──活動期間が長いわりには去年までほとんどリリースはなかったわけですが、去年アルバムとかシングルとかを出してからの活動って変わりましたか。
BABA 単純に忙しくなったなって…。ライブは地方合わせて月に4、5本はやってるからね。
TARSHI それまでも最低月一ではやってたんだけどね。
KAZU いきなりガッて増えたっていうわけじゃないけど、それよりも内容が違うっていう方が大きいんじゃないですか。レコ発っていうのを、そういう形でちゃんとやった事がなかったから。
──やっぱり普段のライブとは違いますか。
BABA 違いますね。
KAZU ワンマンじゃないんだけど、それでもウチらがアルバムを出すんでその発売を記念してっていう形でやるわけだから、普段やってるライブとは気持ち的にちょっと違いますよね。…まあいざ始まっちゃうと全然一緒なんですけど。
TARSHI ステージ上がっちゃうとね。やる前は色々考えるんだけどさ。
──どんな事を考えるんですか。
TARSHI ちゃんとしようって(笑)
KAZU (笑)間違えないように。
BABA レコ発だったら絶対トリだしね。…色んな悩みがあるよ。
KAZU それまではそういう事を全然考えてなくって、ただライブをやってただけだったんで。
TARSHI イベントに呼んでもらって、ひたすらライブやって…って、結構その日暮らしみたいな感じだったよね。一ヶ月先の予定があるかないかくらいの感じでずーっとやって来てたんだけど、アルバム出したりしてからは、もうちょっと先の展望みたいな物を見ながら予定立てたりするようになったな。やっぱり、ちゃんとお金払ってきてくれるお客さんが増えたからね。それまでは、お客さんも身内のバンドマンとかが多かったから。そういうのが変わったっていえば変わったかな。
──お客さんに対する姿勢みたいなものは変わりましたか。
TARSHI う〜ん、そんなに変わってはないんだけどね。つまんなければ帰ればいいし、面白ければ一緒に楽しんで欲しいし。ただ、全然知らないお客さんの前でやる事も増えたんで、そういう時とかは「一丁やってやるか!」って思うようになったけど。今までは結構のんべんだらりとやってたからね。でも、それじゃあらちがあかないから。そういう意味では目まぐるしい一年だったかな。
──そんな期間を経ての今回のセカンドアルバムですけど。いつ頃から動き出したんですか。
TARSHI 基本的に一年に一枚は出したいなとは思ってたんだけど、前のアルバム出してから、マキシだのカバーのオムニバスだのはやってたけど、気がついたら一年くらい経っちゃってたんで、そろそろ作らなくちゃなーとは思ってて。…それが去年の年末くらいかな。
──曲はそれから作り出したんですか。
TARSHI 今回は完璧にそうだったな。曲を作るのも結構カツカツでさ、レコーディングの日程が決まってからだよね、まともに曲を作り出したのは。
KAZU 本当に曲のストックがなかったから。
──マキシ出した時にも「もう曲がないんで…」とか言ってましたもんね。
TARSHI そうそう、そこから大して曲を作ってなかったって事なんだけど(笑)
──レコーディングの日程はいつ頃決まったんですか。
BABA 五月の末からレコーディングだったんだけど、決まったのは半年くらい前かな。
──じゃあ結構時間はあったんですね
TARSHI …まあ、ムダに過ごしちゃったけどね。レコーディング入ってからも、まだ現場で歌詞書いてたくらいだから。プリプロの段階でもまだ確定してない曲があったりして、それでもプリプロ録って、そこから曲を選んだりも出来たんで。
KAZU 追い込まれたけど、結果的にはストックも出来たからね。
TARSHI ものすごいペースだったよ
──作り出すと早いんですか。
TARSHI 一概にそうでもないんだけどね。今回はそうだったな。
──アルバムを作るに当たっての方向性っていうのは決まってたんですか。
TARSHI 特にコンセプトみたいな物は決まってなかったんだけど、今回は努めてコンパクトでダイレクトな曲っていう感じで。
──短い曲がバンバン入ってるっていう。
TARSHI 曲をこねくり出したら、まあやれるんだけど、キリがなくなっちゃうから。今回、ほとんど三番ないからね(笑)。アレンジに関しても、極力シンプルに。膨らんだ物を削っていく作業に集中したっていう感じですね。
──曲数のわりには聴いてるとあっという間に終わっちゃうっていう感じですもんね。
TARSHI それは狙い通りですね。
KAZU あと、前に作ったアルバムよりは若干丁寧には作ってますね。シンプルにするっていう事は丁寧にやらんと。シンプルで荒削りじゃどうしようもないから。
──レコーディングはスムーズに行ったらしいですね。
TARSHI うん、もう現場に入っちゃったらね。それまでは大変だったんだけど。自分らの中でOKラインをクリアーなかなか出来なくって。そっちの方が苦労したかな。
──選曲に時間がかかったんですか。
TARSHI 曲のチョイス自体はかからなかったんだけど、一曲一曲の完成度みたいな物が。仕上がりの到達点をどこにするかっていう作業に神経を使ったし、しんどかったな。
──短くってシンプルで速くて全部同じような曲っていうアルバムってよくあるけど、このアルバムはその中でもキッチリ展開がありますね。
TARSHI それは…年の功だろうね(笑)
KAZU ホント、これは狙ったわけではないんですけど、結果的にこうなったっていうだけで、正直自分らでも収拾つくかなって思ってたんですよ。でも曲並べてみたら上手くまとまったなっていう。
──聴いてる側からすると、全体にロンサムっていう色がついていながら、その中で色々やってるなって感じましたね。
TARSHI ファーストと同じ物作ってもしょうがないしね。まあ、曲調とかは聴いたことのない感じになってるかもしれないけど、元もとスタジオセッションとかの段階では色んなタイプの曲をやってたりするんで、そういう意味では自分らの中での新鮮味っていうのはないし、目新しい事をやってるわけでもないし、実験的なものでもないんだけど、自分らの持ってる引き出しの中から出して出来た曲をブチ込んだらこういう風になったっていう感じかな。
──突飛な事をやってるわけじゃないですからね。
TARSHI 多分ね…それが出来るなら、ファーストでやってると思うんだよね。13年もかかんないよ。
──方向性がバンドとして確立してるっていう事なんですか。
TARSHI うーん、結構やりたい事が決まってるんだよね。だから迎合してるわけでもないし、背伸びもしていないし…。
──レコーディングはどんな感じでしたか。
BABA まあなんだかんだ言って、時間がかかったのは最初のリズムパートくらいで、あとはすんなりで。
KAZU マキシの時に使ったスタジオやったし、スタジオの使い方もわかってたしね。やりやすかったですね。
TARSHI エンジニアのオサムちゃんもウチの音がわかってたから、転がり出しちゃったら早かったな。
BABA レコーディング始まっちゃえばまな板の上の鯉状態だからね。
──レコーディングで色々凝った事をやるっていう感じでもないんですか。
TARSHI 凝った事っていう程でもないんだけど「ここでグワーンってやってよ」とか、色々オサムちゃんに言ってツマミを回してもらったりとかはしたけどね。あんまり知識もないからイメージで。「人殺しみたいな音にしてよ」とか(笑)
──どんな音ですか!?
TARSHI それは言えないけど(笑)「グオーッて来てバーン! なんだよ」とかね(笑)
──そんなの言われた方も困りますよ。
TARSHI まあオサムちゃんも面白がってやってくれてたけどね。
──音作りの指示もそうですが、歌詞の方もかなりイメージ的な感じですよね。
TARSHI ああ、そうだね。まあ、単純に思ったこと書いてるだけだと思ってるけど。…感覚的には絵を描くのと一緒なんだよね。
──今回は特に曲が短いから、断片的なイメージを詰め込んでるっていう感じですよね。
TARSHI 主張が明確に言葉としてあるわけでもないし、心情的な物とかを赤裸々に吐露したりっていうのでもないからね。メッセージソング的なものとか、そういうの書けないもん。読んだり聴いたりするのは嫌いじゃないんだけど、いざ自分で書くとなるとちょっと違うよね。オレには向いてないんじゃないかな。実は、詩集とか読むの好きだったんだよ、若い頃。コクトーとかランボーとか読み耽ってた時期があったから。その時思ったんだけど、…読んでもわかんねぇんだよね。人種も違うし生きてた場所も違うし、外国なんて行ったこともないし、でもなんか読んでると肌触りみたいな物は感じるから、そういうのが好きになってて。そういうイメージが出てるんじゃないかな。…まあ歌詞はよく暗いって言われるんですが(笑)。別に努めてそういう歌詞を書いてるわけじゃないんだけどさ。根が暗い人間ですから。
──曲から映像的なイメージが浮かんでくるんですか。
TARSHI 曲を聴いた印象で言葉が出てくる事もあるし、曲と全くマッチしないような歌詞が出来ちゃって、でもそれを曲に乗せてみたら、相互作用でまた違う景色が見えてきたりっていう事もあるかな。
──タイトルの「CHARADE MOON」っていうのはどういう意味なんですか。
TARSHI あれはねぇ。アルバムを作るって決まった時期に、フッて夜の空を見たら、すごいデカい月が浮かんでたんだよね。妙にデカくて赤かったり…。見上げる度にそういう月を見る機会があって、それがなんか自分の町とか、周りの景色ともアンマッチングで、見せかけ(CHARADE)みたいだなって思って。そういう事が何回か続いたんで、アルバムタイトルはこれでいいかなって。
──そういうの聞いても変わったバンドだなーって思いますね。ロックンロールの人って体育会系でバンバン…みたいなイメージが強いですけど。
TARSHI 根は体育会系なんだけどね(笑)
──アート系というか…。
TARSHI う〜ん。ロックンロールっていう物自体がアート化するのはあんまり好きじゃないんだけどね。かといって土曜の夜の嗜好品みたいなものになっちゃうのもイヤなんだけど。軽く見られるのはイヤだし、重いのもイヤっていう。まあ、別にアートをやってるっていう意識もないし、アーティストって呼ばれるのも好きじゃないんだよね。オレらはただのバンドマンだから。…っていうのを昔、忌野清志郎さんが言ってたよ(笑)。確かにアーティスティックな事をやってるバンドもあるけど、オレらには向いてないよ。うさんくさい方が性に合ってるんだよね。
KAZU 10代くらいの頃はそういうのに憧れてた時もあったけど。
──頭の良さそうなロックに。
KAZU やっぱりパンク・ニューウェーブから入ったんで、そういうの聴いてると自分が賢くなったような錯覚に陥って、わかったような気になって色んな本を読んでみたりもしたけど、全然わからへん(笑)。でも、当時はそういう雰囲気を感じてたんだと思うな。
TARSHI 思うんだけどさ、どんな人生でも、人生ってその人にとってはでっかい物だから。別にそこら辺歩いてる人だって一生懸命生きてるんだろうし。だから、音楽にしても、芸術にしても、そういう物が、やってる人間以上に上にあるっていうのは好きじゃないな。まあ、リスナーにとってロックンロールがどんな物であってもいいんだけど。オレ達は命削ってやってるっていうだけで、別にそういう風に聴いてくれとは思わないし。好きなように判断してくれればいいんじゃないかな。それで、そこに共有できるものがあるんであれば嬉しいし。
──まあ、今回二枚目のアルバムが完成したわけですが、これからはどんな活動をして行きたいですか。
BABA とりあえずライブは当然続いていきますけどね。
TARSHI まあ、レコ発もあるし。別に野望っていうのはないけど…。自分らがやりたいようにやれる状況になったのが嬉しいんで、その中でどれだけ暴れられるのかなっていう感じかな。色んな出会いもあるし、アルバムもまだまだ作っていきたいし。まだやってない事があるからね。多分、飽きたらすぐやめると思うけど…って思い続けながらやってるんだけどね。
KAZU 野望までいかへんけど、展望っていう所では、まだ行ってないとことか行きたいなとは思いますね。ツアーやっても行けるとこはなかなか限られてるから。
TARSHI まあ、とりあえず一生懸命いい音楽をやっていこうかなって感じですね。
──自然体で…。
TARSHI まあ、自然体って言っても結構がんばってるんだけどね。
──ホントに自然体でやってると、また10年くらい空いちゃうと。
TARSHI 本当の自然体で行ったらなんにもやらないからね(笑)。でも最近は自然体っていう事の意味が変わってきたよ。周りも変わってきてるし、そういうものと調和を取りながらやって行くっていう。周りを遮断しちゃうっていうのはやっぱりどこか不自然だと思うから。周りと調和をとりながら進んでいくっていうのは、大きな意味での自然だと思うからね。…そこに気付くのが遅かったんだよなぁ〜。
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