Monthly Free Magazine for Youth Culture
ROOFTOP 8月号
THE ROOSTERS

RE・BIRTH II 〜ROAD TO FUJI ROCK FESTIVAL '04〜

オリジナル・ルースターズ、22年振り一度限りの再結成!
『FUJI ROCK FESTIVAL '04』でのラスト・ライヴまでを追った石井聰亙監督による3時間半に及ぶロック・ドキュメント!

 2004年7月30日(金)、新潟県湯沢町苗場スキー場。『FUJI ROCK FESTIVAL '04』初日、午後4時を過ぎた頃に「Radio Shanghai〜C.M.C.〜Wipe Out」に乗せてGREEN STAGEのステージに現れたのは、花田裕之(g)、井上富雄(b)、池畑潤二(ds)、そして大江慎也(vo, g)というオリジナル・ルースターズのメンバーだった。二度と再現できないと誰しもが考えていたジグゾウ・パズルの欠片がこの日、22年という歳月を経て一葉の絵を成した奇跡的瞬間だった。それは日本のロック史上稀に見る紛うことなき“事件”でもあった。

 あれから約1年後に発表となる2枚組DVD『RE・BIRTH II』は、「Wipe Out」が苗場に轟き4人が姿を現した瞬間、心の赤色灯が激しく急回転したあの日のどうしようもない胸の高まりを鮮やかに甦らせてくれる。“ROAD TO FUJI ROCK FESTIVAL '04”というサブ・タイトルにある通り、FUJI ROCKでのラスト・ライヴに至るまでの再結集したオリジナル・ルースターズの4人の姿を余すところなく捉えた密度の濃いドキュメンタリー作品である。昨年発表されたCD 27枚+DVD 6枚という破格のボックス『VIRUS SECURITY』にボーナスDVDとして収録されていた『RE・BIRTH』の完全版といった趣であり、もちろんラスト・ライヴで演奏された全16曲は完全収録されている。

 監督は石井聰亙。'80年に公開された『狂い咲きサンダーロード』でジャパニーズ・ニューウェイヴの急先鋒となり、以後も斬新かつ前衛的な異色作を発表し続け、日本映画の地平を切り拓いている鬼才である。ルースターズ・ファンにとっては、大江と池畑がそれぞれフライング風戸、鋼鉄男役で出演した近未来バイオレンス映画の傑作『爆裂都市 -BURST CITY-』の監督として有名だろう。余談になるが、この『爆裂都市』は先だってようやく東映ビデオからDVD化の陽の目を見たので、未見の若いファンはサウンドトラック盤(僕はこのアルバムをルースターズのもう1枚のオリジナル・アルバムだと思っている)と併せてこの機会に是非体感して頂きたい。表現に向かうほかない過剰で無軌道なエネルギーがこれほどまでに充ち満ちた狂気のロック・ムーヴィーを僕は他に知らない。

 閑話休題。ルースターズ・ラストライヴの序曲は'04年7月8日(木)、福岡市中央区草香江にあるハートストリングス・スタジオでのファースト・リハーサルから始まる。「6時間お互い無言に近かった」(花田)というこのリハで最初にプレイされたのは「Hey Girl」。感じが掴めず唄いきれない大江の姿が痛々しいが、何曲かセッションを重ねていくうちにすぐに勘を取り戻す。その日の夜に「ヤキトリルースターズ」で酒を酌み交わす4人。その席で「『Honest I Do』をやりたい」と話す眼光鋭い大江は、間違いなく往時の大江そのものである。バンドの求心力、“核”が遂に戻ってきたのだ。大江自身もこのリハには充分手応えを感じていたようで、CLUB 440で行われた花田のソロ・ライヴの演奏(「Fool For You」「Rosie」)に被って映し出される衣装合わせ時のインタビューでは「リハをやって凄い身体がゾクゾクした」と語っている。

 同月24日(土)、25日(日)には池ノ上にあるTakagi's Homeスタジオで再びリハを繰り返し、徐々に演奏が固まってくる。「あの頃は自分達の演奏を楽しんでいる時間はなかったけど、今は“結構恰好いいじゃん”と素直に思える」という井上の発言からも幾ばくかのゆとりが感じられる。

 そうして迎えた7月26日(月)、新宿LOFT。PEALOUT、怒髪天、吉村秀樹(bloodthirsty butchers)らルースターズを愛してやまないアーティストが一堂に会した『ザ・ルースターズ ラストライヴ前夜祭 〜RESPECTABLE SHOW〜』に当初本家ルースターズの出演予定はなかったが、スタッフの強い意向もあり、ラスト・ライヴの調整用にシークレットとして急遽出演を果たす。『RE・BIRTH II』にはこのステージで披露された全9曲を含め、リハーサルや楽屋での風景、打ち上げの席で元メンバーである安藤広一の誕生日を参加者全員で祝う微笑ましいシーンなども収められている。

 翌27日(火)に池尻大橋のMACスタジオで行われたファイナル・リハーサルを終え、メンバーとスタッフはいざ苗場へと移動する。そしてラスト・ライヴ当日。まるでファースト・アルバムのジャケットを思わせる、新調した黒のスーツを揃って身に纏った4人。ステージに上がる直前の緊張した面持ちの彼らの一挙手一投足をカメラは追う。ヴォルテージが否応にも高まる観客の凄まじいコールを受けて、ストローハットにラフな恰好のSMASHの日高正博が特別MCとして登場。「20年待ったんだよな!?」という日高の声に応える怒号のような歓声。「Wipe Out」のSEが流れ、観客の意識は一気にレッド・ゾーンに振り切れて──。

 幾多の困難を乗り越えて果たしたルースターズのラスト・ライヴがどれだけのものだったのか、あとは実際にその目で『RE・BIRTH II』をご覧になって頂きたい。最後にニッコリと微笑んだ大江の満足げな表情がすべてを物語っているだろう。

 数奇な運命の悪戯によって生じたボタンの掛け違いは22年という歳月を経た末に正され、それまで伝説という名の檻に放り込まれていたザ・ルースターズという日本屈指の至高バンドをオリジナル・メンバー自らが解き放った。FUJI ROCKでのラスト・ライヴは、飛べないはずの雄鶏が大空を高く舞い、永劫の自由を手にした瞬間でもあった。

 『RE・BIRTH II』──それは、脆くも崩れ落ちたパズルの再生と希望をありのままに描いた、それでも明日へと手を伸ばそうとする4人の男達の物語である。(text:椎名宗之)

RE・BIRTH II

RE・BIRTH II

Columbia Music Entertainment/TRIAD COBA-50867〜8
8,000yen (tax in)
DVD 2枚組+52Pフォトブック付
8.24 IN STORES

TRIBUTE LIVE“RESPECTABLE SHOW”
2004.07.26 at shinjuku LOFT

01. Rosie
02. One More Kiss
03. Girl Friend
04. We Wanna Get Everything
05. 気をつけろ
06. Leather Boots
07. Little Red Rooster
encore
08. Case Of Insanity
09. ニュールンベルグでささやいて

FUJI ROCK FESTIVAL '04
2004.07.30 at NAEBA, GREEN STAGE

01. Fade Away
02. Let's Rock
03. We Wanna Get Everything
04. Sitting On The Fence
05. Hey Girl
06. 気をつけろ
07. Leather Boots
08. Little Red Rooster
09. Case Of Insanity
10. Tequila
11. ニュールンベルグでささやいて
12. C.M.C.
13. Rosie
14. Do The Boogie
15. 恋をしようよ
16. Honest I Do

THE ROOSTERS (Z) トリビュート・アルバム第2弾発売決定!!
RESPECTABLE ROOSTERS II
bloodthirsty butchers / dip / HEATWAVE / MO'SOME TONEBENDER / Radio Caroline / THE BACK HORN / アベフトシ+BAREBONES+TAYLOW(THE 原爆オナニーズ)/ and more...
*詳細はルースターズ・オフィシャル・サイトにて近日公開!
Columbia Music Entertainment/TRIAD COCA-50871
3,150yen (tax in)
9.28 IN STORES

Live info.

LOFT/PLUS ONE 10th Anniversary/『RE・BIRTH II』発売記念
『リスペクタブル・ルースターズ vol.5 〜RE・BIRTH II』

 ロック・ドキュメントDVD『RE・BIRTH II』発売を記念して、噂のルースターズ大検証大人気トークイベント“リスペクタブル・ルースターズ”リターンズ! 超レア映像、レア音源、レア資料、レア新事実、レアエピソード、レア情報の嵐!! 飛び入りマル秘ゲストもあり!? 初心者からマニアまで楽しめるルースターズ・ファン絶対必見イベント!
8月22日(月)新宿ロフトプラスワン
出演:スマイリー原島、石井聰亙、安藤広一、他豪華ゲスト多数!!
OPEN 18:30 / START 19:30 \2,500(+飲食代)
【info.】ロフトプラスワン:03-3205-6864

THE ROOSTERS OFFICIAL WEB SITE
http://columbia.jp/roosters/

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