梶原:ただ、その捨てた曲の断片がこのアルバムに収めた曲の随所に活かされているんです。
──もう一度音楽をやるなら、やはりバンドしかないと考えていたんですか?
Reo:僕は一人じゃ何もできないんで(笑)。最初からバンドしかないと思ってたし、梶原さんとずっとバンドをやってきたから、自分がまたバンドをやる時は絶対にドラムは梶原さんしかいないと思ってましたから。同じように、ベースはCapsuleGiantsでサポートをしてくれていたタムラ君を誘おうと決めてました。
タムラアキラ(b, cho):意外なことに、みんな本来の嗜好に近いパンク・テイストのバンドを敢えてやってこなかったんですよね。でも、普段から大っぴらには喋らなかったけど血となり骨となっている音楽的ルーツは一緒で、いざ音を合わせてみたら結局こういう音楽をやりたかったんだな、っていう。面白いですよね。
──リード・ギターはReoさんの慧眼で逆瀬川隆男さんに決まって。
Reo:「誰かいないですかね?」と逆瀬川君に訊いた時に、「僕じゃダメですか?」と。「どんなギターを弾くんですか?」と尋ねたら「Robert Quine(Richard Hell & The Voidoids)みたいだと言われます」と言うから、これはもうバッチリだと。ちなみに、Reo Yokomizo & Neon Groupっていうバンド名は、僕の意志ではないんですよ(笑)。僕は最初、Neon Groupというバンド名を持ってきたんですけどね。
梶原:僕は漢字で“横溝礼央”っていうバンド名にしたかったんですけど、猛反対されたんですよ(笑)。
Reo:何か全責任を背負わされそうな気がして(笑)。結果的には間を取った妥協案に落ち着きました。
──最初のライヴが'04年6月の『プチ週末』だったというのも、何やら暗示的な匂いを感じますね(笑)。
Reo:「最初にやるライヴは『プチ週末』がいい」って僕らからHOLLIEくんに言ったんですよ。
梶原:もう『プチ週末』様々ですから(笑)。ああいう雑然とした雰囲気の中でライヴをやるのが好きなんですよね。福岡にいた頃も、深夜に酒を呑んで騒ぎながらよくライヴをやってましたから。
タムラ:最初は、ちゃんとしたライヴハウスでライヴをやっても余り意味がないんじゃないかと思ったんですよね。
Reo:酔っ払いの前でライヴをやるのがいいんじゃないか、と。ライヴを観ようが観まいが自由じゃないですか。そういう空気の中でやるほうがいいと思ったし、僕自身そういう文化が好きなので。『プチ週末』でのファースト・ショウは凄く盛り上がってもらえたんです。Capsule Giantsの時には受けなかったであろう人達からも好意的に受け入れられて、嬉しかったですね。
夜はロマンティックなんですよ
──そして遂に電撃デビュー・アルバム『Neon Group』が完成したわけですが、オリジナルの7曲は夜をテーマに作られたということで。
Reo:夜には誘惑があるんですよね。ギラギラしてたり、キラキラしてたりするあの感じが好きなんです。僕の妄想も含めて、昼間とは比べものにならないほど夜はロマンティックなんですよ。夜は期待ができるんですね。って、何を期待してるのかよく判らないけど(笑)。だって、言葉の頭に“夜の”って付いただけで何だか凄く期待できるでしょう?(笑)
──音作りのコンセプトとしては、どういった方向にしようと?
梶原:まず何よりもライヴを観る人に向けた音にしたかったんですよね。ライヴっぽいものを作りたいというか、ストレートに楽器の音が立ってるような感じで。クリックを聴いて録ったものがボツになって、クリックなしでやったほうを採用したりしたし、キレイに録れたものよりも聴覚的なノリを優先させましたね。
タムラ:リズムもワンテイク、もしくはツーテイクまででしたから。
Reo:敢えて作り込まないように意識してやりましたね。勢いを出すために小細工はなしで。
梶原:多少ヨレても全然OKだったんですよ。例えばDamnedだって曲の最初と最後では速さが全然違ったりしますからね。
──The Only Onesのカヴァー「Another Girl, Another Planet」('78年発表のデビュー・シングル)がまたアルバムのいいアクセントになっていますね。
Reo:もう、ずーっと好きな曲なんですよ。あの時代でもかなり異色な曲だったと思うんですけどね。
──別の惑星に女の子を捜しに行くっていう、ちょっと変わった曲ですからね(笑)。
タムラ:俺はみんながあの曲を好きだってことを知らなかったんですよ。Reo君がDJで掛けてたのは知ってたけど、何気ないセッションでやった時に年下の逆瀬川君までが好きだと判って、あれにはビックリしたよね。
梶原:それが一致した時の盛り上がりたるや、凄まじいものがありましたからね。
──スタジオでやってみたルーツ音楽は他に何かあったんですか?
Reo:The Cureの「Boys Don't Cry」とか、ライヴでもやっていたのはBrian Enoのファースト(『Here Come The Warm Jets』)の1曲目の「Needles In The Camel's Eye」。「Needles〜」は、Capsule Giantsの時も2回目のライヴでやってるんですけどね。
梶原:最初にそういう音楽がみんな好きで集まったわけじゃなくて、ふとした会話やセッションの中で“あれ、この曲好きだったの!?”っていうのが多いんですよ。
Reo:“そこのフレーズは誰々っぽい感じで…”とか、そういうのは余り考えてないんですよね。これまで聴いてきた音楽からの影響は確かにあるだろうけど、曲作りの時にそれが勝手に滲み出たものはしょうがないと思えるようになったんです。
梶原:そこで曲をまとめる力を持ってるのがやっぱりReo君なんですよね。僕ら3人だとホント好き勝手にブルースっぽいジャム・セッションを延々続けて突っ走ってしまうから。
Reo:曲のアイディアとかで、自分の中で絶対に自信があるものは意見を通して、それで納得してくれるから有り難いですね。ただ、僕の説明の仕方が「ここはもっとグァーッと、そこはブァーッと」とか、たまに抽象的になったりするので、みんな混乱してる時はありますね(笑)。
──粒の揃った曲の随所に巧妙なトラップが仕掛けられていて、ひねくれた方向へ行こうとするのにその結果とてつもなくポップになっているというアンビバレンツさ加減が病み付きになりますね。
Reo:ただポップなだけだと自分の趣味的にも引っ掛かるものがないんですよね。そういうのが僕の中で必然的にあるのかもしれませんね。やっぱりどこかひねくれてるのが好きなんですよ。
──それとやはり、Reoさんの天性のヴェルヴェット・ヴォイスがとにかく瑞々しくて素晴らしいですね。決して甘さだけに流されていないところも含めて。
梶原:Reo君の今のヴォーカルは凄くいいですね。前はどこか無理してるところがあったと思うんですけど。今までいろんなバンドをやってきましたけど、やっぱりReo君は特別なんですよ。言葉の選び方とか発想の仕方とか、未だに色々驚きと発見が多いので。これ、褒めてるばかりじゃないんですけどね(笑)。
Reo:僕はミスマッチなものを掛け合わせたような音楽が好きなんですね。Capsule Giantsをやってた時も、爽やかで優しい音なんだけど梶原さんのドラムはガツガツ来るものにしたりとか、そういうものを僕は面白いと感じるんです。ただ、昔はそういうこだわりに対して凄く頑固だったけど、今はもっと曖昧にしてますね。試してみてダメならすぐに発想を変えますし、結果オーライならそれでいいんです。自分達が出したら絶対に自分達の音になりますからね。何よりも自分達がグッとくる刺激的な音楽をこれからもずっとやっていきたいですね。