メロディや曲の構成には命懸けてた
──ダブルボギーズの前身であるストライクスを結成したのが85年。メンバーそのままで改名したのが87年。東京での初ライヴはその改名直後のことで、新宿ロフトでした。
エスカルゴ:うん。イースタンユースと一緒やってんな。あん時は嬉しゅうてはしゃいで、なおきちゃん(B)と一緒に西新宿でレコード買いに行ったりしてな(笑)。何せ東京来んのも初めてやし。あとガーリック・ボーイズと一緒にツアー回れたっていうのも楽しかったなぁ。「東京へはこうやって来るんか!? 世田谷ってとこで高速降りるんな」って。しかも帰りは暴走族に巻き込まれたりして(笑)。でも、ライヴのことはサッパリ覚えてないねん。
──何で肝心なことを覚えてないんですか(苦笑)。とりあえず捕足しますと、そのライヴの企画者は私です。で、そもそもイースタンユースの対バンでガーリック・ボーイズに声を掛けたところ、ラリーさんが「連れて行きたい新人がおるんやけど。ギャラとかいらんし」と言うので(笑)、「いいっすよー」と答えたら、来たのが貴方たちだったわけです。
エスカルゴ:そうやんなぁ。確か俺んとこにラリーさんから電話きて「出ろー!」言われて「はいっ、判りましたー!」言うて(笑)。
真:俺は当時はそんなこと全然知らんかってん。ラリーさん、有り難いなぁ。
──有り難いです。そして私個人もラリーさんには本当に感謝したい。何故なら、そこで見たダブルボギーズのライヴは心底衝撃だったから。「こんなに尋常じゃなく下手クソでありながら、こんなにカッコいいバンドは始めてだ!」と(笑)。もうほんとにね、曲が良くて良くて良くて、エスさんのヴォーカルも魅力たっぷりで、一発で夢中になった挙げ句、以降しつこくしつこく東京に呼びたがる自分がいたわけですよ。
エスカルゴ&真:はははははは。
──そしてその挙げ句、自分で初のプロデュース作品であるオムニバスをキャプテン・レコードから出して貰うに至り。いや、ダブルと会う前に出すことは計画してたんだっけ? その辺は私も記憶が曖昧ですが、とにかくそれが『ストレイト・アヘッド2』。札幌からブッチャーズとイースタンユース、東京からマグネッツとヘロウズ、大阪からダブルボギーズとキャンディーズという全6バンドに参加して貰ったわけですが、ここに収録されたダブルの曲がもう史上最強に良くて良くて良くてですね! 思わず今回の特別編集盤『WHAT FUN!』の1曲目にしました。
エスカルゴ:なおきちゃんもな、「あの曲って奇跡やな」って自分で言うてて、そんで俺も「そうかもなぁ」って(笑)。
真:「BOGYS BOOGIEがきこえる」は、当時すごく新鮮な感じで録音してん。っていうのも、既にあった曲じゃなくてな、その時たまたまできた曲を「折角できたし、今できたこの曲入れてまえ!」みたいな。
──うわー(笑)。でも「BOGYS BOOGIEがきこえる」は歌詞からメロからアレンジから完璧だと思うんですよ。実際私も、今まで生きてきてこの曲以上に好きな曲はないってぐらい好きなんですが、ほんとこの曲ってどうやってできたんですか? 当時、何かイメージするものとかあったんでしょうか。
エスカルゴ:うーん。確か曲作ってる途中で、メロディとかも、何かドラマティックドラマティックにしようっていう意識があったような気がする。いつもはメロディ・ラインと言葉と曲とが何となく合ってるって感じで作ってたんやけど、「BOGYS BOOGIE〜」だけは何でか「もっとゴージャスに!」って作っていった気がするわ。でもアレな、一番終わっていきなり間奏始まるん。んで、「何かバランス悪いな悪いな、何でやろ? あっ、間奏ド真ん中に入ってるわー!」と思いながら録音してたのも覚えてる(笑)。
真:それ確か俺が言ったんちゃう? 「もうこっから間奏しようや」とか。
──無茶苦茶な位置に無茶苦茶な要素が入るというか、本来あり得ないような構成の曲って、実はダブルボギーズ、結構多いんですよね。
エスカルゴ:そうそうそうそう。
真:そういうこといっつも考えてたからな。この曲は間奏はナシにしようとか、この曲はまだ途中臭いけどもうここで終わろ、とか(笑)。メロディや曲の構成に関しては、ほんともう命懸けてたな。
──ええ。曲がポップだからスルっと聴けるんですが、よくよく聴くと「なんじゃこりゃー!」と突っ込みを入れたい部分がわんさとある。「何でサビから始まってサビが来てさらにサビが来るんじゃー!? ってかサビしかないやんけこの曲!!」とか(笑)。
真:わざと同じ繋がりをしてないように作った曲もあったな。
エスカルゴ:本来なら平歌の部分に普通にコーラス入れてハモってみたりな。
真:結局、何か面白いことやりたいっていうのが常にあったから。それがそういう形で出てきたんやと思う。遊びの要素がないとつまらんやん?
エスカルゴ:ダブルボギーズは活動に関してはいろいろ至らなかってんけど(笑)、曲に関してはもう、全部自分らの為にやってたから。自分らのフラストレーションを解放するためにやってたからな。1曲1曲を面白いことやろうっていうのはほんと、常にあったな。で、レコーディングは「これ面白い、これも面白い、ええなぁええなぁ」ってできてくんやけど、でも、それをライヴでやるとスカスカになんねん、人数足らんから(笑)。
地方で復活ライヴの可能性あり!?
──ああ、レコーディングでは楽しく重ねまくってたが、同時に実際のライヴで再現するのは無理な状態にもなっていたという(笑)。でも、ライヴがスカスカだったのはそれだけが理由じゃなかったと思いますよ。とにかく演奏が下手クソでしたもの、貴方たちは。
エスカルゴ&真:ははははははは!
──しかし、それを補って余りある魅力に満ちあふれていたんだよなぁ。で、ダブルの魅力のひとつには、今の話にあったように異様とも言える様々な工夫をしつつも、楽曲の基本、根本はあくまでポップに据えている、という部分があったと思うんですよ。
エスカルゴ:俺も真もそうやけど、ポップっていうのは絶対あんねん。メロディは絶対唄いたい。
真:俺も歌が好きやからな。自分が唄って楽しいメロディを唄いたいっていうのは常にあった。歌ありきっていうのは当然のことだと思ってたよ。
エスカルゴ:時代も80'sでさ、俺らが中学生・高校生で聴いてたものって、基本は『ベストヒットUSA』やん? 凄くポップであったかい歌が多かったやん。ああいうのんの影響がやっぱあるやんな。
真:つうかそれが染み付いてんねん(笑)。
エスカルゴ:そんでそれを「俺らパンクやからそんなんアカン」とか、そういう風には全然考えなかったしな。せやからなおさら意外な音になったのかもしれん、当時としては。
──ですね。私自身も目からウロコでしたし。そして先のオムニバスを経てキャプテン・レコードからそのままダブルボギーズの1stアルバム『タイトロープ』を89年末にリリースすることとなり、その2作のキャプテン盤の音源を中心とした復刻盤が本作なわけで……出した当時は2枚とも全っ然注目されませんでしたが、こうして再び日の目を見せることができて私は嬉しい!!
エスカルゴ:(笑)よかったな、姐さん。俺も嬉しいわ。
真:俺も嬉しいよ(笑)。
エスカルゴ:そんで改めて聴いて、今思えば、別に解散せんでもやってこれたバンドやったなとも思うし。
真:とりあえず、解散ライヴはしてへんよな。友達とかに「解散するわー」って地味に言ってまわったりはしたけど、言った後に実は何回かライヴもやってるしな(笑)。
エスカルゴ:やってるな(笑)。ようちゃん(ブッチャーズ)に呼ばれてやったりな。でもその時点ですでになおきちゃん曲忘れてもうててん。
真:1小節分のベースが1音しかないねんもんな。って、どんなバンドや!
エスカルゴ:あとなあとな、THE POGO(*Vo.は現ジグヘッドのリョウタ、Gは現ラフィンノーズのカスガ)の大阪での解散ライヴにダブルボギーズ呼んでくれてんけど、そん時はなおきちゃん、なんとベース忘れてきてん! そんで、POGOの解散ライヴやのに、POGOのベースのケンくんからベース借りてん。もう最低!!(笑)
──ひっでぇー! まぁそんなエピソードからもダブルボギーズが一体どんなバンドだったかがよく表れているとは思いますが(笑)、とにかく、ダブル自体は90年代初頭に一応解散はしているものの、またいつ始めても問題ないぐらいイージーな終わり方をしており。
エスカルゴ:はははは。けど、また始める時は「せめて半年前に言うてくれ! 練習するから!」ってなおきちゃんに言われてて。いろいろよっぽどショックやってんな(笑)。まぁ、なおきちゃんはその前にベース買わないとなぁ。レコードショップ(*現在大阪でレコード店レッド・ボーンの店主を務めている)を始める時にベース売ったらしいねん(笑)。
──重ね重ねヒドイっすね(笑)。ちなみにドラムの松山くんは?
エスカルゴ:実はまた久々にバンド始めたらしいねん。つまり現在リハビリ中(笑)。
──じゃあ、いつでもできるじゃないですかダブルボギーズ。練習が大変そうだけど(笑)。
真:俺なんか今、東京在住だしな(笑)。
エスカルゴ:まー、40才になったらやるわ。
──本当っすか! 言質取りましたよ!! って、エスさん今何才でしたっけ?
エスカルゴ:もうじき39才。オヤジや、オヤジやー(笑)。
──来年だ、来年だー! つうか丸1年もあればさすがのなおきちゃんも何とかなるんではないかと思いつつ(笑)。実は今作のレコ発ライヴならぬレコ発イベントをロフトさんの好意で企画させてもらったんですよ。『ダブルボギーズとその時代(仮)』という感じで、ネイキッド・ロフトで、当時のライヴビデオ等を解説付きで上映しようと(11月中旬開催予定)。さらに真さんには、折角こっちにいるんですから、弾き語りをやって貰おう! と。
真:マジでー?
エスカルゴ:しんちゃん、頑張ってな!(笑)
真:やれ言われたらやるけどさぁ。つうかほんまにやんの? 俺、オッドボールが解散した99年ぐらいから何もやってへんよ?
──やります。真さんがこっちでスタジオ入ってるのは存じ上げてます。頑張って下さい。そして来年のダブル復活ライヴもマジでよろしく。
真:あはははは……。
エスカルゴ:はははは。かなわんなぁ(笑)。でもほんま、ダブルでは東京・大阪・名古屋ぐらいしか回れんかったから、地方行きたかったというのは実はあって。地方でしっぽりと復活ライヴやるのもいいかもしれんね(笑)。
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