──そもそも自分でレーベルをやろうと思ったきっかけって何だったんですか。
SHOGO 高校時代から結構そういう活動には興味があったんですよね。地元の友達と一緒に、「高校生だけのレーベルを作ろう」みたいな話もしていたり。でも予算がなかったりとか色々あってその時は出来なかったんですよ。だから、いつか自分の好きなバンドばっかり集めて何か出来たらいいなって思っていて。BUG ROCK RECORDSに関しては、もともとはジェット機をリリースしたかったのがきっかけですね。ボクはすごいホコ天バンドとかが大好きだったんですよ。悪い言い方するとバンドブームで終わってしまった時代のバンドたち。でもバンドブームっていう呼び方が好きじゃないので、ブームじゃなくちゃんとしたシーンにしたくって、自分もその一つとして盛り上げられればいいかなと思ってたんですよ。そういう話を、たまたま飲みの席で宮田(ジェット)さんにしたんですよね。
──それはジェット機の活動がもう始まっていた頃なんですか。
SHOGO その時はまだジェット機っていう名前じゃなかったと思うんですけど、これからまたバンドを始めるっていう時期で。「じゃあそれリリースしましょうよ、ボクがレーベル立ち上げるからそこから出しましょうよ」っていう話になって。そこで会社にワガママ言って始めたのがきっかけですね。
──レーベルを運営するっていうのも自分の好きな音楽をみんなに伝えたいっていうところから。
SHOGO 175Rの前にはCD屋の店員をやってたんですけど、その当時からそういう感じはありましたね。地元にある小さなCD屋だったんで、インディーズのCDなんてあんまり置いてなかったし、上の人間もあんまり知らないんで、自分で注文して、手書きでコメントつけたりしてインディーズコーナーを作ったり。
──自分の好きな音楽を、自分で演奏するっていうのとはまた別の形で伝えたいという。
SHOGO はい。レーベルに関しては、タイミング的にもたまたまイイ感じの勢いで175Rがデビューする事が出来た時期だったんで、自分たちがスポットを浴びてる時だったら、多くの人が手にとってくれるかなっていう気持ちもありましたし。
──175Rに興味がある人がジェット機にも興味を持ってくれるみたいな。
SHOGO そうですね。自分たちもメジャーデビューしたばっかりのフレッシュな時期だったんで、メチャクチャ忙しかったけど、そういう時にやれたのは自分にとってすごくプラスになりましたね。
色んな意味で人生を変えられた
──そもそもはジェット機をリリースするためにレーベルを立ち上げたわけですが、それからのバンド選びっていうのはどんな感じで決めたんですか。
SHOGO 後のことは全然考えてなくって、これからどうしようかなって思っていて、九州時代から一緒にライブをやってたDASHING STARIGHTっていう仲の良い佐賀のバンドに声をかけたり。あとはニューロティカとか……。ニューロティカは東京に出て来てから知り合ったんですけどね。
──ニューロティカとの出会いはやっぱりデカかったですか。
SHOGO デカかったですよ。もちろんジェット機の宮田さんはずっと憧れで、自分のボーカルスタイルは全て宮田さんから影響を受けたものだと思ってるけど、そういう面以外の、人としての影響を与えられたのはニューロティカのメンバーかなとは思っていますね。
──地元にいた頃はニューロティカを聴いていたんですか。
SHOGO 聴いてなかったんですよ。もちろんCD屋で働いてたんで名前は知ってはいたんですけど、あのメイクとかでちょっと色物に見えちゃって、聴こうと思わなかったんですよね。でも、ある時イベントで一緒になってロティカのライブを観たら、いきなりスイカマンが飛び出して来るし……、「なんじゃこりゃ」って(笑)。その時は話はしなかったんですけど、それからしばらくはそのライブがウチのメンバーの中で話題になってましたね。「ロティカがすごかった」って。それから、音楽雑誌でロティカとの対談があったんですけど、そこで話してからもう虜になっちゃったと言うか。それで、ライブの打ち上げなんかにも参加させてもらうようになって、その打ち上げがまたハンパなく凄くて……。とても口に出せないくらい衝撃的でしたね(笑)
──衝撃的でしたか〜(笑)
SHOGO あの時期、宮田さんたちの打ち上げと、ロティカの打ち上げには毎回行ってましたね。色々気を遣ってもらったり、かわいがってもらったりして、すごく忙しくってキツイかった時期に一番心の支えになりましたね。おかげでお酒も飲めるようになったし(笑)、最近じゃビールも飲まずにイキナリ焼酎に行ってますからね。色んな意味では人生を変えられましたね。
──もちろんニューロティカの音楽的な面も好きになったんですよね。
SHOGO はい、格好良いと思いますね。ホントにライブバンドだと思うし、もっともっと広がればいいのになって。自分の地元の九州の田舎とかまでロティカのパワーみたいなものが伝わればもっとハッピーになれると思うし、やっぱりそういう気持ちですね。でも目標になりますよね、ああいう大人の方々がいると。
──ウチのレーベルはこういうジャンルで、みたいなそういう括りではなく、とにかく自分の好きなバンドを紹介していきたいっていう感じですかね。
SHOGO そうですね。今のところは、たまたま出会いがあったり、飲んだ席で盛り上がったりしてリリースが決まってますね。なかなか発掘は出来てないんですけど、でも良いバンドばっかり揃ってて、自分としてはすごい有り難いなって思います。
──二年間という期間にしてはそんなにリリースは多くないですもんね。
SHOGO でも、すごく濃いメンツは揃ってますけどね。
──ジャケット並べてみても、インパクトありますからね。
SHOGO そうですね(笑)。
BUG ROCK PARTY
──そんなバンドたちを一同に集めてのオムニバスが完成したわけですけど、今の時期にこれを出そうと思ったのはどうしてなんですか。
SHOGO まあ、これもたまたまなんですけどね。175Rは今年7年目なんですけど、去年の武道館で一段落出来たかなっていう気持ちがあって、それと同時にBUG ROCKの方も一段落かなっていうモードになったんですよね。それで、「オムニバスやりませんか?」みたいな感じでみんなに声をかけて、音源をもらって作ったんですよ。だから特に深い意味はないです。
──内容的にも今までの曲を集めただけじゃなくて、それぞれ新録の曲も入っていますけど、各バンド気合い入れて作ってますよね。
SHOGO この間の175Rのツアー中に、大阪でジェット機とツーマンをやったんですけど、175Rは最近ずっとワンマンでやってたんで、久々のツーマンでメンバーのテンションがすごかったんですよね、「負けてたまるか」みたいな。ジェット機は新人バンドなんて言いつつも大先輩なんで、ライブはものすごいですし、メチャメチャ燃えましたからね。だから、みんなもやっぱりこういうオムニバスになると、「負けてたまるか」みたいなのはあるんじゃないですかね。
──あ、あと、175Rのメンバーにそっくりというウワサの謎のバンド、アイアン☆ハートっていうのが入っていますけど……。
SHOGO (笑)。アイアン☆ハートは、175Rのイベントから飛び出した、全てが謎に包まれている新人バンドなんですけど……これはコメントのしようがないですね。もう、勢いと甘えだけで突っ走ってるバンドですよ。……多分もう活動することはないんじゃないですかね?
──じゃあ、このオムニバスだけで聴けるという事ですね。
あの景色が自分にとっての夢を叶えた瞬間
──175R自体の話も聞きたいんですが、昨年のアルバム「MELODY」を出してから、今回のシングル「メロディー」まで、かなり色々な事があったと思いますけど。
SHOGO やっぱり大きかったのは日本武道館ですね。武道館でやるっていうのはずっと自分らの夢でだったんで。
──武道館といえば、イメージとしてはどのバンドのライブなんですか。
SHOGO やっぱりBOOWYですかね(笑)。「ライブハウス武道館へようこそ」っていう言葉が……。もちろん、ジュンスカもそうですし、ブルーハーツもそうですし、色んなバンドたちがあそこでライブをやってるわけなんで。武道館のライブ前日の夜はあんまり寝れなくて、そういうバンドのビデオをずっと観てましたね。
──明日ここでやるんだっていう感じで。
SHOGO 前の日に一応リハーサルをやったんですけど、やっぱりお客さんが入ると全然違うんですよ。バーンッて幕が落ちてライブが始まったんですけど、その光景はホント衝撃的でした。もう人の壁というか……狭いっていう感じ。意外にも狭く感じるんですよ。自分らの思いが届かない距離ではないっていう感覚ですね。これが「ライブハウス」と呼ばれる所以なのかな、とか思ったりして。ホントにライブハウスみたいな空気感を持っているハコだなって思いましたね。今思えば、あの景色が自分にとっての夢を叶えた瞬間だったと思います。一番大きな夢だったんで、一曲目から号泣しちゃいましたけどね。泣きそう……とかじゃなくて、全く無意識の内にポロって涙がこぼれちゃって。DVDを観てもらえればわかると思うんですけど、メチャクチャ泣いてるのに、全然平気に歌ってるんですよ。そういう変な感覚がありましたね。涙が勝手に出て来ちゃって、自分の中でも「何でだろう」っていう気持ちがあったりして。
──やっぱりそれだけデカかったと。
SHOGO デカかったですね……。
原点回帰
──その目標としていたところを達成したことによって、バンドとしても一段落したという感じがあったんですか。
SHOGO そうですね。終わってからすぐには感じなかったんですけど、そこからちょっとしてから自然とそういう気持ちになってましたね。やっぱり、武道館のライブでは今までの集大成を見せようって思ってたし、その夢が叶っちゃってこれから何をやったらいいのかなっていう。ちょうど、メジャーのサイクルみたいなものに飽き飽きしていた時期でもあったんですよね。リリースして、取材受けて、ツアーがあって、また曲作りして……みたいな。それと同時に一区切りついた事によって、メンバー間でもたるんだ部分があったりして、イベントに出たりしてもしっくり来なかったり。それで、色々と考え込んじゃって、一回休もうかな……って思ったり。メンバーと話し合いを行って、腹を割って話し合ったりもしました。
──そういう状況を打破するっていう意味もあって、今年に入ってから色々な事をやったっていうのもあるんですか。
SHOGO そうですね。ライブハウス限定で売るシングルを作ってみたりとか、KIT KATとCDがセットになったCDパックをコンビニで売ってみたりとか……。今までと違う形で色んな面白いことにチャレンジしてみたいなみたいなっていう気持ちは生まれましたね。そういうのを経て、今回のシングルでやっと175Rとしてセカンドステージに行けたかなという気持ちはありますね。
──タイトルを前のアルバム「MELODY」と一緒にしたっていうのは何故だったんですか。
SHOGE 前のアルバムは最初に「原点回帰」っていうテーマを設定して作ってたんですけど、昔やってたみたいな英詩の曲を多く作ってレコーディングしてたら、なんかインディーズの頃の様なアルバムを作ろうとしている自分がそこにはあって。それで途中でハッと我に返って、オレはすごくネガティブな事をやってるんじゃないかと思っちゃったんですよ。なんで過去をそうやって振り返ってるんだろうって。そこで急遽レコーディングの途中で日本語の曲を追加したりして、一枚のアルバムとして完成させたんです。結果的にはジャケットワークに関しても全て自分らの思い通りにやって、一曲一曲としては最高の物が出来たんですけど、トータルで見ると自分の中では完全燃焼出来てないというか……、迷ってた感じがあったんですよね。だからリリースする頃には、もう早く次のアルバムを作り合いって思ってたくらいだったんですよ。ようやく今回「メロディー」というシングルを出せたんで、完結出来たっていう感じはありますね。
──前のアルバムをここで完結出来たという。
SHOGO そうですね。今回の「メロディー」では、自分らにとって本当の原点回帰っていうのは、音楽に初めて触れた瞬間なんだっていう。音楽に合わせて体を動かすだけで楽しい、声に出して歌うだけで楽しいっていう、そういう気持ちを歌いたかったんですよね。本当の原点はそこだから。メンバー同士の話し合いの件も含めて、自分の中でメンバーに対して訴えたかったメッセージでもあったし。きっと夢を追いかけてる人たちとか、自分の好きなことを職にして行こうとか目指している人も多いと思うんですけど、それをやっていく中で、どの世界でも思い通りには行かない事がいっぱいあると思うんですよね。不安だったり戸惑いだったりしがらみだったり。そういう、我に返る瞬間にこの曲を聴いてもらいたいなって思ってて。結局、原点を見つめ直せば、そこからまた新しい一歩を歩き出せるんじゃないかな。実際ボクらがそうだったんで。良くも悪くもすごい不器用にそういう事を一つ一つ形に残して行かないと進んでいけないバンドなのかなっていうのも再認識もしましたね。
──原点回帰って、昔やってた同じ事をやるっていう事ではないですからね。
SHOGO そうそう。原点って、再確認して新しい一歩を歩き出すための物だと思うんですよね。それを今回自分たちも身をもって感じたというか。……自分に言い聞かせている部分も大きいかもしれませんね。175Rっていったら、ポジティブなメッセージを放つロックバンドっていうイメージが強いので、よく、「すごいポジティブな方ですね」とか言われたりもするんですけど、でも決してボク自身がすごくポジティブなわけじゃなくて、自分に対して「こういう自分であれ」って思ってるメッセージを、この7年間歌ってきただけだと思うんですよ。ボク自身は浮き沈みが激しくって、落ち込んだ時はホントにヒドイんで。でも、そんなボクの口から放つ言葉が、たまたま色んな人に共感を得てもらったり、勇気づける事が出来てるんで、それはすごい嬉しい事ですね。一万人のために歌を歌うことは出来ないけど、ボクが歌う個人的な歌に対して一万人の人が共感してくれればいいんじゃないかと。きっと音楽の力ってそういう事だと思いますしね。
──自分の中にあるネガティブなものを認識しながら、ポジティブな事を歌うからこそ伝わるっていうのもありますからね。
SHOGO すごくポジティブな人が、ポジティブな事を叫んだとしてもリアルに感じないと思いますからね。「メロディー」にしても、そういう感じで伝わると嬉しいと思います。
──そんな感じで同じ「ポジティブ」な事を歌っていても、今回の歌詞の感じはちょっと違うように感じましたが。
SHOGO 色んな意味で今回、すごく自由になれたんですよね。今まで「175R」っていうイメージに自分自身も縛られて活動してた部分もあったと思うんですけど、それを一回取っ払っちゃったんですよ。曲に関しても、今までだったら曲を作ってても「これは175Rじゃないな」って思って、メンバーにも聴かせずにストックしてた曲もあったんですけど、そういう曲たちを今になってようやくレコーディング出来るようになりましたからね。それを聴き手がどう思うかはわかりませんけどね。全然変わってないと思うかもしれないですけど。
──変わった変わったというよりは、原点に返って自由にやれているっていう事なんでしょうね。
SHOGO 今は175Rのイメージとか関係なしに、「SHOGO」個人として書けてるのかなって思いますね。
セカンドステージに向けて一歩一歩
SHOGO さらに11月にも新しいシングルが出るんですよ。「シャイン、光の道しるべ」っていう曲と「白いクリスマス」の両A面シングルなんですけど。
──今回の「メロディー」でセカンドステージに上がって、今度のシングルではさらに進んでいく過程にさしかかったという感じなんでしょうか。
SHOGO そうですね「メロディー」とはまた全然違う楽曲だと思いますね、歌詞の書き方もまた違うし。このシングルは一枚通して「冬」っていうテーマで作ったんですけど、そういう作り方をしたのも初めてだったし。そういう面白い事をやりたかったんだろうな。「シャイン、光の道しるべ」に関しては、ずっと昔から温めていた楽曲で、いつか175Rではない形で出すんだろうなって思ってた曲なんですよね。
──それくらい今までのイメージでいう175R的ではない曲だと。
SHOGO そうですね。でも実際レコーディングしてみたら、「一番175Rっぽいね」って言われましたけど。曲を作った段階では違うかなって思ってたんですけどね。これは「生きる」という事をテーマに詞を書いたんですけど、175Rがセカンドステージに行くにあたってキーになってる曲かなって思いますね。「白いクリスマス」は、ジュンスカの名曲をカバーさせてもらいまして。原曲はメチャメチャシンプルな曲なんですけど、全く別の曲に生まれ変わってると思いますね。知らない人が聴いたら175Rの新曲だと思うかもしれないですね。あと「雪と涙と男と師走」っていう曲も入って三曲入りなんですが……。
──タイトルからして異色って感じですね(笑)
SHOGO まあ、歌詞は真面目なんですけどね。12月だけじゃなく、正月になっても聴けるような曲ですね。だったらタイトルに「師走」って入れるなよって感じですけど(笑)。まあ、……タイトルはノリで付けましたね。
──「酒と涙と男と女」みたいな。
SHOGO そういうふさけたノリのタイトルの曲が入ってても面白いかなって。三曲とも真面目なタイトルでもつまらないんで。
──まあ、そうやって肩の力を抜いて、自由な発想でそういう事が出来るようになったという事なんですかね。
SHOGO ちょっとは余裕が出来たのかなって思いますね。とにかく今まで右も左もわからないまま突っ走って来たんですけど、少しは周りを見る余裕も出来てきたんで、これからはまた一から初心に戻ってやって行きたいと思いますね。これから学園祭ツアーや全国ツアーもありますし、今回はサポートメンバーとしてキーボードを入れて五人でやりますんで。そういう今までにない事をやって、セカンドステージに向けて一歩一歩、歩いて行けてるんじゃないかと思います。
──10月23日には「BUG ROCK PARTY」と銘打ってジェット機、ニューロティカとのライブもありますが。
SHOGO そうですね。これは気合いを入れないとヤバイですね!
──この組み合わせでライブをやった事ってあるんですか。
SHOGO 多分ないんじゃないかな。今からどういう風に攻めようかなって思っています。
──楽屋は和気あいあいとしていながら、ステージに上がったら……。
SHOGO 「負けてられない!」って感じで(笑)。まあ、楽しんでやりたいと思います。
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