“ALL-OUT”したゆえに生まれた「TWISTIN' HEAD」
──RADIO CAROLINEにとって初めてのマキシ・シングルですね。
PATCH(vo, g):そうですね。(取材用のテレコに向かって)6月21日リリースです!
楠部真也(ds):前からシングルは出したかったんですよ。3人とも7インチとか好きだし。タイミング的にたまたま今になった、って感じですね。
──『ALL-OUT』(昨年10月にリリースされたフル・アルバム)のツアーの後、「次はどうする?」みたいな話はあったんですか?
PATCH:いや、話し合ってそういうことを決めたことはないんだけど。自然な流れなんじゃないかな、今回のシングルに関しても。
ウエノコウジ(b):そうだね。ツアーが終わったら、何もやる気がなくなっちゃったんだよ。だから、年内はほとんど曲も作ってなくて。それくらい“ALL-OUT”したってことだと思うんだけど。年が明けてからは仕切り直しというか、今年は今年の感じがしてるけどね。やっぱり違うよね、去年とか。
──ツアーが終わった時点で、とりあえずはやり切った。
楠部:“終わっちゃったな、ショボビーン”みたいな。でも、それは最初から変わってないんですよ。ツアーが終わって、ひと段落して、さぁ、また次に行こうかっていう。
PATCH:俺は別に“ショボビーン”とはしてなかったけどね、真也ほど(笑)。でも、“もうネタがなくなりました”って感じはあって。俺も曲を作ろうって気にはなれなかったし、浮かんでくることもなかったので、何もやってませんでした。そういう切り替えって、やろうと思ってもできないんだよね。まぁ、秋くらいにアルバムを出して、暮れまでツアーをやって、っていうのがレディキャロのスタンスでもあるし。
楠部:実際、年が明けたら“スタジオ入って、曲を作る”っていうモードになってきたし。
ウエノ:うん。無理クリ変えようと思っても変わんないし。そんなに器用な人間が集まってるわけじゃないから、自然にやらないと。無理が生じるから。
──あとで歪が出る?
ウエノ:なんかそういう気がするけどね。
PATCH:今年も自然に新しい流れに入っていけたから、良かったんじゃない?
──なるほど。じゃあ、「TWISTIN' HEAD」は今年に入ってから出来た曲なんですね。
PATCH:そうよ。もともとはアルバムを作ろうと思って曲作りをやってたんだけど、その流れの中で出来た曲で。別にシングルにしようと思ってたわけではないんだけど、3人の中でビシッとくるものがあったんじゃない?
楠部:今のRADIO CAROLINEの雰囲気がそのまま出てると思いますね。凄く勢いがあるし、あと、切ない感じもあって。
──そうっすね。めちゃくちゃスピード感があるんだけど、メロディはどこかノスタルジックで…。とにかく歌メロがいいな、と。
PATCH:ありがとうございます(笑)。ちゃんと歌になってきたでしょ? だんだんそうなってきたんだよ、去年くらいから。
楠部:自分の昔の歌を聴いたら、恥ずかしくなるらしいですよ(笑)。
PATCH:なんでここで(音を)上げないかなぁ、とかね。今だったら、こういうメロディにはしない、って思うこともあるし。どうやら耳が肥えてきたみたいです、34になって(笑)。あとね、歌もギターも上手くなってきちゃったんだよ。ウエノさんと真也は信用してないと思うけど。
──ちなみに、「TWISTIN' HEAD」ってどういう意味なんですか?
PATCH:曲を作ってる時に自然と出てきたんだよ。でも、意味なんか説明しちゃったら、それもヤボな話でねぇ。
──そりゃそうっすね。
PATCH:意味が知りたかったら、一晩かけて教えてやってもいいけど。ただし、女性に限る。
──了解しました(笑)。今回のシングルは下井草のスタジオでレコーディングしたそうですね。
PATCH:そうそう、インパクト下井草(LOFT PROJECTが経営するスタジオ)でやりました。アルバムの時は川越(GGKR/STUDIO)で2、3ヶ月やってたんだけど、今回は3曲だし、バーンと録れればいいんじゃないかなって。
楠部:前にタイガーホールの7インチを出した時に、そこで録ったんですよ。一発録りでバーンとやれて、凄くいい感じだった印象があって。
PATCH:凄く狭くて天井も低いんだけど、それがいいんだよね。あと、音を出していい時間が夜の9時までだったから、それがいいプレッシャーになってましたね(笑)。その時は生活のリズムも良かったし…それが曲のリズムにも出てるかな。
楠部:いちいち要らんこと言わんでええ。
──(笑)『ALL-OUT』の時は、より強いライヴ感を出したかった、って言ってましたが…。
ウエノ:ライヴってよりは、“アンプから鳴ってる音”とか“ドラムの前に立ってる時に聴こえる音”ってことだけどね。今回はねぇ、まぁ、その先には行ってると思うけどね。ずっとそうだけど、全部続いていくもんだと思/愾ってるから。『ALL-OUT』がなかったら今回のシングルはないし。そういう感じの音になってると思うよ。
楠部:3人の聴きたい音、出したい音、その時の気分っていうのがありますから。もし仮にアルバムの時と同じスタジオで録ってたとしても、3人の出音、出来上がり感は違ってたと思うし。まぁ、3人の中で思い描いてる「TWISTIN' HEAD」が出せたんじゃないかな、と。3曲入ってるから、全部聴いてもらえれば、よりバンドの勢いを感じてもらえると思います。
バンドの核がより前に出た手応え
──「COME ON LET'S GO」(オリジナルはリッチー・ヴァレンス)のカヴァーも入ってますが、これもカンペキにレディキャロのバンド感ですよね。
楠部:そうですね。もちろんカヴァーはカヴァーなんですけど、自分達の曲に近いというか、ちゃんと消化できてるとは思ってるので。RADIO CAROLINEなりに解釈した上でレコーディングしてるというか。
──カヴァー曲を音源にするのは、初めてですよね?
楠部:うん。ライヴではやってるんですけどね。前のツアーでは「TEENAGE KICKS」(アンダートーンズ)をやってたし、あとはボ・ディドリーの「I CAN'T TELL」とか。
PATCH:まぁ、軽いノリですよね。シングルを作ってた時は、あんまり曲もなかったし(笑)。たまにはカヴァーもいいっすよ。リフレッシュできて。
──なるほど。レコーディング以外のことも聞きたいんですが。ちょっと小ネタを仕入れてきたので。
PATCH:お、何でしょう?
──今回のアーティスト写真は千葉の九十九里の海岸で撮影した、ということですが…。
PATCH:ははははは! それ、俺の話じゃん。あのですねぇ、撮影してる時、今年90歳になるおばあちゃんが来たんですよ。自転車に乗って。
──連絡してあったんですか?
PATCH:うん、一応。撮影場所が実家の近所だったから、「帰り、寄れたら寄るわ」って。そしたら親戚中に電話してたみたいで、いきなりおばあちゃんがやって来て。フツーに自転車で来たんだけど、ウエノさんと真也は「立ち乗りしてた」って言ってました。
楠部:言ってないっすよ。それくらいのスピードで来た、って話で。
ウエノ:(笑)や、マジで凄い速いんですよ。来たら来たで、PATCHのことしか見てないし。
楠部:俺なんかが「どうも〜」って挨拶しても、目も合わせてくれないですから。
PATCH:で、俺の横に座って。
ウエノ:撮影にも入ってくるんじゃねぇか? くらいの勢いで。
──愛されてるんですねぇ。
PATCH:まぁ、6年振りですからね、会うのが。
──あと、PVも凄いらしいじゃないですか。聞くところによるとメンバーのアップが多くて、それが賛否両論を呼んだとか。
楠部:アップが多いんじゃなくて、アップが長いんですよ。
ウエノ:異様に長いんだよね、それが。最初は「これ、ないほうがいいんじゃない?」って言ったんだけど、監督がどうしてもこだわってるところだったから、そこは尊重して。でもねぇ、特にPATCH(のアップ)が長いんだ。
PATCH:そうなんですよ。脂汗でテカッてるし(笑)。
ウエノ:何回見ても、“うわ、キツイなぁ”って思うもんね。早送りしたくなるくらい。
PATCH:監督から「睨んで下さい」って言われたから、そうしたんですけどね。真也のアップなんか涼しげですけど、俺は湿地帯だから。高温多湿(笑)。
ウエノ:お腹いっぱいです。
PATCH:“有害PV”っていう括りがあったら、選ばれるかも。まぁ、いい経験ですよ。
──いろんな意味で新機軸となるシングルかも(笑)。でも、音はめちゃくちゃいいですよね。新しい要素も感じられるんだけど、RADIO CAROLINEの軸はまったくブレてない、というか。
楠部:うん、核の部分っていうか、そういうものはより出てると思います。
PATCH:なんだかんだ言っても、まだ3年目くらいだからね。そろそろいい感じになってきたんじゃない?
楠部:3人とも特殊っていうか、ちゃんと自分だけの音を奏でてる連中だと思うんですよ。それが混じった時の出音はガッチリ固まってますよね。もちろん、自分達だけの感覚ではなくて、聴いてくれる人達にも“なるほどね”って思ってもらわないといけないんですが…そこに関しては、今回のシングルがいいきっかけになるんじゃないですかね。
PATCH:うん。『TWISTIN' HEAD』はいいと思うよ、取っ掛かりとして。
ウエノ:さっきも言ったけど、シングルを作ろうと思ってたんじゃなくて、アルバムのための曲作りの中で出てきたもんだから。ちゃんと次に繋がるシングルだと思うよ。
──判りました。アルバムのレコーディングは順調ですか?
ウエノ:うん。
PATCH:楽しいっすよ。何が楽しいのか? って言われたら困るけど。
楠部:モノを作ってる過程っていうのは楽し/愾いですよ。プラモデルでも、作ってる時が一番楽しいじゃないですか?
──そうっすね。新しいトライアルもあるだろうし。
ウエノ:まぁ、それはアルバムが出来た時に話すよ。俺はもう、Rooftopに出る気まんまんだからね。アルバムの時は表紙のつもりでいるから。だってさぁ、『ISHIKAWAの気になる日記』に“RADIO CAROLINEのアルバムが完成したらしい”って載るだけだったりしたら、つまんないじゃん。小さいプロモーションだよ、それ。
──もちろん、アルバムの時はガッチリやらせてもらいます。あと、言い残したことはないですか?
ウエノ:あ、『Roulette Lounge』(RADIO CAROLINE主催のイヴェント)のこと書いといて。7月26日、LOFTでやるから。
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