Monthly Free Magazine for Youth Culture
ROOFTOP 8月号
『コスチューム!』 著者:将吉

3才の時にコミケに紛れこんで。 最重要テーマは笑い

あれ? 生きるだの死ぬだの、存在理由だの、湿っぽくぐちゃぐちゃやんないんだ!  みんな相当ヘビー。言葉だけではないフィジカルさを持って、からっとさっくり現実に真摯に向き合うオタク。普通にして異才。変な奴がでてきたよ!(TEXT:斉藤友里子)

まず何を考えているのかそういった思いが純粋に

一一デビュー作となる『コスチューム』。主役はコスプレイヤーの女の子で、その女の子が七転八倒しますが、この題材を選ぶ経緯を教えて下さい。

まず何を考えているのか、という思いですよね。そういった思いが純粋にありまして。なんでコスチュームを身にまとうのか、それを写真にとるのかと。一度題材にしてみたかったんです。

一一違和感のある存在に見えたんですか?

違和感というか、不思議というか。コスプレをするという行為も、あのコミケという空間も。本を売る、衣装を着る。着た人がいる。写真をとる。それをみる人たちが歩きまわっていたり……動き的には地味なのに、異様な熱気がありますよね。でもそれが普通に行われてますけど。

一一集まってる人の量なのか、業なのか……そのあたり読んでるコミケの描写は非常にその熱気が伝わってきましたが、実体験なんですか?

コスプレは特にしませんけど、コミケには行ってますよ。スペースをとって同人誌を売ったり、買いに行ったりはします。その程度で、描写については体験というより、なめ回すようにレイヤーさんのHPをみてました(笑)


3才の時にコミケに紛れ込んでトラウマに?

一一HPでみた知識からあの女の子像が出てくるのは驚異ですけど、そもそもいつぐらいから「オタク文化」化」にふれるようになったんですか?

僕は今年で22歳になりますが、さかのぼれば何歳頃ですかねぇ。意識し始めたのは『新世紀エヴァンゲリオン』が終わった頃、僕が中学生ぐらいの頃でしょうか。でも、その前にトラウマといいますか、おぼろげな体験があったんです。僕の育ったのは、埼玉県なんですが、県の中心地である大宮にソニックシティという建物がありまして。埼玉の同人誌即売会と言えばそこなんです。3才の頃に迷子になってその会場に紛れ込んでしまったんですよ。

一一子供ながらにも「なんだここは……」と思ったんですか?

思いましたねぇ。だからなんでしょうね、なんだかその映像が頭に残っていまして。

一一それが後にコミケと知ると。原風景のように。

ええ。原風景というか、夢というかトラウマというか。


エヴァ後のラジオリスナーそしてエロゲーで涙

一一「オタク文化」というの自覚して触れるようになったきっかけはなんだったんですか?

勉強しながら、いやほんとはしてないんですけどね、ラジオを聞くじゃないですか。あれがはじまりだったと思います。「緒方恵の銀河に吠えろ」ですとか「三石琴乃のエーベルナイツ」とか好きで、よく聞いてました。あとは「超機動放送アニゲマスター」とか。

一一うわあ、おたっきぃ佐々木のリスナー。

ああ! おたささ、懐かしいですねぇ。「アニゲマスター」もよく聞いてました。それでオタク的な文化にふれていくわけですが、そうこうしているうちに高校生ぐらいになりましてパソコンを買うんですよ。これが悪魔のマシンでして。いわゆるギャルゲー、エロゲーとかをやり始めるんですよ。脱がしたりすることをですねぇ、ええ。

一一いえ、健全な男子として当然だと思います。

ハイ。しかし、あるゲームでバグがありまして。それはそれは哀しい思いをしましたね。またこれもトラウマですね……。通常、クリアしたらご褒美に脱いでくれたりするものですが、これはバグで服を着てくれちゃうんです。

一一ああ……。盛り上がったところで着られちゃうんですか。

ええ、それはもう最高潮で盛り上がったところで、全部着込んでくれますから。

一一逆に快感になってしまう……

それはないですね。

一一あ、健全だ。


重要テーマ:笑い

そのあとに感動的な作品に出会うんですよ。独り机で黒い涙を流して、ボロボロ泣きました。

一一エロい目線でみてたのに。

ええ。こんなに泣けるとは……と懺悔しながら、物語ということを意識し始めたのはあの作品だと思いますね。あと、少年ジャンプとか小学生のころから読んでいたんですけど。

一一ドラゴンボールはもう終わっている頃ですよね。

終わってましたね。それで、ジャンプから少年ガンガンというオタクよりにシフトしていって、そのあたりの漫画から小説を読んでいたんですが、その作品群の影響は大きいですね。

一一特に影響を受けたのは?

美川べるのさんですね。この方は「ギャグしか書かない」という一貫した姿勢をもっていまして、笑いに対しての姿勢は多大に影響を受けました。

一一確かに、『コスチューム』の主人公のレイヤーの女の子は、レイヤーとして致命的な能力を生まれ持ってしまっていて、よく考えれば悲劇的なのに、からっと笑える。

中島らもさんが言っていたと思いますけど、「人を泣かせるより、笑わせるのが難しい」って。そういう笑いに届けるかどうかわかりませんけど、挑戦していきたいです。作品を書く上では笑いはかなり大きなテーマです。

一一『コスチューム』のキャラクターたちはかなりヘビーな状況にいると思うんですけど、ドロドログチャグチャがない。観念的じゃない突き進みが爽快でしたが、将吉さん自身は?

それは悩むことはありますよ。でもその時は、寝ます。外にタイヤを打ちに行って(将吉さんは格闘技を習っている)、寝る。それに限ります。

一一さっぱりしてますね。

いや、イチイチ悩んでるより、進んだ方がバカでいいじゃないですか。

将吉 『コスチューム!』

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Live info.

『コスチューム』発刊記念 「コスプレ・サブカル大解剖!?」
9/1(木)@LOFT / PLUS ONE
Open / 18:30 Start / 19:30
\1000(飲食別)
【出演】将吉、滝本竜彦
【ゲスト】声ちゃん、コスプレイヤー多数
コスプレ・サブカル・小説。『コスチューム』著者の将吉と滝本竜彦が語る、この世界。
総括できるか、このテーマ?? とにかく語ります!

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