少ない色数でどれだけのものができるのか
―――まず、バンド名の表記が変わられているんですが、これはどういう経緯で?
児嶋亮介(Vo,Gt) この前にミニアルバムを3部作的な感じで出していて、その時にクアトロでファイナルをやったんですけど、そこから新しい自分達を出して行きたいと思い始めて、バンド名も変えようかなぐらいの意識改革があったんです。だけどPICK2HANDっていうバンド名の思い入れもあるので、表記を変えて打ち出していこうかなというところで変えました。
―――意識改革をする時に、バンド名を変えようと思うぐらいというのは…。
児嶋 いろんな経緯があるんですけど、ひとつの方向でやったなという感じがあったんです。今までの感覚だと色で例えたら何色もあって、この色を全部使って絵を描いていこうって感じだったんですけど、今回は4色だけの少ない色数でどれだけのものができるのかなっていう挑戦。シンプルにしたかったということですね。
―――楽曲として以前のものと今回の作品はかなりイメージが全然違ったんです。ポップに近くなったなという気がしました。今までの楽曲のイメージから抜け出そうと思ったのは?
椎名 勢いみたいなものを出したかったものあるし。
児嶋 伝わりやすさもね。あと洋楽がすごく好きだったんで、洋楽的なアプローチというか。あとは音で伝えるもの、もっと自分達のルーツに近いものにしたかったんです。歌中心のところに原点回帰というか。
―――特にルーツになったものってなんですか?
児嶋 僕は尾崎豊ですね。当時はコードのアプローチに感動してたわけじゃなくて、熱に感動してた。
―――椎名さんは?
椎名 昔はパンクとかメロコアとかニルバーナとか好きだったんですけど、今まではそういうのを封印してたんですよ。それを今回試してみようかなって。シンプルな中に歌がグサッと突き刺さる感じというか。
―――タイトルにもなっている『pedal』っていう曲を全面に出すということは、ブランニューP2Hでペダルを踏み出そうっていうところなんですかね。
児嶋 その通りです。この曲は試行錯誤しながら作ってたんです。いつも強気だったり前向きでいれる人って少ないと思うんですよね。その中で一歩踏み出さなきゃいけないってことはわかっていつつも、まだ踏み出せない人に送るメッセージとして自分達的にもいいタイミングだったんですよ。
―――全体的にこれまでのP2Hとはかけ離れていると思うんですけど、『pedal』ができたことによっていいのができたっていう手応えはありました?
児嶋 最初は迷いましたよ。今まではこの色も加えようというか、ギターを10本とか20本とか使ってたこともあったけど、今回は多くて2本。そういう意味ではちょっとした挑戦。
―――音数を減らすのは難しいですよね。でも、逆にそれができたってことは、自分達のやってる音楽が自信を持って前に出せるようになったってことでもありますね。
児嶋 それぞれのフレーズも生きてくるし。
―――ということは、レコーディングの作業もだいぶ変わりました?
ハゼ(Dr) そうですねー。今回ドラムをアメリカンのようなカラッとした感じの音が出したいってことになったんです。それで今までギターに時間いっぱいかけたんですけど、ドラムに時間を使っていいよって言われたんですよ。それなのに、いっぱい時間かけてたら「まだやるのかよ!」って顔されましたけど(苦笑)。
―――各パートの音決めは?
児嶋 音決めは時間かかりましたねー。録りはすぐなんですけど。それぞれの音がどうとかよりは全体のサウンドとして考えたんです。勇也(Ba)とかはゴリゴリの音が好きなんですけど、今回はベース本来の役割を担ってもらったんで、ちょっと欲求不満なんだよね(苦笑)。
勇也 バンドのためですから(笑)。トータルとしての太さにはこだわってますよ。
―――確かにちゃんと歌が引き立っているベースラインになっていますね。
音楽だからこそ素直になれる
―――音がすごいシンプルになって、聞き易いってのが一番だったんですが、お客さんが聞いたら今までと違うってなるんじゃないですか?
児嶋 でも、結局は俺が歌ってみんなが演奏したらP2Hになるし、そういうところを目指しています。
ハゼ 最初作り出したときに今までと違う新しい感じだなと思いながらやってたんですけど、ミックスも終わったときには結局P2Hになったねって話はしてたんですよ。
児嶋 ライブでももうやってるんで馴染んできてますよ。
―――反応としては?
椎名 いい反応でしたよ。
―――これまでの音楽性から移り変わったっていうきっかけになったのは?
椎名 今までもチャレンジしてきたんですけど、方法論が変わってきただけなんですよ。足し算だったものを引き算で考えたというところ。大幅に印象が変わったように見えるんですけど。
児嶋 全ての音楽を作ってる人って一緒だと思うんですけど、音楽にできることって聴いてる人が勇気もらったりとか前へ踏み出すきっかけになったりとか、どんなにネガティブな曲であっても、落ちてる人をもっと落とすために書くわけでもないですからね。そのためにできることはなんだろうっていうことで、メッセージをシンプルにしたりとかそういうことなのかなと。
―――そうなるとやっぱりライブも意識的に変わってきますよね。
児嶋 そうですね。ライブに来てる人って、CDを聴くようなつもりで来てるわけではなくて、自分を表現したい人だと思うんですよ。受け手として行くわけじゃなくて、自分がそれでどう感じたのかっていうのを表現したい、だから僕らもお客さんが発信する気持ちを拾って、こっちも発信するみたいな。もちろん自分の気持ちを表現するのが第一。その中で自分の扱っているテーマというのは普遍的なテーマで、共感できるんじゃないかというところで今までもやってきたんですけど、これからはそれをより伝えやすくするためにどこを削っていくか。
―――児嶋さんがいう普遍的なテーマっていうのは?
児嶋 俺も含めてみんな臆病者じゃないですか。ずっとその場所にいてもだめだってことはわかっている中で、それでも2曲目の「SHINING」は、行ったり来たりする自分がイヤになってしまうこともあるんですけど、もがきつつも前を向くって言うのが大事なんじゃないかなと思って書いたんです。こういう気持ちでもがいてるのは俺だけじゃないと思うんですよ。
―――そういうことを訴えかけるには勇気がいるし、今のP2Hのサウンドだから説得力があるということも言えますよね。
児嶋 今までは1曲の中でいろんな景色や感情を詰め込んたから聴くのにもエネルギーが必要だったんですよ。でもそうじゃなくて、今回は1曲1曲ずつそれぞれの役割をちゃんとさせた。一本化してった。
―――4曲で1曲みたいな。4曲目の『Thanx』でしめて。
児嶋 ライブみたいですね(笑)。『Thanx』は年とってくると守るべきものが多くなってくるじゃないですか。プライドだったり地位だったり、うちらに地位なんかないですけど(苦笑)、守るものが多くなるからその分盾も分厚くなってくるし、プライドも高くなるから素直に謝ったり、ありがとうって言ったり、小さい頃には簡単にできてたことができなくなってしまう気がしてるんですよ、それを解放してあげて、ドアを開ける役割が音楽だと思う。勇気は必要だったんですけど、素直に書いてみてもいいかなって。
―――音楽だから素直に言えるところもありますからね。
児嶋 音楽だからこそ素直になれる。
―――ところで椎名さんが作られた3曲目の『クラップダンス』は新しい感じがしましたよ。
椎名 これはニューウエーブの80年代。P2Hの中でも珍しいですよ。ださ切な系。
―――具体的にこんなバンドサウンドにしようとしたところってあります?
椎名 New Orderですね。80'sにハマっていて、P2Hでやったらおもしろいんじゃないかなって。今回いろんなものをチャレンジしようっていう時期だったからすごいいいタイミングだなって。80'sを今風に調理したらこういう感じなのかな?
―――30円の粉コーラみたいな懐かしい感じもありますよね。いろんな世代の人が聴ける曲ですね。
ハゼ 粉コーラ…(笑)。
―――ちなみに今回シングルに付いているPVはどんな感じ?
児嶋 寒い中半袖着て撮りました…。大変だったね。寒いし鼻に砂は入るし雨は降るし地獄…だった(笑)。
―――早く見たいですね…地獄絵図を。
ハゼ でもそれは編集で天国チックになってるんで(笑)。
児嶋 顔は無表情だけど(笑)。
シェルターのワンマンは原点回帰的
―――ところで10/6に『pedal』レコ発ワンマンがシェルターで行われますが、今回シェルターを選んだのは?
児嶋 昔ワンマンやったところであり、原点回帰的な。
―――昔ワンマンやって、セカンドステージの第一歩がシェルターなんですね! では意気込みを聞かせてください!
勇也 お客さんとの距離が近いから絶対楽しくさせますし、モッシュとか起こったら…(満面の笑みで)願望です! 楽しいステージになって、自分達も楽しくやれればいいと思います。よろしくお願いします。来て下さい。
児嶋 セカンドステージの第一歩として重要なライブだと思うので、みんなと一緒に…。憩いのライブにしたいと思います。
椎名 あんまり難しいこととか考えずに純粋に楽しみたい。来たら絶対楽しませる自信もあるし、みんなで一緒に歌いたいです。
ハゼ この日は世界で一番いいライブにするんで…言ってることがでかいですかね(苦笑)。…世界で一番楽しみましょう…みたいな。初めての人も今まで来てる人も遊びに来て下さい。よろしくお願いします。ハゼでしたー!!!!
全員 勝手にしめちゃったよ…(笑)。
|