PEALOUTシンドロームが続いているのであればまさにing
―――フジロックお疲れさまでした。まずは感想から。
高橋 悔いなしですね。完全にちゃんと終われた。あのライブがやれたから次にいけるなと思いました。
―――やってるときに感慨深いものがあったりしました?
高橋 そうですね。やっている時はこれで最後なんだなとは全然思わなかった。いつもと変わらず。
―――でも某メンバーの人は泣いてたっていう話も。
高橋 会場内があまりにあったかい感じだったから俺もグッとくる瞬間は何度も。3人で異様に顔を見合わせて演奏してたなとはすごく思う。実はみんな意識してたのかなとも思うし。目が会った後必ずニコッと笑うの。感傷的なものはあるけど、それを越えたところで最後はちゃんと終われたかな。笑顔でさよならって言えたかな。でも、実質的なラストライブはツアーファイナルのクアトロだと思ってるのね、バンド的には。そのご褒美としてフジロックがあって、長いアンコールライブが出来たかなと。それに関してはもう感謝の一言ですね。
―――ISHIKAWAさんはファイナルのクアトロは見れました?
ISHIKAWA はい。でも、人が多かったんで大半を楽屋のモニターで見てました。実は大阪も仕事の足を延ばして、ワンマン行けたんだよね。大阪は最初はアコースティックのセットで30分、その後3時間半ぐらい激しい曲とゆっくりな曲を行ったり来たりしたメニューだったんですよ。1曲1曲チューニングしたりとか、すごくどっしりとライブをやってたよね。東京に比べて超満員ではないので、お客さんがカウンターに飲みに行くときはいけたし、そうじゃない時はライブ集中したりとかっていう流れがあったんですね。逆に渋谷クアトロはゆっくりな曲と激しい曲がブロックできっちり分かれてたから、大阪よりも流れが速く感じたかな。オレ自身は感慨深いというのは通り越しているんでね。どっちかって言うとまたすぐに会えるって思っちゃってるし。ちょっと距離があるバンドだと感慨深さが出て来ちゃうんだろうけど、プロレス行きますかとか飲みますかってとき隣にいる人たちなんで(笑)、お疲れさまでしたとしか言いようがないですね。
高橋 ISHIKAWAさんとはそんな感じかも。感傷的になると言ったら解散って言うよりはどっちかが東京離れることになりましたとか、そういう時かも。
―――解散って聞いたときどうでした?
ISHIKAWA 高橋くんがすごく前から何となくそれっぽいことを言ってたんですよ。車で2人っきりだったりすると、「オフレコで話しておいた方がいいかなと思うことがあって」って言われて、「解散とかじゃないの? 」って答えたら「わかる? 」って。だから割りとノスタルジックな感じじゃないんですよね。PEALOUT以前の岡崎はビヨンズで知り合いでもあるし、音楽を続けていく限りはローリングしていくと。岡崎は今後もギターを弾くし、近藤君はソロもあってやり続けるし、高橋浩司もドラマーやり続けるっていうし、あとの応援の仕方に拍車をかけた方が友達としては当たり前の理屈なんじゃないの? って。ポジティブに考えていてくれるんだったら、それに同調するのが一番良いんじゃないのかな。出来る事があれば遊びでも一緒にやればいいわけだし。
―――高橋くんにとってもISHIKAWAさんはそういう存在ですか?
高橋 バンドの良い所も悪い所もさらけ出せる唯一の存在かもしれないですね。特にディレクターでもないんだけど、結成当初から最後まで付き合って来た少ない人の中で、ターニングポイントとなるライブで必ずいたりとか。ウチらが確実に一歩上に行った瞬間のライブってISHIKAWAさんの誕生日ライブに初めて誘ってくれた時で、そこからバンドとして転がり始めたし。あとバンドとの繋がりの部分であったりとか、THE TURN TABLESもそうだし、PEALOUTとしても面白いことができた。常に苦楽を共にしてきたっていう感じはありますね。
ISHIKAWA 今、PEALOUTシンドロームみたいなものが続いているのであればまさにingであるかも。バンドでPEALOUTっていう物理的なものはなくなっちゃったけどね。
高橋 出会いを思い返してみたんだけど、平日の夜中の旧ロフト。ロフトの店員から急遽連絡あって、イベントに出てくれって言われて。
ISHIKAWA 旧ロフトをオールナイトでクラブ化するにはどうしたら良いかって時に、テストパターンとして俺がDJやってPEALOUTも出たんですよ。ここで初めて高橋と近藤とは話しが出来て、それでPEALOUTを誕生日イベントに誘ったんですよ。
高橋 ISHIKAWAさんと一緒にいる瞬間って思い出深い事が多いからはっきり覚えてることが多いんです。誕生日は毎年、いい意味でリラックスしてライブができる機会を毎年与えてくれてたというか
。ISHIKAWA PEALOUTサイドのスタッフの人も柔軟だったんで、やりやすかったなあ。
これすごく直してるんでしょ?
―――そこで今回、5/4に新宿ロフトで行われた「激ロックシンポジウムファイナル」がライブ音源としてリリースされるわけですが、このライブ自体は気分的に最後のロフトだったり激ロックだったりってわけでもなくいつもどおりに?
高橋 ある意味激ロックのラストはツアーファイナルより寂しかった感があったかも。
ISHIKAWA 熱の部分がいい感じで分散してたんだよね。PEALOUTの最後ってなるとノスタルジックな部分も出てくるし、でもこの日はぶっ飛ばしてた感じだもんね。全体の空気がホント良かった。この日出た他のバンドもいい空間を演出してて、さすが激ロックのファイナルだと。
―――そもそも激ロックってどういう企画で何回目ぐらい?
高橋 回数はかなりやってるけど、自分達主催の企画でバンドを誘うということはバンドの立ち位置がわかるから慎重にいきたいなと思ってたんです。立ち位置も見せたいと思ったし。あとやりたいバンドとやりたい。基本的な欲求ですね。テンション上がるバンドとやりたい。
―――自分達で声かけてブッキングしてた?
高橋 そうそう、直接メンバーに電話出来るバンドばっかり。
―――この激ロックファイナルをライブ盤として出そうとしたきっかけは?
ISHIKAWA これはPEALOUTの節目でもあるし、激ロックシンポジウムの節目はDJで呼んでくれてたし、最後にやったロフトも呼んでくれたし。あと俺自身がロフトって会社でCDをリリースする仕事していて関わっている部分もあるから。愛も仕事も含めた上でこんなに波長が会う事はないんじゃないかと思ってメンバーにリクエストしたんです。当然バンドは「その日のライブがひどかったらナシ、オッケーだったら是非」と。運良く後者に至ったわけですね。
高橋 ここ例年にないぐらい素晴らしいライブだったんですよ。こんな事言うとバンドとしてどうなんだと思うけど、なかなかこんなに手応えがあるライブってしょっちゅうあるわけじゃなくて、自分が思ってた以上に良かった。こんなにイイとは思わなかった。
ISHIKAWA 近藤くんなんて聞きながら「これすごく直してるんでしょ? 」って言ってたもんね(笑)。
高橋 「こんなにちゃんと歌ってるわけない! 」とかわけわかんないこと言ってた(笑)。
―――全曲収録なんですか?
高橋 そうです。全部聞いて良かったから削る曲がなかった。1、2曲ぐらいこれはナシっていうのがあるかと思ったんだけど、メンバー3人とも通して聞いてアンコールも良いと思ったから。 ISHIKAWA 全曲入れなきゃいけないって双方が言ってた訳じゃないもんね。
高橋 アンコール含めて全部入れてるから自分達のライブ盤ながらいいライブ盤だと思う。
―――実は最初にして最後のフルライブアルバム。
高橋 ロフトのライブであり、タイガーホールで出せたって言うのがラッキーだったなと。
―――点と点が線で結べたもんね
高橋 ちゃんと最後まで11年間が結べたからホントに良かった。最初に知り合って最後まで付き合えたし。
―――そう考えるとPEALOUTと新宿ロフトはずっといい関係でやれてたね。
高橋 初ワンマンも新宿ロフトだし、レコ発もやってるし、旧ロフト最後の一週間の時も出してもらえたし。
ISHIKAWA お客さん入りきれなくなっちゃったしね。
高橋 ロフトは良くしてもらえたというか。旧ロフトは意味なくしょっちゅう飲みにいってたし…。って言っても俺飲めないんだけど(苦笑)。当時自分が一緒にやってたメンバーが旧ロフトで働いてたっていうのもあったし。解散するときにロフトのお店の子がPEALOUTナイトやろう!とか展示物を飾りたいんですけどって言ってくれたりとか、最後までいい関係で出来たなと。
―――今回のライブ盤もISHIKAWAさんとかなりいい関係でやれてるもんね。
高橋 ISHIKAWAさんもレーベルのオーナーとして、もしライブが良くなかったらリリースを止めようって言っただろうし、うちらも良くなかったら「ISHIKAWAさんごめん」って言えるし、そこは楽だった。お互い正直に言えるから。ノーって言いにくい事だと思うけど、ノーが言いやすいからこそ続けてこれたのかな。
ISHIKAWA 他でベスト盤とかDVDとか出す時、お互い遠慮がちにやっちゃって駄作になったら良くないじゃないですか? でもそうじゃないクオリティーになったって言うのは天運ですよね。
―――ミックスは4人で?
ISHIKAWA 大体はエンジニア任せ。小直しをみんなでやった感じですね。
高橋 あんまり直すところがあるわけじゃないし、特に大幅に変える部分もないし。
ISHIKAWA 例えばライブ盤でどこまで直せるかっていうレクチャーで言ったら、岡崎がビヨンズの頃にライブ盤出してるから直しが出来る範囲は彼がわかっているんだよね。だからすごくスムーズにできた。近藤君が「いっぱい直したんじゃないの? 」って思った所でそれは直せないしね(笑)。
高橋 すごい疑ってたもんね(笑)。
ISHIKAWA その後スタジオで歌い直したなら別だけど。やっぱりPEALOUTってバンドがアーティストとか評論家からも高い評価だったから、そこのプレッシャーはあるわけですよ。でも内容はそこに対してケチつけられるものではないと思ってるから、絶対にね。
高橋 それはメンバーからも断言。
ISHIKAWA タイミングもタイミングだしね。わりとメモリアル的な作品の1つとなったわけで。ベスト盤からスタートしてこのライブ盤があってDVDで完結すると思ってるんですよね。この3部作の中でライブ盤はしょっぱいなって言われたら悲しいでしょ。ベスト盤は春に出てたし、ライブ盤のことはベスト盤が出る前からメンバーには話してたし、当然良い内容の物を作らなきゃいけないって事で。DVDを出すっていう話もあったから負けられないしね。
高橋 ホント3部作っていう発想はある。ベストアルバムとライブ盤出て、ラストライブとアンソロジーが封入されたDVD。うちらとしても全部綺麗に出せることは嬉しいですね。DVDも初だし。ちゃんと締められたし、出したいところから出したいものが出せて。
ISHIKAWA いい流れだと思いますよ。年内ぐらいまではみんなPEALOUTの名前覚えてると思うよ(笑)。
高橋 確かに確かに(笑)。
―――こういう十何年もやってるバンドが『LONDON CALLING(THE CLASH COVER)』を普通にカバーしてるし。 高橋 冷静に考えたら寒いんじゃないかとたまに思うんだけど、そういう感覚に関しては麻痺してるんだと思う。
―――自分達が一番ロックンロールのファンってことなんですよね。そういえば、昔ロフトレコードからリリースした『LIVE at LOFT&SHELTER』の1曲目がPEALOUTでね。それで何度かライブ見せてもらった時は音がデカいバンドだなって思ってた。高橋 そこに命かけてたところはあったかも。昔はメタルのバンドみたいだったもんね。
ISHIKAWA でも声がやさしい(笑)。
―――近藤君カワイイ顔してたしね。
高橋 童顔だったもんね。
ISHIKAWA 童顔からおじいちゃんに変わった(笑)。ものすごいステップアップなんだよ、近藤君!
高橋 (笑)近藤君気抜いてるとホントおじいさんに見えるときあるから。人前では気抜かない方がいいよって言ったことあるもん。
ISHIKAWA でも、今回作業がスムーズだったし、打ち上げも楽しかったね。岡崎はベロベロだったけど。
高橋 でも酔うと一番始末に負えないのは近藤君だよ。泣くし。
ISHIKAWA 泣くし寝るし起きたら元気だし。典型的な元気なおじいちゃんだから(笑)。
―――プライベートな部分もPEALOUTは3人仲いいし、ISHIKAWAさんはそれをずっと見てきてるし、終わった後の作業も楽しいですよね。
高橋 変な話、もう会えないような別れ方してないから今でも3人で作業してるし。
―――PEALOUTの今後の予定は?
高橋 みんなそれぞれやっていくっていう形で。リリースもあるからホームページも持続するし。まだよろしくお願いしますよ(笑)。
―――最後にISHIKAWAさんにとってPEALOUTとは?
ISHIKAWA PEALOUTは、良いバンドであったし今後もずっと良い友達である。それだけです。
―――高橋さんからはありますか? …ってすごい締めだね(笑)。
高橋 PEALOUTを通じてだけど、3人ともいい出会いをしたとしか言えないかな。PEALOUTを面白くしてくれたっていうのは絶対あると思う。活動も含めていろんなヒントをくれたし、大事な人かな。
ISHIKAWA おだてても、ライブ盤の印税は上がらないよ(笑)。
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