初期の曲もサディスティックな目で楽しんでほしい
──今回1987〜1995年までの曲のセルフカバー・ベスト盤ということで、その10年間のLADIESROOMがこの2枚に濃縮された内容になっていますが、このタイミングでベスト盤を出そうと思ったのは何か意味があるんですか?
Hyaku(vo):前にLOFTで録ったライヴ・アルバムを出した時に、新しいお客さんや、昔から聴いてくれているお客さん達から「昔の曲を再録で聴いてみたい」という声が結構あったんで、例えば廃盤になっているCDをそのまま新しく出してくれっていうのも何か面倒だし、それだったら“今の俺達で新しく録るほうが面白いんじゃないかな?”っていうのがあって。単純に昔の曲を知らないお客さんにも聴いてもらいたいし、録っているうちに俺達なりに何かまた新たなものが発見できたらいいなという感じで録ってみました。
NAO(g):昔の曲を、キャリアを積んできてそれをもう一回レコーディングし直したらどうなるのかな? という楽しみもちょっとあったりしてね。
──全曲新録音ということですが、昔の曲を録り直す上で苦労したところや、逆にやりやすかった点などはありますか?
Hyaku:まぁ、強いて言えば、俺はやっぱり昔の歌詞をそのまま唄うのがちょっと辛かったかなぁ。淋しい気分になる。若い頃に書いた歌詞だからヒドイのもあって、自分でも“乱暴だなぁ”みたいな。それをお客さんはサディスティックな目で見て楽しんでもらえればいいかなと(笑)。しょうがないからちょっといじめられる感じで昔の曲を唄ってみたけど、それはやっぱり辛かった(笑)。
NAO:例えば1987年の曲とかだと、時代的にもう出てこないような言葉とかもあるじゃないですか? それをブースの外でニヤニヤしながら聴いたりとかね(笑)。
──楽器を入れる時はどうでした?
NAO:うーん。やっぱり確認のために昔の音源を一回、どうやってたのか思い出すためにも聴いたりとかするんだけど、“ああ、こんなことやってたんだ”って、ちょっと新鮮だったり、“まだまだ若いなぁ”と思いつつそのままなぞってみたりとかね。フレーズだったりはわざとそのまま使ったり、またちょっと足してみたりだとか。まぁでも、あんまり手を加えないほうがお客さんも楽しいと思うし、今風にアレンジしちゃうと時代も判らなくなっちゃうから、あえてそのままにしておいて。音だけちょっと現代チックにしてるかな?
George:いやぁ、俺は“若いっていうのは素晴らしいな”って思ったね。
NAO:怖いもの知らずだよね。
George:いや、大したことはやってないんだけど、若いっていう勢いだけでやってた部分もあったんで、今の俺達には出せないニュアンスとかもかなりあるから、やっぱり若さっていうのはもの凄かったんだな、パワーが凄いあったんだなと再確認しましたね。今それをどうやって塗り替えていくかっていうのは苦労しましたけど。
──ちなみに未発表曲2曲を含むこの33曲は、どのように選曲されたんですか?
Hyaku:エンピツを転がして…。
一同:爆笑
NAO:まさにそんな感じでしたね(笑)。
Hyaku:ま、最初は“10曲くらい選んで録ろうかな?”って思ってたんですけど、“どうせならいろんな曲で楽しんでもらったほうがいいかな?”ってちょっとずつ増やしていくうちにどんどん増えちゃって。多くても15曲くらいの予定だったんだけど、喜んでもらおうと思って選んでいるうちに増えちゃって。そこも「30曲録ってみろよ!」みたいなサディスティックな客をイメージしながら(笑)。
──制作期間はどれくらいでした?
NAO:曲決めからだいたい2ヶ月くらいかな。結構かかったかも知れない。録ってみないと判らないというか、昔の曲なんて全然想像できないから。ライヴで演奏してたりした曲もあるんだけど、今回レコーディングにあたって改めて演奏するなんて曲もあったから、「ちょっとやってみないと判らないね」なんて言いつつ。33曲もあったから、“あと何曲”っていうのも凄いプレッシャーになって。“数えちゃいけない、数えちゃいけない”って(笑)。残り3曲くらいになって“あと3曲!”って。
Hyaku:そう、最初のほうは“曲減らねぇなぁ”って感じだったもんね。最初の5曲くらいで反省してたもんね、“ちょっと多すぎねぇか?”って(笑)。
──ところで、新宿LOFTというライヴハウスに対して何か思い出などはありますか?
Hyaku:西新宿にあった時はよく行ってたんで、ライヴ終わった時とか酒呑んだりしてましたね。
NAO:でも、うかつに近づけない所だったよね?
Hyaku:どちらかと言うと、俺達は鹿鳴館っぽいハード・ロックをやってたから、新宿LOFTっていうともっと怖いロックンロールのお兄さん達がいるのかなみたいな、あの頃はそう思ってました(笑)。
NAO:階段を下りていく所の、あの緊張具合が何とも言えなかった。
解散も再結成も必然の産物だった
──新宿LOFTでやったライヴの中で思い出深いものは?
Hyaku:西新宿の頃のLOFTなんですけど、ZOAと一緒にやった時は面白かったなぁ。その時はゲストで出たから、全員がZOAの客なんですよ。そういうのってほとんどないんで、あれは新鮮だったな。ライヴって基本的に対バンになると闘いみたいな部分もあるんで、そういう時のほうのがちょっと怖い面もあるけど、“やってやるぞ!”みたいなのもありますよね。その時が確かLOFTに初めて出演したんじゃないかな。【編註:'89年2月18日、『HUMANICAL GARDEN 〜ZOA 2DAYS』にゲスト出演】
George:LOFTって言ったら俺は呑んだ記憶しかないですね。当時のライヴハウスって、ライヴが終わった後に飲める所って少なかったじゃないですか? 移転前のLOFTの時、LADIESROOMはいろんなセッションで先輩とかによく引っ張り出されてたんですよ。そういう時に先輩達に「飲め!」って言われて。とにかくあそこで飲んで飲んで。そんな記憶ばっかりなんですよね。前のLOFTは完璧に飲み屋と記憶してるくらい飲んでばっかりだったんで、最後は明け方に店を出て目の前のゴミ袋を投げ回して暴れてた(笑)。みんなが「もう帰りましょうよー」って、そんな記憶ばっかりなんですよね(笑)。そしてまたさらわれて、いきなり酒を3本ドン! って置かれて、「キミ、2本空けなさい!」って言われたり。その点、今のLOFTは俺からするとかなり平和なLOFTですよ。
──当時の対バンっていい意味での敵対意識というか、どのバンドにもハングリー精神があったような気がするんですけど、今はそういう部分が希薄だと感じませんか?
Hyaku:今の対バンの感じがよく判らないんですよね。でも、闘って勝つとは言わないなぁ。“みんなで仲良く、ジャンルが違っても一緒に盛り上がろう!”みたいなところは結構ありますよね。それはそれで、楽しそうでいいんじゃないかな。
NAO:物販もみんな仲良くね。ああいう光景は昔はあまり見なかったとは思う。昔は如何にして出し抜くかみたいな(笑)。対バンするとよく空回りしてた覚えがあるな。力が入っちゃうのか何なのかは知らないけど、ライヴが前のめりな感じ。いつも演奏をスカして 帰ってきてたような。それが面白かったのかな、もしかしたらお客さんには(笑)。
Hyaku:あと、LOFTではアレやったことあります、“KISS”のコピー・バンド。
NAO:思い出したくなかった…(笑)。
──20年近くバンドを続ける原動力っていうのは?
Hyaku:なるべくメンバーを見ないってことですかね 。
一同:爆笑
Hyaku:見ないで演奏を合わせられるようになると、上手くもなるし、長くも続けられるっていう。
George:そこに達するまで何べんも見なきゃいけない。
NAO:見てんのかよって(笑)。
Hyaku:見てんじゃねぇよって(笑)。
George:見て見ぬふりってどんなバンドだよ!?(笑)
NAO:長く続ける秘訣……それは“見て見ぬふり”。
Hyaku:いいねぇ、それ!(笑)
──今の音楽シーンについて何か思うところはありますか?
NAO:機材を使うにしても何でもあって楽しいんじゃないですか? 楽しいけどあんまり曲を雑に作らないといいなって思う。昔の音楽とか聴いてると、チープなんだけど“こだわって作ってるな”っていうのが判るんですよ。最近は“あれ? いつの間にみんなこんな雑に作るようになっちゃったのかな?”って思う。歌謡曲とかでも、アレンジャーやディレクターがこだわったんだな、とかそういうこだわりが伝わる音があるといいですよね。
George:カラオケとか行って昔の生音演奏とかビックリするの多いもんね。そんな歌ばっか唄うなって感じ? 何年生まれなんだって感じ?(笑) 今の音楽シーンについては何もないですよ、いつも。LADIESROOMだけだもん、気にしてるのは。“勝手にして”って感じ。何が流行ろうが廃ろうが知ったこっちゃない。
──最近、ジャンルを問わずいろんなバンドが解散している現状があって、“こういうことをやっていきたい!”という明確なこだわりがないと、バンドってなかなか継続していかないんじゃないかと思うんですけど…。
George:俺達がそうだったように、どのバンドも必然だと思うんですよね、解散するっていうことは。俺達が再結成したのも必然だったからしたわけだし、偶然では有り得ないですから。再結成するってもの凄いパワーがいることだし、解散もやっぱりそうだし。しょうがないんじゃないですか? あとイヴェントとか対バンの時って、最近のお客さんは自分の好きなバンドを観たら帰っちゃうじゃないですか? そういうのをどうにかしろってみんな言ってるけど、お客さんが悪いんじゃない、バンドが悪いんですよね。そういう魅力のないバンドばっかりになっちゃったから。だからバンドがもっと頑張るしかない。解散も必然だし、新しいバンド作るのも必然だし、ミュージシャンが頑張るしかないんじゃないですかね。そういう意味で、俺は周りなんかどうでもいいんですよ。そんなの気にしている暇があったら、メンバーを見て見ぬふりをしながらも見ておかないと(笑)。
──最後に、これから始まるライヴ・ツアーに向けて一言ずつお願いします。
George:こういう質問が一番困るんですよね。ツアーに出る意気込みを…とか。
NAO:頑張ります(笑)。今回は初期の曲もやってるから、普段聴けないような曲とかもあるし。
Hyaku:そうですね、まぁ“ハードな俺達を見てくれ”ということで(笑)。……違う、(セクシーな声で)“ハードな俺達を見てくれ”。
──あの、活字だと伝わりづらいんですけど(笑)。
George:意気込みっていうのはいつもあるし、今回特にっていうのはないんですよね。ライヴやる前もやってる最中でも楽しむしかないんで。でも、何か言わないといけなんですよね?(笑)
──いや、もしなければ大丈夫です(笑)。
George:じゃぁ、何もありません!(笑) “やらせろ! by Hyaku”とだけ書いておいて下さい。
一同:爆笑
|