ARB KIDSのみならず、数多くのミュージシャンや関係者にまで大きな衝撃を与えた、石橋 凌(vo)脱退に伴うARBの活動停止宣言。あれから2ヶ月、結果的に最後となってしまったツアーの模様を収めた2枚組ライヴ盤が急遽発表された。DVD『LOCUS visualize 1998-2004 ARB LIVE BEST』をリリースした後、2004年9月から12月にかけて全国9ヶ所で敢行されたツアー『ARB LIVE“LOCUS”2004』の4本目、11月20日にLIQUID ROOM ebisuで行なわれた東京での最後のライヴをフル・コンパイルした『ARB is 〜20041120CompleteLive〜』がそれだ。
その前年暮れに発表したフル・アルバム『KAZA-BANA』が時代を反映した激しく生々しい曲と心に響く深いラヴ・ソングから成るとても充実した作品だっただけに、このツアーがまさかARBの最後のライヴになるとは、その場にいた誰も想像すらし得なかっただろう。「テロとか戦争とか日本の現状を見ると、もう言うしかない、歌うしかないんだと。昔はどこかでロックに思想を入れちゃいけないのかなっていう危惧もあったんだけど、今はARBが思うロックの本質を何のてらいもなく出していくしかないと思っている。ロックが他の音楽と差別化できるところは意識の交換ができることだから」という凌の力強い発言(Rooftop 2003年12月号)からも、ARBはこの先まだまだロックの真髄を我々に提示し続け、日本のロック・シーンを牽引していくのだと確信していた。
実際にこのライヴ・アルバムを聴くと、当時デビューから27年ものキャリアを積んだバンドとはとても思えない激しさと瑞々しさに満ちている。まるで去年デビューしたばかりの新進バンドのような鮮度の高さが保たれているのだ。それは、'77年の結成以来彼らの音楽に一貫して通底する“闘志”に負うところが大きいと僕は思う。音楽業界の古いしきたり、社会的弱者への抑圧、国家的殺人・侵略行為である戦争……自分達が納得のいかないあらゆる物事に対して、彼らはなんら躊躇うことなく闘いを挑み続けた。骨太な渾身のメッセージを迸るロックに託して“抵抗の詩”を歌い上げた。その揺るぎない姿勢と魂を激しく震わせる剥き出しの音楽性があったからこそ、僕達はARBというバンドと彼らの奏でる硬質のロックを愛し続けたのだ。
活動休止は非常に口惜しいけれど、ARBが内包していたその硬質なロックの遺伝子は、KEITH(ds)率いる“Groovin'”、内藤幸也(g)が参加する“Zi:LiE-YA”、EBI(b)のアコースティック・ユニット“EBI£TARO”、そして「一生歌っていきます。魂こがして」というメッセージを残した凌の今後の活動に確かに受け継がれていくことだろう。
結成25周年を迎えたインタビューで、「ロックを一生やるしかないって感じはありますか?」という問いに凌はこう答えている。
「周囲が見るロックの概念が変わってきてるのは事実としてあって、もし今自分達がやっている音楽が“ロックじゃない”と言われたとしたら、“じゃあ、ロックという言葉は使わなくていいです”ってなるかもしれない。でも、俺の中でロックの本質は変わらないから、たとえそれが古いと言われようが、俺にとってのロックをやっていくしかないと思う」(Rooftop 2003年6月号)
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