ジャンルが細分化されるのはつまらない
──このアルバムはもう手放しですごいと思います。日本語のロック・バンドとしての魅力はもちろん、フォーク・ロック的な曲、わくわくするようなポップスもあり、かつガレージ・パンクとしても素晴らしい。バラエティでありながら、全くブレや迷いのないサウンドですね。
ホリウチトオル(vo & b):そうとってもらったら光栄ですね。曲はほぼトヨオカの作品なんですが、3人の持ついろんな引き出しが自然に出せて録音出来たってことで、アルバム全体の雰囲気がイイ感じにまとまりましたね。
トヨオカマサユキ(g & cho):僕らにとって60年代のロックってのは重要なルーツのひとつなんですが、それだけにこだわっているつもりではなく、自分の新しい引き出しを出すのに迷いはないし、まだまだ引き出しを出し尽くしていないです。バラエティと言ってもそれが当たり前だと思っていますし、最近のライブ・シーンを見渡しても、ジャンルが細分化されすぎていて逆にそれがつまらないと思うんですよ。
アンボイ・サム(ds & cho):僕自身、やっぱりバンドは「生」が1番だと思っているので、ライブ感もうまく出せた録音だと思います。
──60年代のビートルズやローリング・ストーンズあたりに影響を受けた日本のロックをGSと呼んでいるわけですが、サイクロンズはブリティッシュ・ビート系の60年代サウンドを昇華しながらも、特に3ピース編成でこれができるってのが今までにないというか、GSを超越した感じさえありますね。
ホリウチ:いや〜誉めまくりですね〜。3ピースもたまたまっすよ〜(笑)。
トヨオカ:うん。たまたま。キーボードやサイド・ギターが見つからへんだけです。GSの好きなところは、幅広いゴッタ煮なところなんで、超越しているかどうかはわからないですが、手本にはなってますよ。因みに僕はローリング・ストーンズ、愛しています(笑)。
サイケデリック・ロックの新鋭?
──レコーディングの音作りはいわゆるJ-POPとは対極にあるようなアナロaグっぽい仕上がりで、現代の日本のスタジオで録音したとは思えないような感触ですね。
ホリウチ:今回は、愛知県の山奥にある友人の松石ゲル君(ザ・シロップのリーダー)が所有するスタジオで合宿しながら作りました。アナログの16チャンネルのレコーダーで録ったんです。ゲル君がオープンリールのテープを海外から取り寄せてましたね。もう日本では入手できないらしくて。
──作詞作曲はギターのトヨオカさんの作品が多いですが、それぞれ非情にクオリティが高いです。レノン=マッカートニ−とか、日本でいえば筒美京平か、っていうほどの名曲もありますよね。例えば作曲家になろうとか思ったことはないのですか?
トヨオカ:プロの作曲家にはなれないですよ。自分のペースでしか曲を作れないし、作れない気分の時もマレにありますもん。締切り作られたら出来ないタイプです。あと楽譜すら読めないですから(笑)。でも曲を作ることは大好きで、趣味みたいなもんなんで。これからは余裕があればサイクロンズ以外でも楽曲提供なんてしてみたいですね。60年代や70年代に生まれた数々の名曲に負けないぐらいの曲をいっぱい作りたい!
──8分以上もあるサイケデリック・ナンバー「ブルー・ラブ・シャドウ」はアルバムでは異色作ですが、シド・バレット時代のピンク・フロイドとかにも通じるような感じがしました。後半のインスト部分は即興のセッションみたいな感じで録音したのですか?
トヨオカ:本当はセッションで一発で録音したかった曲なんですが、リズム・トラックの上からギターやオルガンをオーバー・ダビングして録音しました。あと僕のアイデアで、ホリに3分間ぐらい笑い続けてもらいました(笑)。異色と思われがちですが、サイクロンズ本来の姿はサイケデリックなロック・バンドなんです。
マニアウケするバンド?
──例えばフライヤーの推薦コメントを見てもすごく豪華なメンツが並んでいて、サイクロンズはミュージシャンの支持者が多かったりします。ある意味、玄人ウケするバンドってところもありますよね。
ホリウチ:そんなんちゃいますよ。確かにそういうバンドは誰が観てもかっこいいですがね〜。
トヨオカ:どちらかというと、一般の音楽ファンとかマニアとか問わずに楽しんでもらえたら嬉しいですね。
──京都といえば、古くはフォーク・クルセダーズとか村八分といった歴史的なバンドを輩出した独特の土地柄ってこともあり、よく一緒にライブをやっている騒音寺などとともにサイクロンズも京都っぽいて言われると思いますが、その辺は意識していますか?
ホリウチ:それは意識してないですね。たぶん他のバンドもたまたま「京都出身」なだけで、周りが後付けで言うてるだけですね。ただ関西以外のライブに行くと「京都から来たサイクロンズです!」って言うてしまいますけどね(笑)。
アンボイ:もちろん村八分とか好きなんですけど、僕らはあんま京都っぽいって言われんへんですよ。
──今回のアルバムには初回限定でDVDが付いていますが、これは活弁映画でも知られる山田広野監督によるPV3曲と、ロフトプラスワンでのライブ映像などが収録されていますね。
トヨオカ:あくまでアルバムのオマケだと思って楽しんでほしいですね。売り切れたら2度と世には出ないものなんで(笑)。ライブは新宿西口のブートレグみたいな感じですよ(笑)。
ホリウチ:PVは山田監督色の強いなかなかおaもろい仕上がりです。
ロケ地が鴨川だったり京大西部講堂だったりと、ここだけは京都っぽいですね(笑)。
アンボイ:初回限定にダマされて買って下さい(笑)。
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