riddim saunter=ジャンル名っていうのが狙い
──まず、今更ですがバンド名の由来から教えて下さい。
KEISHI:バンド名は、意味的には“riddim”が“リズム”の訛りで、ジャマイカとかの言葉であるじゃないですか? その言葉を使いたくて。あと“saunter”っていうのは適当なんですけど、音と響きで決めたところもあって、“歩き回る”とか“歩かせる”っていう意味的にもいいんじゃないかって感じだったような気がします。
──初めてバンド名を聞いて、意味を調べて音源を聴かせてもらってピッタリだと思ったんですよね。いろんな音楽のジャンルを昇華して自分達の音にして、それがジャンル名と言っても過言ではないな、と。
TAICHI:最近やっと、そういう音作りが出来てきた感がありますね。
KEISHI:riddim saunterってジャンル名って、何か嬉しいっすね。
TAICHI:でもそれが狙いだったし、そうなって欲しいなって思ってましたから。
──昨年、まずは2月にCDシングル『FRESH / CLUE IN PEOPLE』をリリースされたわけですが、それに先行して7inchを切りましたね。それはやっぱり、DJもやられてるTAICHIさんのこだわりですか?
TAICHI:そうですね。自分達が掛けたい音っていうのも前提にあるんですけど、やっぱりクラブで踊ってて気持ちいい音楽が好きだったりするんで、クラブで掛かればいいなぁって感じで。あと、ホントにレコードが好きなんですよ。だからCDっていうフォーマットに対する小さな反発ですね(笑)。
──そして同発でモータウンのコンピ『ROCK MOTOWN』にも参加されて、その後、5月にはまた7inchでボビー・ブラウンをカヴァーしてますね。このカヴァーの選曲は?
TAICHI:ソウルとか好きなんですよ。根本的にはソウルよりヒップホップなんですけどね。モータウンのほうは、最初オデッセイの「BATTENED SHIPS」をカヴァーしたかったんですけど却下されて(笑)。それで送られてきたリストの中でスピナーズの「It's A Shame」を選んだんです。「It's A Shame」はやりすぎだろって話だったんですけど。
KEISHI:でも、その中だとやっぱり「It's A Shame」しかないだろうってことで。。
TAICHI:ボビー・ブラウンのほうは、あの時にどうしてもニュー・ジャックっていうところを取り上げたかったんですよね。何かどこともつかない感じ、あの跳ねたビートとかが好きで。90年代のそこら辺の音って今聴くと結構恥ずかしいんですけど、ずっと好きなんですよ。そこで何となくボビー・ブラウンに興味が湧いたと言うか、ニュー・エディションじゃなかったみたいな(笑)。
──周りの反響はどうでした?
TAICHI:「ちょっとマニアックだけど、いいカヴァーだね」って。でも、あのタイミングで僕達があれをやったのは意味があったと自分では思ってるんですけどね(笑)。
──いい意味でriddim色に染まっていて、riddimのオリジナルにも聴こえてきますよ。
TAICHI:そうならないと意味がないと言うか、考え方的にはカヴァーというよりリミックスなんですよね。リミックス的要素があれには多いですね。
──そしていよいよ1stアルバムが発表されたわけですが、タイトルの“CURRENT”に込められた意味は?
KEISHI:“流れ”と“現在”っていう意味から採りました。riddim saunterの今までの3〜4年の“流れ”と、“現在”のアルバムの13曲の“流れ”と合わせていい感じだなと。響きも良かったし。何か最初、TAICHIが「花のジャケットにしたい」みたいなことを言ってて。僕の中では“CURRENTモって花の名前っぽい…実際にそんな花はないんですけど、何かそういうのがあっていいなぁと。
──ジャケットを手掛けたTAICHIさんは?
TAICHI:何となく形としては出来てなかったんですけど、頭の中ではすでにあって、あの色彩感が出来てたんですよね。それで、それに近付けるような曲調とかコード感とかが頭に浮かんで。
──色の一つ一つが曲みたいな?
TAICHI:そうですね。全部があの色彩感のどこかを拾ってると言うか、どこかに当てはまって、赤とか青とか色ではなく、ああいう雰囲気で出来てる曲がいっぱいあるみたいな…そんなところがありますね。
──曲順とかにはこだわりましたか? 聴いていて凄くいい流れだと感じたんですけど。
TAICHI:地味にA面、B面があるんですよ。skitが入ってるのと、intro、outroがあるっていうのは密かなヒップホップ・マナーって言うか(笑)、そこは結構やりたかったところで。このアルバムはレコードでは出ないんですけど、そういうふうに受け取ってもらえればと。
──曲はTAICHIさんが書かれていることが多いですが、DJをやられてることから影響を受けることは多いですか?
TAICHI:凄い受けてますね。でも逆に、DJだと流行ものばっかり、新譜チェックは欠かさないみたいなところがあるんですけど、自分の作品で、バンドという6人の集合体でやるとしたらそれをそのまま反映させるのもダメだなと。最近はもうちょっと巧く作る人的な考え方にはなってきたと思うんですよね。でも、基本的にはDJとかクラブとかで掛かる音が好きなんですよ。
──曲はどういう状態で作ってるんですか? ライヴをやりながら固めていくとか?
TAICHI:それが多いですね、基本的には。
──じゃあ、ライヴでやって「これはちょっと違うな」と思ったらアレンジを加えて、またやって…みたいな? 1回1回のライヴで全く違う可能性もありますか?
TAICHI:結構そうですね。ライヴで変わるのは大きいですよ。
KEISHI:アルバムの曲でも、音源として出す前にライヴで試したりしてるのもあるんですよ。それがまた変わってアルバムに入ったりしてるんで、聴いたことあるけどちょっと違うっていうのはあるかもしれないですね。
TAICHI:アレンジに関しては、マックが使えるようになったのが結構大きいですね。自分で1回スタジオで録ったものを家に持ち帰って、いろいろアレンジを加えられたのが大きな進歩と言うか。今までは頭の中でしか表現出来なかったのが、今回は手を加えて詰められた感じがありますね。
詰め込みすぎない“引きの美学”
──音作りに関しては、1人が1つの楽器だけじゃなくいろんなことをやってますよね。特にホーン隊の2人はフルートをやったり、マイクを握ったり…その辺は元々そういうふうに考えてやっているんですか?
TAICHI:いや、やりたい音楽をどうにかやれないかと考えて、6人で出来る上での最大限なことを考えてたら今みたいになってきた感じなんです。フルートが一番最初じゃないですかね。僕達の最初の音源は、元々サックスなのにフルートを吹いてたりしますから(笑)。
──このアルバムでもフルートの音が効いてると思ったんですよ。アルバムを通して聴くと、フルートがポイントになって流れが出来てるなって。
TAICHI:その辺のフルートの感じっていうのは、結構好きなところですね。狙ってると言うよりは、好きなことをやってるだけと言うか。
──入れたい音を入れてる感じ?
KEISHI:「そう思ったからしょうがない」と言うか、「やりたいと思ったからやる(よ)←カット」って感
じで。
TAICHI:だから「フルート入れるの早くない?」とかそういうのじゃなくて、多分フルートが入ってるような音楽を聴いてたりして、「これをバンドでやれたらいいな」って感じですね。
KEISHI:シンセとかもそういう感じだよね。
──ホーン隊2人がホーンを持たない曲とかもありますよね?
TAICHI:ありますね。何かこじんまりするのがイヤなんですよね、何となくこういうふうに見られるっていうのが。だったらどこまでどういう曲がやりたくて、そこでどうするって考えた結果がそういう形であって、逆にホーンを使うところはガンガン使うし。その抜き差しのバランスって言うか、余り詰め込みすぎない“引きの美学”っていうのが結構難しくて。やっぱり詰めるところは結構詰めちゃうんで、そこをどれだけ抜くかが今回のテーマでしたね。
──逆にジャンルとかで括られたくない?
TAICHI:余りそういう括りで音楽を聴かないから、やっぱり自由でいたいと言うか、「いい音楽っていっぱいあるじゃん!」みたいな投げかけと言うか…そういうアルバムでもありますね。
──やりたいことがあって、その引き出しとしていろんなジャンルが手掛かりとしてある感じ?
TAICHI:そうですね。ホントにレコードが好きでずっと買ってて。そこから生まれた音楽と言うか、Niw!の先輩方もそうなんですけど、その他にもいろいろな音楽の素晴らしい人達がいて、そういう人達に与えてもらった影響が凄く大きくて。ありがとうざいます! みたいな、お陰で自分達はこうなりました! みたいな感じですね。
──詞は主にKEISHIさんが担当されていますが、やっぱり英詞にこだわりがありますか?
KEISHI:今はありますね。やっぱり、まだ日本語で恰好いい歌詞を書ける自信がないんですよ。
──ストレートに表現するのが苦手?
KEISHI:苦手と言うか、まだそれを恰好いいと思わないと言うか。そういうふうに思う時が来たら書くと思うし、今のところは100%ない感じですね。
──歌詞を読ませて頂くと、前向きでアッパーなものが多いんですが、やっぱりそれは自分達の生活が楽しいから?
KEISHI:幸せなんです(笑)。だからつい共有化したくなるんですよ。
──あと、若い人に向けたメッセージ性も強く感じられますが。
KEISHI:そうですね。僕らも高校生とかの時、例えばNiw!の先輩方の昔やってたバンドとかを聴いて感じてて、今僕らがあるとしたら、やっぱりそこにアピール出来ないと余り意味がないと思うんです。上の人達から受けた影響を返していきたいし、自分達が受けてきたことを若い世代にも伝えたい。ただ、全く同じに伝えるわけではもちろんなくて、自分なりに解釈して伝えていくんですけど。
TAICHI:そうですね、上の人達は恰好いいんで、それはもう判りきってることだから1回区切って、そういうことを僕らは僕らの下の世代に伝えていきたいというのがあって。
──詩は普段から書き溜めているんですか?
KEISHI:いや、いざ書こうと思って書く感じですね。昔は結構書き溜めたりもしてたんですけど、それだと言葉を曲に乗せる時に今思ってることと違ってたりするし、時間が経てばまた考え方も変わるし、余り意味がないと思って。
──よく話に出てくるNiw!の先輩達にはやはり影響を受けてますか?
KEISHI:思い切り受けてますね、敬虔なくらい(笑)。ただ詩に関してはあまり見ないようにしています。勿論一度は読み、「面白いこといってるなぁ」と思いますが、影響を受けるところではないかなと。
──TAICHIさんは特にFRONTIER BACKYARDのシンセベースも担当されてますよね。
TAICHI:最初の頃はただ影響を受けて恰好いいなと思ってたんですけど、やっぱり自分のアルバムを作るとなるとそれじゃ精神的にも負けてしまうし、今回は確固たる自分とは何かを考えながらやりましたね。
KEISHI:せっかく先輩達と一緒に出来る機会があるのなら、自分達はその中でどうしたらいいのかみたいなことを考えるようになったんです。それもつい最近の話で、シングルを作る時とか、それこそアルバムを作る時くらいに考えが変わってきたんですよ。
TAICHI:逆にやりやすいですよ、先輩方が本当に好きなことをやってるんで。だから逆に自分達もそこの色じゃないところで好きなことをやろうと。レーベルのカラーが結構あるし、みんな好きなことをやってるレーベルなんで。ジャンルが決まっているレーベルとかだと、そういう音にしないと…っていうのがあるじゃないですか? Niw!にはそういう縛りがないし、音楽的にいいことをやってないとダメなレーベルであって、だからこそやりやすい。そのぶんプレッシャーも大きいですけど、自分の好きなことは100%出来てる感じはありますね。
一本芯があれば形態は問わない
──ライヴ中、よくMC抜きで曲と曲が繋がってるのが印象的なのですが、やっぱりそれはDJ的な要素ですか?
TAICHI:気分的に自分が音楽を聴く場所として考えた時に、そういう部分をよく考えたりするんですよ。だから自分が楽しいなぁって思ったことをそのままライヴでも提案する。踊りたいなとか、普通にダンス・ミュージックとか言ってるわけじゃなくて、ただ感じてることをそのままやってるだけなんです。繋げて、例えばこれとこれが繋がったら気持ちいいなぁとか、きたー! ってなって次の曲が来る感じとかにクラブ的な要素があるのかなとも思ってるんですけど。クラブ云々っていうよりも、ただ単純に音楽として気持ちいいことをやってる感じですね。
──先日、ターンテーブル・ライヴを拝見したんですが、過去にはアコースティック・ライヴもやってみたり、バンドとしてじゃなくても曲が表現出来れば形態は構わない感じですか?
TAICHI:全然選ばないですね。ターンテーブルは基本的にトラックとかで作る曲が多くて、出来るなら自分で自分のリミックスをしてみたいですね。アコースティックはアコースティックでアレンジも出来るぞという面白味と言うか。
──じゃあ、既発の曲もターンテーブルの上やアコースティックでは違った曲になる?
TAICHI:全部アレンジし直してね。
KEISHI:アコースティックも全くの別物という考えもあるけど、余りこだわってないんです。ライヴハウスもクラブも別にそんなこだわってないし、どっちかしかやらないとかもないんで。アコースティックだったら絶対にカフェみたいな場所がいいとかもないし、DJのターンテーブル・セットも場所とか余り気にしてませんね。
TAICHI:何事にも一本やりたいことが芯としてあればいいという感じですね。
KEISHI:何をやろうが全部riddim saunterっていう気がしてるんで。
──例えばギターのHIROSHIさん、KEISHIさん、TAICHIさんみたいな表現の仕方も興味ありですか? 組み合わせはいろいろあると思いますが。
TAICHI:言われてみるとやってもいいのかなと。
KEISHI:それ、今想像したんですけど、もしそういうのをやろうとしたら、こじんまりとした中にもいろいろあるじゃないですか?例えばタンバリンでもカウベルでも。 で、そういう形を模索していくと結局今の6人でやってそうですね(笑)。ターンテーブルとかはたまたまそれ以上の形態が思い付かなかっただけで、最初から3人でやろうってわけでもなかったんですよ。
TAICHI:やれることの幅的にそうなった感が。結局、いろいろ足りなくなって6人になっちゃうみたいな(笑)。
──逆に、今の6人編成にゲストを入れたりとかは?
TAICHI:アルバムでストリングスを入れたんですけど、ライヴでもストリングスは入れてみたいですね。
KEISHI:うん、オーケストラでやりたいですね、1回は。
──形態に制約がなく、いい意味でフラットな感覚だからこそ何でも出来る強みがありますね。
KEISHI:何でも出来て微妙なラインがあるんですけどね。それがあった上で、結構何でもやっちゃうところが強みかな、と。
──そしていよいよ、待望のツアーが始まりますが。
KEISHI:ホントに楽しみですね。
──毎回毎回、ライヴによって曲が変わる感じですか?
TAICHI:そうですね。逆にアガりますね。曲が変わればどういう繋ぎをしようかとか、考えるのが結構好きだから。
KEISHI:余りにも突拍子ないことは出来ないですけど(笑)。
──アルバムに入ってない曲を披露される予定は?
KEISHI:そうですね、何かちょくちょくありますね。でも基本的にはアルバムに入ってる曲がメインで。
──ただ、アルバムに収められた形と同じとは限らない?
TAICHI:もう変わってるんで(笑)。ライヴをやりすぎて、レコーディングした時と変わってる曲もあります。なので、そこはもういいんですよ、変わってて。アルバムはあくまでひとつの形であって。アルバムの曲を生でやるにはどうしたらいいのかっていう楽しみもあって、生で観た時にビックリさせたい気持ちもあるし。
──アルバムを聴き込んで来た人ほどライヴで楽しめますよね、その違いが。
TAICHI:そうですね。音源では結構作り込まれてて一見オシャレな音楽をやってるんだけど、ライヴになると激しいバンドとかって恰好いいじゃないですか? そういうギャップが僕は好きなんですよね。
──では最後に、読者にメッセージを。
KEISHI:毎回その時々で変わっていくバンドだと思うんで、見逃さないように行きましょう!
──今のriddim saunterは今しか観られないですもんね。
KEISHI:もちろん! ライヴは毎回違うモノなので、是非毎回来て下さい(笑)。
TAICHI:ライヴハウスに行くのが楽しいんだってことをみんなに気付いてほしいし、みんなでワイワイ楽しめたらなと。そんな単純なことをこれからもやっていきたいですね。一番楽しいところにみんなで集まろうよ、みたいな。僕達の音楽でも、その他の音楽でも楽しいことがいっぱいあるんで、とにかくライヴハウスに行こうよって感じですね。
──まずはツアー初日、下北沢SHELTERに遊びに来てほしいですね。
TAICHI:そうそう、まずはSHELTERに。そして全国の皆さんは各地のライヴハウスで会いましょう!
──3ヶ月経って、千秋楽の渋谷CLUB QUATTROでは全く違うriddim saunterが観られるかもしれないし。
KEISHI:うん、楽しみですよ、自分達でも。
TAICHI:やっぱりいつも思うのは、みんなで楽しい空間にしましょう! と。よろしくお願いします!
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