“懐かしさ”だけでやってると、すぐにつまらなくなる
KOZZY:さ、見ての通り寝起きですが(取材が行われてたのは20時です、ちなみに)。よろしくお願いします。
──よろしくお願いします。すいません、スタジオまでお邪魔しまして。
KOZZY:いえいえ。リハーサルからレコーディングまで全部ここでやってるんですよ。ここから何年も出てないですね。普通のスタジオとかは全然使ってないので。今日はマックショウじゃなくて、コルツのレコーディングのセッティングなんですけどね。まぁ、同じですけどね、人が多いか少ないかだけで。
──今年のマックショウはリリース・ラッシュでしたが…。
KOZZY:そうね、アルバム(『爆発!ナナハン小僧』)を出して、シングル(『恋のマジック・ドライヴィン』を出して。DVD(『原宿デイト』)も今年ですからね。
──その最後を飾るのが『クリスマス・キャロル EP』というわけで。
KOZZY:コルツのリリースを延ばしたから、これが最後になっちゃいましたね。どう考えても間に合わない。ここには仲間しかいないから、誰も止めてくれないんですよ。もうね、時間が掛かっちゃって。
──スタジオ代も気にせず、延々と。
KOZZY:そうそう、連日、朝の5時、6時まで。コルツは集まるのが遅いんです。マックショウは早いですけどね。ほとんど一発勝負なので。「クリスマスス・キャロル」も、曲自体は高校の時に作った曲なんですよ。最初はね、ファンクラブ用の音源として聴かせたんです。それがちょうど去年のクリスマスの時期だったのかな。で、“凄くいいから、ちゃんとシングルにしたほうがいいな”ってことになって。
──去年のクリスマスの頃と比べると、バンドを取り巻く状況も大きく変わってますよね。
KOZZY:そうね、マックショウは活動も内容もマニアックって言うか……マニアックって言ったら恰好いいけど、要するに単なる内輪受けって言うかね。自分たちが面白くてやってるだけっていう感じなので。
──ははははは! って、そんなことないでしょう?
KOZZY:いやいや、ホントに。でも、思いがけず良い評価って言うかね、ライヴにお客さんがたくさん来てくれたり、いろんなところに呼んでもらって。で、まぁ、これだけ応援してくれてるんだから、もっと聴きたいのかなってことで、年末のね、みなさんがお金を使いたい時に出しておこうかな、と。
──(笑)今年だけでもかなり曲を書いてますよね、きっと。
KOZZY:そうですねぇ。まぁ、ずっと音楽活動をやってきて、これだけ経験を重ねてからのマックショウってことですからね、気楽な部分もあるんですよ。ロックンロールっていうのは僕らのルーツでもあるし、多感な時期から聴いていて、ホントに空気みたいなもんだから。テンポのいい曲にしてもスロー・ナンバーにしても、基本中の基本って言うかね、作るのなんて、寝てるよりラクなんですよ。寝ると疲れるからね、最近。寝るのも体力が要るんだよ。
──(笑)「クリスマス・キャロル」を作った頃は、地元でライヴ活動をやってたんですよね。
KOZZY:ベースのトミーなんかとバンドをやり出したのは中2か中3くらいですから。(トミーとは)小学校1年から知り合いなんですけど、何て言うか、荒んだところで育ったわけですよ。広島の中心地に近いところなんですけど、聴こえてくる音楽は永ちゃんとキャロルとクールスだけなんで。まぁ、それは僕の周りだけのことかもしれないけど(笑)。そういうところで育って、当然のようにバンドをやって。ロックロールのことも判ってるつもりでしたよね、当時は。レコードを遠くまで買いに行ったりして…それも東京に出てきて、勘違いだったことに気づくんですけどね。“何にも知らなかったね、僕たち”っていう。
──ははははは!
KOZZY:ライヴハウスって言っても、広島には当時1軒しかなかったし。ウッディ・ストリートっていうところなんだけど、そこに出るのも大変で。「クリスマス・キャロル」を作ったのは16か17くらいだから、“月に1回、出していただく”って感じですよね。オーディションを受けて、お金出して、ようやく出演できるっていう。俺の兄貴もミュージシャンで、キャバレーでバンドやってて。いわゆる箱バンでね、16くらいからやってて。夜の9時くらいから、朝の4時まで4回ステージをやる…って言ったら、だいたいどんな店か判ると思うけど…そこでもロックンロールをやってて。それをずっと続けてるわけですけどね。
──基本はそこで学んだ、と。
KOZZY:その後、いろんな音楽を知って、いろんなグループを作ってきて、まぁ、今はマックショウとかコルツをやってて。その頃作った曲を同じコンセプトでやれるっていうのは、幸せなことだと思いますよ。さっき“内輪受け”って言いましたけど、“懐かしさ”とか“昔は良かったよね”ってことだけでやってると、すぐにつまんなくなりますからa?。今やってると、逆に新たな楽しさがあるって言うか…いや、別に新しい発見はないけどね。
──(笑)どっちですか!?
KOZZY:いや、だけど、自分たちが一番ハッピーだっていうのもあるしね。なおかつ、男としてね、ここまでエフェクトなしでライヴをやるっていうのもチャレンジだと思うんですよ。“何だこの音は?”っていうペラペラの音なんだけど、それでステージに出ると、“いや、これで何とか盛り上げてやる!”っていうロマンがあったりして。条件が悪いところも楽しめるようになるんですよ。(モニターが悪くて)“おい、何も聴こえないな”ってことがあると、逆に燃えたりね。
──なるほど。
KOZZY:「クリスマス・キャロル」も、童貞の中学生が書いたような歌詞でね。それを“懐かしい”ってところだけじゃなくて、38のおっちゃんが“いいな、やっぱりラヴ・ソングっていいよ”って、未だに感動できるっていうのが嬉しかったし。
実体験ではなく“憧れ”が大事
──10代の時に書いた曲を本気で楽しめるっていうのは、ステキですよねぇ。
KOZZY:20代の時に書いた曲はやれないんだけど(笑)。思わず耳をふさいでしまうと言うか、わりとホロ苦い感じで。もっと経験を積んでいけば、楽しめるようになるのかなって思うけどね。マックショウに関して言えば、まず、“シンプルな音楽をやろう”っていうのがあって。コルツもそうだけど、人数も多いし、イヴェントに呼ばれたりしても“トラックを出さなくちゃいけない”とか、移動費だけでも大変なことになっちゃう。だったら最小の人数で、ギターとドラムとベースだけ持っていって、“アンプは貸してね”っていう感じでやれる方法はないかなって。最悪、“悪いけど楽器も貸してくれる?”とかね。
──チャック・ベリーなんかもそうやってツアーしてたみたいですね。
KOZZY:そこに僕らはロマンを感じると言うか、そういう状況でやれないと、ロックンロール・バンドはダメだと思うんですよ。そこで本質が判っちゃうって言うか。実際にそれができたっていうのは嬉しいですよね。ドラムのバイク・ボーイは後から入ったんですけど、その前に俺とトミーでいろんなところに行ったんですよ。飲んでる席でブライアン・セッツァーのドラムとセッションすることになった時も、全然大丈夫だったし。「ファンキー・モンキー・ベイビー」をやったんですけど、多分、その人は(曲を)知らなかったと思うよ。
──そうでしょうね(笑)。
KOZZY:でも、ガキもオヤジも“最高でした!”って感じになるわけ。音楽に壁がないっていうのはこういうことかなって、身をもって体験して。で、マックショウもどんどんツアーもやろうよってことになって…まぁ、それが今やキツイことになってるんだけど。でも、「来てほしい」って言われたら、行ってあげたいじゃない? 体力が続く限りはやりたいなって思うけどね。…ところで、なかなかCDの話にならないけど、大丈夫?
──すいません。えーと、今回の音源には「彼女は蒼い月」のセルフ・カヴァーも入ってますが…。
KOZZY:いや、それは“1曲足りねぇな”っていう…。
──ははははは!
KOZZY:『BEAT THE MACKSHOW』っていう1枚目のアルバムに入ってる曲なんですけど、まさかこんなにたくさんの人に聴いてもらえるとは思ってなかったと言うか、申し訳ないけど、1枚目を出したのはシャレだったんですよ。レコーディングも納屋みたいなところでやっちゃったし(笑)、音も悪い。でもさぁ、必ずいるんだよ、「僕はファースト・アルバムが一番好きです」ってヤツが。まぁ、判るけどね。バンドはファーストしか良くない!
──言い切っちゃいましたね。
KOZZY:みんな、“あれ(ファースト)をもう一度録り直したい”って思い続けてるんだろうけど。「彼女は蒼い月」に関しては、ライヴでもよくやってるし、“好き”ってヤツが多いから。この音源に入れることで、もっといろんな人が聴いてくれるだろうし。ま、それだけのことです。あと、ドラムのヤツが唄ってる曲(「ウソつき女」)があるんですけど、それは捨て曲なので、どんどん飛ばしてもらって。
──いやいや、そんなことないでしょう!
KOZZY:リハの時に唄わせてみたら、なかなかいい声してたんですよ。“おまえ、いいじゃないか! 知らなかった”っていう。で、ちょっと唄わせてみました。実は、ヤツの電話番号も知らないんですけどね。この前、打ち上げの席で「携帯の番号、教えてよ」って言ってたら、周りのヤツがビビッてました。「電話番号、知らないんですか? SMAPみたいですね」って(笑)。
──SMAPとの意外な共通点が(笑)。
KOZZY:それでもバンドができちゃうっていうのが、ロックンロールのマジックだよね(笑)。
──ベーシックな3ピースのロックンロールって、今の10代の人は知らないかもしれないですね。20代でも知らなa?いか。
KOZZY:そう、僕らとは全然違う感覚で聴いてるんでしょうけど、それは単純に嬉しいよね。ライヴ中に「君はいくつ?」って訊くことあるもんね。「どう見ても中学生だろ。お父さんに言ってきたのか?」って。そしたら「お父さんと一緒です」って言うから、そっちのほうを見るとリーゼントしたオヤジが「ヨロシク!」なんて言ってて、ダメだこりゃっていう(笑)。あとね、普段はヒップホップなのに、マックショウのライヴの時だけはリーゼントっていうヤツもいるし。考えてみると僕らもそうだったんですよね。今日はパーティーがある、ってなると、革ジャン着て、サングラスして、で、自転車乗って遊びに行くっていう。おかしくない? 9,800円くらいのビニールみたいな革ジャン着て、ティアドロップのサングラスして、自転車で広島の商店街を走って。クールスとか唄いながら。外から見れば“ちょっと、君たち、大丈夫?”ってことなんだけど、そういうピュアな感覚を伝えたいよね。
──背伸びしてるって言うか、憧れてるって言うか。
KOZZY:リーゼントも革ジャンも750〈ななはん〉も、夢の話。憧れですよ。キャロルにしてもロックンロールにしても、実体験の世代ではないですから。
──キャロルをリアルタイムで知ってるのは、もっと上の世代ですよね。
KOZZY:そうですね。地元では「バイクだ!」って言うと、走って見に行ってましたから。UFOみたいな感じ(笑)。UFOも追っかけたことあるんですけどね。まぁ、UFOじゃないと思うんですけど(笑)。
──ウハハハハハ!
KOZZY:でもね、実体験じゃなくて“憧れ”っていうのが大事だと思うんですよ。「クリスマス・キャロル」の歌詞もそうだけど、実際は雪の中で恋人を待ったりしないよね。“だったらいいな”っていう。
──そうですね。
KOZZY:20代前半の頃は、そういうのは陳腐な感じがしてましたけど、そういう気持ちって大切だし。それを大マジメにやれるっていうのは、幸せなことだなって思います。
出したい音の感覚は“先輩にもらったテープ”
──でも、マックショウの曲って全然懐かしい感じはしないですよね。新鮮に聴けると言うか。
KOZZY:“そういう文化”もありますけど、僕らは感覚が違ってるのかもしれないね。さっきから言ってるように、ただ懐かしいってことだけじゃなくて、新しい感覚でやりたいので…って、新しいことは一切やってないですけどね。“あ、ウチはそういうのやってないんですよ”って感じで(笑)。ロックンロールはこう来るだろう、っていうのをズバズバやってるだけだから。あとは何だろう、梅に塩と書いて塩梅〈あんばい〉って感じ(笑)。そのへんが判ってきてるんじゃないですか。
──年季が必要な音楽なのかもしれないですね。
KOZZY:そうかもね。3コードだけしか知らなくてロックンロールをやるのと、よく吟味して(コードを)3つしか使わないっていうのは違うかもね。まぁ、音は悪いですけどね、相変わらず。今回もひどいもん。嬉しかったからね、聴いてて。“何でこんなにこもってるのかなぁ?”って。
──そういう音が“いい音”っていう。
KOZZY:ロックンロールにぴったりの音なんだろうね。出したい音の感覚っていうのは“先輩にもらったテープ”だから。中学くらいの時って、テープに録ってもらうじゃないですか、永ちゃんでも何でも。重ね録りしてるから、音が悪いんですよね。永ちゃんの歌が終わったと思ったら、いきなり松田聖子とかが出てきちゃったり(笑)。そんなアルバムを提供したいですね! 大きい会社でちゃんとしたプロデューサーがいたら、絶対そんなことできないけど。怒られますからね。
──意図してこういう音にするのは、かえって難しいかも。
KOZZY:僕らは見てのとおり、エンジニアもいなければ、アシスタントもいないですからね。自分たちで録音ボタンを押して、急いで戻ってきて、「ワン、ツー、スリー、フォー!」っていう。全部自分たちでやるのが合ってるんでしょうね。DVDの編集も自分たちでやったんですよ。
──ホントですか!
KOZZY:自分でやると、嫌なところを消せるじゃない? ちゃんとした編集の人に頼むと、「そこ、使わないで下さい」とは言いづらいから(笑)。そういう経験をいっぱいしてきたから、今は“全部自分でやるんじゃ!”っていう。日曜大工みたいなもんですね。DIYですよ、『DOLL』的に言うと(笑)。
──(笑)昭和81年はさらに広がっていきそうですね。
KOZZY:そうなるといいですね! 『恋のマジック・ドライヴィン』を出した頃から、ライヴもほとんどソールド・アウトで。ライヴハウスの人から「こういうのは久しぶり。最近、お客さんが来ないんですよ」って話はよく聞くんですけどね。嬉しいことですよね。
──いろいろありますからね、今。
KOZZY:クラブ・ミュージックとかもいっぱいあるし、音の分a?散化が進んでますよね。そういう時にリリースするっていうのは、出す側の心意気しかないんじゃないですか?
──心意気、ですか。
KOZZY:心意気はあるよ! それが泣かず飛ばずでは寂しいですからね。ホントにね、プロモーションも特にやってない中で、これだけの人が聴いてくれるのは嬉しいですよ。
──別にお世辞で言ってるわけじゃないんですけど、曲がいいからじゃないですか?
KOZZY:いやいやいや。年齢的にもこなれてるんで、オセロで言うと“角、取ったかな”っていう感じですね。
──ははははは! あとは何があっても勝つことになってる、っていう。
KOZZY:そうそう。大事ですよ、角を取るのは(笑)。
──来年あたり、夏フェス・シーズンも忙しくなるのでは?
KOZZY:いやぁもうね、夏フェスに出たいバンドがいっぱいるんだから、その人たちが出ればいいんじゃないですか? “出たからって何だよ!”っていうのもあるし…。僕らはもう、できるだけ奥に奥に行きたいですね。5人でも10人でも(客が)いたら、そこへ行くしね。わざわざロックが溢れてるところに行かなくても…この前もね、彦根ってところに行って。「彦根? それどこ?」って言ってましたから(笑)。古い城下町で、ライヴハウスも昔の蔵を使ってるところなんですけど、そこもソールド・アウトしたんです。そういう感じがいいですね、僕らは。
──ジョニー大倉さんとのツアーもあったんですよね?
KOZZY:そうなんですよ。この前、前夜祭みたいなイヴェントをチッタでやったんですけど、驚きますよ。リーゼント、革ジャンの人たちがブワーッといて。“こんな人たち、どこにいたの?”って(笑)。だって、そうだなぁ、日曜日の原宿でもいいよ。1日中いても、リーゼントの人はどこにも歩いてないからね。
──そうっすね。
KOZZY:そういう人でいっぱいになってるんだから、チッタが。「マックショウのおかげで助かったよ。20年くらい待ってた」とかね。それは嬉しいんだけど、“その間、何をやってたのかな?”っていうのがたまに気になったり。ロックンロールっていうのは基本の音楽なのに、その間、いいグループが出てこなかったんだな、コルツを含めて、っていう…。評価されるのはもちろん嬉しいけど、“若いヤツは何をやっとるんじゃ?”っていうのはあるよね。僕らが20代だったら、凄いよ? ステージでも動きまわるし。今はそういうのは一切ないですけどね。
──ははははは!
KOZZY:一応、“ライヴの間は革ジャンを脱がない”っていうのがあって。でも、年々薄くなってますからね、作る革ジャンが(笑)。
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