今回も汚い音にしちゃいまして(笑)
──ほぼ1年振りのアルバム発売ということで。
ナベジ:1年ちょっと振りですね。
──4thアルバム『Subliminal Meditation』がリリースされたのが2003年の12月、5thアルバム『悪い物体』がリリースされたのがそのわずか半年後の2004年の6月。で、今回の6thアルバム『サディスティックな赤』が約1年振りの2005年9月ということなんですが、このペースの違いというのは何かあったんですか?
ナベジ:まぁ、普通に曲を作って、溜まったから出すっていうのが基本なんですけど。半年でアルバム1枚っていうのは、正直キツかったっていう(笑)。単に“無理しちゃったな”っていうのがあって、それでキツくないペースでやったらこのくらいになっただけっていう。無理せず、前のはちょっと気張って、こう、この日にドドンと出すってのがやりたくて。
──当時、『Subliminal Meditation』を聴いている最中にもう次の『悪い物体』が発売されて、“うわっ! もう来たっ!”って凄くびっくりしたんですけど(笑)。
ナベジ:『Subliminal Meditation』のレコ発ツアーやってて、その中で『悪い物体』の曲をもうずっとやってて。
──じゃ、その勢いを持ってレコーディングに突入したと。
ナベジ:バーって作れちゃったんで、じゃあやれるんなら、出せるんなら出しちゃおうと。
──で、その結果、半年は辛かったので今作は1年だったと。
ナベジ:そう、余裕を持ってということで(笑)。
──スランキーサイドの音源って、とてもライヴ感の強い音源だと思うんですけど。
ナベジ:ああ、そうですかね。
──レコーディングはどれくらいの時間かかったんですか?
ナベジ:ベーシック・トラック用に2日間押さえて16時間ぐらい、歌が4時間ずつ3日間なんで12時間。被せものはベーシックの空き時間に録っちゃったんで、トータルでは30時間くらいですかね。多分。
──レコーディング30時間でやったっていうのは、その、予算の関係もあるんでしょうけど、そのことでよりライヴ感が際立つことにもなってると思うんですが、それは意識されてます?
ナベジ:ああ、うーん、まぁ、低予算っていう枠ありきでやっているので(笑)、ライヴ感があるっていうのは、そこにたまたま後から付いてきてるっていうのがあるんでしょうけど、狙ってやっているっていうのはないな。あ、そういうやり方(短時間でのレコーディング)しかしたことないから。長時間かけてやったらどうなるかってのは判んない、っていう。例えば時間かけて、やり方いろいろあるけど、リズムだけ先録って後からギター被せてとかっていうのでやっていくと、曲覚えてないから(笑)できないんじゃないかっていう。
──ああ(笑)、単体で録り重ねていく方法では不安だと(笑)。
ナベジ:そうそう、展開とか、他のメンバーみんな判んないんじゃないかな? っていうのもあって(笑)。だから普通に仮歌唄いながらライヴと同じように、ね、ブレイクのところとか、パンってネックを振って合わせるっていうのもありつつ、で、まぁそれをただ録ってって感じなんで。
──確かに、ネックで合わせてる感ってのはCD聴いてて凄くありますよ!
ナベジ:(笑)まぁ、それしかできないってのもあるんですけど。
──バンド・サウンドが好きな人が聴いてて心地良いサウンドになってる理由はそこにありますね。
ナベジ:で、あのー、今回も汚い音にしちゃいまして(笑)ミックスは自分でやっているんですよ。自分でやっていると、どんどんコンプ感が上がっていって、で、最後に、1st以外のマスタリングを全部やってもらっている宗ちゃん(レコーディング・エンジニアの中村宗一郎氏。他にはゆらゆら帝国やスターズ等も手掛けている)のところに持っていくんすけど、そこでまたさらにやってしまう。1回やりすぎてやり直したってくらい。宗ちゃんとこ持ってくと、必ずこう、“ブリッ”とされてしまうんで。あれでも抑えてはいるんですけど。
音量を含めてバンドの音なんだから
──ナベジさんはソロでもやられてるじゃないですか? ソロをやることで、バンドに還ってきているものとかってあったりします? ソロっていつ頃からやられてました?
ナベジ:もともとがあの、弾き語りから始めたんですけど。5〜6年前まではちょこちょこやってて、ここしばらくやっていなかったのを1年くらい前から復活させて。やっぱ唄いたいなっていう衝動をちゃんと出そうかっていう、それだけっすかね。還ってきてることと言えば、唄う機会が増えるじゃないですか、単純に。まぁ、そのためにひとりでリハーサルに入ったりだとか、それ用の曲を作ろうとか思ったりもするし、そうやってこう、音楽を作ったり唄ったりすることが増えるってことで、多分、還ってきてるものはある。もっと言っちゃうと、そっちに時間取られてバンドの曲作る時間がなかったりとかね。それも還ってきてることのひとつなんだろうと。いっぱいやるってのは面白いっすよね。いろんな形で人前でやるってのは。久々にアコースティック・ギターでやって思うのは、使うギターに合わせて曲を書いてたんだなって。スランキーって多分、あのジャズマスターとマーシャルっていうのがまずあって、そっから作ってるんだな、っていう。
──ああ、あの音量とか。
ナベジ:そう、それもあるし。アコギだとやっぱ全く違うからできないこととかもあって、最近はそれ用に作ったりとかできるようになった。昔はそういうこと意識してなくて、何用とかなくて、いろんな形でやっていいなと思ってたんだけども、スランキーは長年やってきて、そういうハードウエア的なところが固まってきてるんで、それに合わせるように自然になってきてたんだと思う。それに気づいた。
──じゃ、あの、今回のアルバムで最初と最後にアコギの曲が入っているじゃないですか。それはそういったことからできた引き出しなんですか?
ナベジ:ああ、そうなんですかね。あれ、ガットギターなのに、ガットギターに全然聞こえない音になっちゃったんですけど(笑)。
──最初、CD聴き始めた時に“おっ?”っていう(笑)。
ナベジ:“あれっ?”っていう(笑)。“間違えたかな?”くらいの(笑)。
──いつもエレキの音が“ジャーン”ってくるのに(笑)。
ナベジ:そういう裏切り方をしたくて(笑)。
──機材の話が出たんですけど、機材はもうずっと変わらずジャズマスターとマーシャルで。
ナベジ:基本は変わってないですね。『悪い物体』あたりからエフェクターにディレイを使うようになって。今回も割と使っていますね。なんかね、ハコによってこう、鳴り方が全然違って。
──でもあれですよね、生音が大きいぶん、生音重視な感じですから、ハコによって全然変わっちゃいますよね。
ナベジ:凄い変わる。基本的にツマミの位置はいつも一緒なんで。
──じゃ、ステージの中の音としては、声をモニターから返してもらって、後は生音でやるって感じなんですか?
ナベジ:そうですね。最初に「声だけ全部のモニターに思いっきり返して下さい」って注文します。声が一番ちっちゃいじゃないですか、あの中では(笑)。ドラムは一生懸命叩けばなんとか聞こえるだろうし。
──ドラムはどんなに周りの音が大きくなっても聞こえてきますもんね、生音ってだけあって。
ナベジ:まぁ、声はね、エレキのバンドの中では一番ちっちゃいからね。楽器は中で返してもらうって音量じゃないんで。
──じゃ、そこいらは苦労しているところなんですね?
ナベジ:いや、苦労じゃないですけどね。だったらちっちゃい音でやれよ、ってことなんで(笑)。知ってるPAさんだと全く問題ないですけど、たまに「ギターの音下がりますか?」って言われて「下がるわけないだろ!(怒)」ってね(笑)。ヴォリュームつまみ2なんだよ、って。下げるとかじゃなくって、その音なんだから、音量を含めてバンドの音なんだからっていう。音量っていうか、音圧じゃないんですよね、ウチの場合は。一個一個が何をやっているか判る感じで抜けてくる感じ、ゴーって固まった音じゃなくって、ひとつひとつがズンズン抜けてくるのがギターとベースがワーっていうんだろうなっていう。よっぽど凄い広いところだったら自分の前にあるモニターから自分の音を返してもらうっていう、そういうのもあるんでしょうけど。
──ツアーを回る時って、機材は全部持ち込みですよね? どこ行ってもいつもの感じで。
ナベジ:そうですね。どこでもあの音量ですね。どこ行っても、どんな小さいところでもいつも通りで。普段の練習の時も、必ず自分たちのアンプおろしてやってるんで。大変なんすけどね(笑)。
──いやー、でもそうやって練習するのが一番良いですよ!
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