Monthly Free Magazine for Youth Culture
ROOFTOP 2006年5月号
横山マサアキ(テルスター)×友部正人

5月にリリースしたテルスターのミニアルバム『ある決意』には、ボーカル横山氏がリスペクトしてやまない友部正人さんの『夕日は昇る』が挿入されている。今回、横山氏の熱いラブコールを受け、友部正人さんとの対談が決定した。友部さんの音楽と向き合うスタイルは、普段セカセカと忙しなく動き回る私達の心をフッと軽くしてくれたようでもあった。言葉少ないながらも、何かとても大切なものをいただいたような気がした。(構成:やまだともこ)

一生やるって考えてないとできないよ

横山:今回テルスターがリリースしたミニアルバム『ある決意』で、友部さんの『夕日は昇る』をカバーさせていただきました。随分前に渋谷屋根裏で共演させていただいてから、ずっとライブで演奏させていただいて、お客さんから単独作品の中で聴きたいという声がありまして、僕たちも再録したいなと思ったんです。こうやって若いバンドにカヴァーされるというのは友部さんとしてはどういう気持ちですか?

友部:歌は一人の所有物じゃないから、みんなが歌ってくれるのは嬉しいですよ。

横山:僕は18歳ぐらいから友部さんの歌が生活にベッタリ張り付いているような感覚で音楽を歌ったり曲を作ったりしたんです。僕だけの考え方かもしれないですけど、音楽をやり始めた友部さんの70年代初期はすごくシニカルで世の中を斜に構えて見てるように映ったんです。それが80年代になるに従って、シニカルさがいい形でポジティビティーに繋がっていってるように感じたんです。僕が友部さんをリスペクトしているのは、音楽と友部さんの関係がすごいステキだと思うんです。こういう音楽との付き合い方をしたいと思ったんですね。今回『夕日は昇る』をカヴァーさせていただいたのは、ポジティビティーをつかみ取れたのがその辺のアルバムだったんです。友部さん的にはシニカルな視点を乗り越えたっていう感覚でこういう形になったのか、年をとったらそうなっていくのかを聞きたいです。

友部:自分が歌ってもあんまり反応がなかったからおかしいなって思ったんじゃない?世の中のことをあまりよくわからないからもうちょっとまっすぐ見てみようと思った。でも真っ直ぐ見たからわかるものじゃないしね。よそ見してたほうがよく見えるって昔、金子光晴が言ってたよ。僕の場合歌を作ることが全てだから、知らないうちに斜に構えてたんじゃないかな。

横山:20代の僕は自分の歌が伝わらないんじゃないかとか、メインストリームに対するカウンターみたいな意識ばっかりでああいえばこう言うみたいな。じゃあ一体お前は何なんだって言われた時結局何も言えなかったんです。でもここ最近は自分自身で立っていられるようになったというか…。

友部:横山くんにとってメインストリームって?僕にとっては吉田拓郎が主流だったんだと思うんだけど、未だに僕にとっては吉田拓郎が主流だったりするんだよね(笑)。

横山:僕は世にある音楽にどうしても違和感がつきまとってしまってなかなか巡り会えなかった。そういうところで音楽に対してシニカルな視点をもってしまうっていうのが生まれてしまったのかもしれない。

友部:シニカルな感じがだんだんなくなってくるというのは、メインストリームの音楽がどうでもよくなってきたんじゃないかな。若い時って主流になってる音楽が身近なものだから、僕たちの頃だと吉田拓郎とか、かぐや姫とか。それに対して僕はアンダーグラウンドだったけど主流も身近だったんだよ。そういう意味では主流なのかなんなのか僕にはわからない。

横山:当時、そういうものに対する嫉妬はあったんですか?僕は音楽をやっていても生活をしていても人と比べてしまう、自分はどうなんだってところでしか価値観をはかれない人間だったんです。それがこの年になってきて自分が何が欲しいのか、何がしたいのかとやっと向き合えるようになったんです。『ある決意』も初めてそういう気持ちになってから出したCDなんですけど、自分の音楽スタイルを決めるにも、人の価値観が目の前をちらほらしてることに自信がないからなのか、今でも嫉妬とかそういうのものが生まれてきてしまうんですけど。

友部:例えば僕は吉田拓郎だったけど、彼の曲をいいと思わなかったんだよね(笑)。いいと思ったと言えば『今日までそして明日から』と『結婚しようよ』の2つかな。『結婚しようよ』の時は嫉妬したかもしれないけど嫉妬とは違う。売れる人と売れない人がいるのは不思議な現象だった。だから焦りもないし、そういう感情ではないな。

売れなくてもいいわけ

横山:僕は10年間バンドやってますけど、同じような時期に始めたバンド達は今はほとんどバンドを辞めちゃってるんです。アルバイトしながらスタジオ入ったりしてバンド活動をやってるんですけど、メジャー契約切られて音楽やめちゃう人もいますからね。その点、友部さん達の時代の方々は今でも活動を続けられている。

友部:僕らの時代は人前で聞いてもらおうと思ったら地下街しかなかったから。デビュー前は自分たちでホールを借りてチケット売ってコンサートして。デビュー後もワンマンとかなかったし、井上陽水だって5人ぐらいで夜行列車で一緒に地方を回っているうちの一人だった。機材も全部自分達で運んで。はっぴぃえんどがレコード出した頃ってグループサウンズは別にして日本語で歌ってるロックバンドっていなかったもん。10代の子たちがロックバンド組むと見せる場がディスコしかなかa`?った。でもディスコはオリジナルやらせてもらえない。だからチャンスがなかったんだよ。今の人たちは音楽で食べてる人たちを見てから始めてる。音楽で食べて行けるって思ってる。俺達の頃って誰も食べてなかったから音楽で食べていこうと思わなかった。一生かかってもいいから歌だけは歌っていこうって感じだったから。だから売れなくてもいいわけ。やりたいっていう気持ちがあればやるし。ぼくはソロだから、実際には食べてこれたんだけど。

横山:僕らは人前で発表したい時もライブハウスにデモテープ送って、出演させて下さいしかできない。音楽を続けるのにも嬉しいっていうのを掴むのも難しいですよ。それでつかめなくて辞めてしまう人もいて…。最初はステージに立つだけで幸せだったって思う人もいるけど、いろんな欲が出てきて、生活もあるし。生活と音楽を比べること自体わからないんですけど、僕自信も俺に付いてこいとも言えないですよ。じゃあお前の先に何があるのかって言われても僕もわからないんですけど…って言うしかない(笑)。そういう僕も不確定だけど楽しいからって言うしか…(笑)。そういう意味では生活を身近に音楽をやっていくということが難しいのかなって思いますね。

友部:でも生活が重要になったら歌にリアリティーが出てくると思いますよ。この間詩集(『友部正人詩集』)を出したんだけど、20代の前半の頃の詞なんて全然リアルじゃないけどね。今の人達って、結果出すとかよく言うけどあの考え方じゃ音楽はできない。一生やるって考えてないとできないよ。だんだん年とってくるとひとつの作るのも時間かかるし浮かんでこなくなる。それでもやりたいことができてるから。

横山:バンドって結果だなんだってやきもきする感じになっているんですけど、音楽と信頼感を結べれば続けていくというか、音楽を生活の近くに置きながら続けることができるのかな。友部さんを見ていると続けていくことができるのかなって思います。

友部:30歳ぐらいのときは先が長いって思ったんだけど、でも40歳・50歳になるとなんのことはないなって思いますよ(笑)。

横山:友部さんが30歳ぐらいの時はどうだったんですか?

友部:子供が出来て生活のリズムが変わっちゃった。曲は書いてたんだけど発表したいものができなかった。今見直したら面白いものもあるかもしれないんだけどね。 発表したほうがいいなって曲は出来方が違うじゃない。いい曲っていうのは自分から離れて行くんだよね。できた瞬間に離れて行きたがるの。

横山:面白いですね。僕なんかはいち早く人に押しつけたいと思ってる人間なんで、悔しいと思ったらその悔しさをすぐ伝えたい。自分の中で発酵させないように生のまま出さないと意味がないと思っちゃうので…。

友部:それだと興奮が冷めた時に歌いたくなるかどうか。

横山:10年前に作った曲をリアリティーを持って歌えるかどうかっていうとなかなか難しいなってのはあるかもしれませんね。その時の曲は歌えないかもしれませんね。

友部:誰かと口論しても言い返せなかった。歌はそういうためのものだから(笑)。僕らの時代は人が集まるところではみんな議論してた。口に出さなくても心の中で思ってることってあるでしょ。思ったことが口からすぐ出てしまうタイプの人はいい詞が書けないかもしれないね。しゃべっちゃう人は歌作る必要ないもん。

横山:…僕も気を付けた方がいいですね(笑)。

友部:ちょっと気を付けてみたらいいんじゃない(笑)?

絶対に売れることないんだから!

横山:ところで、最近気付いたんですけど、居心地悪いモノが居心地いいってなってきてますね。いびつなものにどうしても寄ってしまう。僕はマイノリティーがあるってことに選民意識じゃないけど、まわりが理解できないけれども自分は理解できるんだよっていう強さもあるじゃないですか。人と違う感性を持ってたりとか、クラスの中で僕はこれの良さを理解してるっていうのはマイノリティーとしての寂しさもあるけど、その分センスをわかるっていう嬉しさを感じれる喜びもあるんじゃないかなって思うんですよ。

友部:そういうタイプの人なんだよ。でも俺もそうだよ。レコード屋さんに行ってこれよさそうだなってなんとなく買ったりするCDは、マイナーなバンドだったりすることが多い。そういったタイプの人たちに発信していくのがいいんじゃない?

横山:それを聞いて僕も自信が…(笑)。

友部:絶対に売れることないんだから(笑)!

横山:…さらに10年やる自信がつきました。また10年後にこう過ごしてましたっていう報告をしたいので、ぜひ10年後も友部さんには歌ってていただきたいな。今日の記憶を頭の片隅に置いていただけたら僕はそれでまた音楽を続けられるかなって思います。10年後また自信を持って友部さんに会えるように。恥ずかしくてもう会えないってならないように自信を持って続けて行きますんで。僕も音楽を続けるのでa`?、気持ちが楽になりました。

友部:一生やろうと思うことが大事よ。

横山:一生やります!やっていく自信がついてきたので気持ちの向くままやってみようと思いますので。

友部:みんなが好きなこと一生やろうって決めたら世の中変わるのにね。

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テルスター Live info.

6/1(木)渋谷CLUB QUATTRO
6/3(土)神戸STAR CLUB
6/4(日)豊橋LAHAINA
6/5(月)松山サロンキティ
6/7(水)熊本DRUM Be-9
6/8(木)大分T.O.P.S
6/9(金)福岡DRUM SON
6/11(日)高松DIME
6/12(月)広島ナミキジャンクション
6/13(火)京都MOJO
6/17(土)高円寺CLUB LINER
7/8(土)名古屋 新栄CLUB ROCK'N'ROLL
7/9(日)大阪 十三FANDANGO

〜テルスター“ある決意”発売記念ワンマンLIVE〜
7/15(土)東京 新宿LOFT

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