフトのブッキングをやっている頃だった。サンハウス、モッズ、ルースターズ、ロッカーズ、アップビート、アンジー、シーナ&ロケッツ、ARB……。そうだアクシデンツを入れないと原島御大からぶっ殺されるかな?(笑)そうなって来ると、あの柏木省三&安藤広一率いる1984山善やパワーハウス……ここまで来たら、チューリップや海援隊も入れてしまうか? 俺は一体何を書きたいんだ〜? そうだ、ルースターズのことだったよな。

 85年の春、大江慎也は一度は脱退したルースターズに戻って来て、新宿ロフトのライブが行われたんだよ。この日、丁度新宿ロフトのクーラーが壊れてさ、客は超満員(ほとんどが女性客)。演奏中に突然、店内の消火器が天井に向かって白い泡を吹き上げた。ロフト内の酸素はどんどんなくなってゆき、さて場内は大混乱かと思いきや、大江たちは演奏をやめるどころかその混乱を平気で煽っていたんだ。お客のみんなは大江に釘付け、慌てる私と石飛選手(ルースターズマネージャー・現スマッシュ)。汗と酸欠で倒れる客が相次ぎ、誰がいじったか火災報知器が鳴り、消防車と救急車が新宿ロフトに到着、お巡りが新宿ロフトを取り囲む。それでもあのルースターズは演奏をやめなかった。ロッカーの鏡だったな。そしてまた大江は姿を消した……。


<復活した幻のバンドルースターズ>

ライブ写真
▲壁際からこっそりと撮らえた。

 時代は流れて、04年7月26日、「リスペクタブル・ルースターズ」の会場は熱気で一杯だった。新宿ロフトにはロフト担当者の「当日はルースターズの出演はありません。この日はルースターズをリスペクトするバンドの演奏があるだけですよ」と注意書きまでしてあった。だが「不安と期待」が入り交じった会場で、当日初めて「実は突然、フジロック出演のリハーサルも含めてロフトでやってもいいという話になった」と、横山プロデューサーが打ち明けてくれた。わたしゃ、ぶっ飛んだね。


ライブ写真
▲これがルースターズだ!

 ウソついたとかつかなかったというよりも、今この目で、大江ルースターズを観れるんだっていうだけで感激していた訳だ。わたしゃ、勿論その直後のフジロックでも観た。今年のフジロックでは、大江・花田・井上がほんの小さなジプシーアヴァロンステージで、アコーステックバージョンでやった。本当にリラックスした連中を観て、聴いて涙が出てきたな。もちろん石井聰亙監督のDVD(『RE-BIRTH』)も、映像といい音といい申し分なかったな。伝説のルースターズをまだ観たことがない人はこれは絶対だよ。なぜあれから22年近く経った今、私らジジイが「ルースターズ」にこだわるのか? 若いロックファン諸君が、そのルースターズの映像でも観て考えてくれたら、私もこの「駄文」を書いた甲斐があるっていうもんだ。



RE・BIRTH II

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 FUJI ROCK FESTIVAL'04で実現した“オリジナル・ルースターズ”による22年振りの(ラスト)ライヴ。このライヴに至るまでのすべてのリハーサル、新宿ロフトでのシークレット・ライヴ、メンバーへのインタビューなどを記録した3時間半に及ぶドキュメンタリー。監督は石井聰亙。

平野 悠
文 ◎ 平野 悠 (ロフト席亭)

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