活動再開はとてもエキサイティングだよ
──11月に日本のみでのツアーが決定して待望の“Cursive 復活”となるわけですが、活動休止に至った理由はどんなことだったんですか?
ティム:一夫一婦制のように、ひとつのバンドに縛られるのは僕にとっては難しいことなんだよ。
──それは、ティムさん自身が言うところの“自己破壊的な性格”(どんなに物事がうまく進んでいてもそれを長続きさせられない)に起因するところも大きいのでしょうか?
ティム:オーケー、もうちょっと具体的に言うと、簡単に物事が進んでしまうことに上手く馴染めないんだ。自分の仕事や仕事に対する報いについては“血と汗と涙”的なメンタリティがとても根強くあってね。でもこの夏はしっかりバケーションを取ったから、少しはリラックスできるようになったかもしれない。自己破壊的な性格? そうかもしれない。目の前に舗装された道が広がっている時は、トウモロコシ畑を進むことを選ぶこともあるよ。
──昨年10月の来日時に「The Good Lifeとしてアルバムをもう1枚作りたい」と仰っていましたが、それがCursive 再始動に至ったのは?
ティム:うーん、実はThe Good Lifeの次のアルバム用の曲はほとんど書き上がっているんだけど、アルバムをどうしたいか、まだはっきりしていないんだ。それまでの間、Cursiveの新作に取り掛かろうと思っている。Cursiveの新作のほうが早くリリースされるだろうね。
──The Good Lifeでの活動を通じて得た経験は、新しく始まるCursiveにどう活かされそうですか?
ティム:こういう質問にどう答えたらいいのか、ますますよく判らなくなっていてね。次のCursiveのアルバムは、僕自身にとってはソングライティングの新しいステップになると思う。自分自身に対してピュアな表現をするという、これまで積み重ねてきたことに、一番新しい側面を付け加えると言うか…。何だか漠然としすぎているね。Cursiveにしろ、The Good Lifeにしろ、それぞれのバンドでの創作活動は、自分のソングライティングのより大きな全体像の一部である、ということかな。例えばこのインタビューにこうして答えていることもその一部と言えるかもしれない(そうでもないかな…。自分に都合がいい発言だね)。この質問に対してはただ「判らない」ではダメかな?
──なるほど。日本ではこの来日公演に合わせて3rdアルバム『domestica』の日本盤と編集盤『The Difference Between Houses and Homes (Lost Songs and Loose Ends 1995-2001)』が同時発売となりました。まず『domestica』ですが、ティムさんのなかではどんな位置付けの作品ですか? プライベートで離婚を経験した赤裸々な心情が色濃く出たアルバムという評価をされていますが…。
ティム:『domestica』は、たくさんの人々にとってCursiveというバンドを定義付けたアルバムだと考えている。僕らの作品の中では、一番ではないにしても、とても重要なアルバムだ。なぜそのように多くの人にアピールできたかはよく判らないよ。ただ『domestica』という作品がリスナーに対してある種の力を持っていたということだと思う。『domestica』はパーソナルなアルバムではあるけど、僕にとっても他のメンバーにとっても、他の作品だって同じようにパーソナルだよ。たしかに“離婚”というキーワードが付いて回っているから、リスナーの中にはそのことによって作品の重要性が増しているっていうことはあるかもしれないね。
──当時、一旦解散状態となったCursiveがこの『domestica』で再結成に至ったのは?
ティム:もう、タオルを投げて全部やめにしようと思ってたんだよ。でも、もうお判りかもしれないけど、僕にとってはよくあることで…。でも誓って言うけど、毎回本気なんだ。今回のブレイクもそう。僕自身より僕のことを理解しているベースのマット(・マギン)が「ちょっと休んでみようか?」って言ってくれて、それでCursiveの活動を中止していたんだけど、またCursiveを再開することはとてもエキサイティングだよ。実は今日の午後、1年以上ぶりにスタジオでリハーサルをやったばかりなんだ!
──この『domestica』がなければ、現時点での最新作であり最高傑作と名高い『The Ugly Organ』は生まれなかったと思うのですが、如何ですか?
ティム:この質問に対する答えは、ちょっとヘンというか、失礼かもしれないけど。この質問というのは、こういうふうに言うのと同じだと思うんだ。「ボビー、あなたは今年7歳ね、今年はこれまでの人生で一番いい年だったわ。でも正直に言って、6歳になっていなかったら7歳にはなれなかったのよ」
自分達の文化を大切にしてほしい
──失礼しました(笑)。離婚を経験されたティムさんなりの結婚観を聞かせて下さい。
ティム:苦痛だね。でもいいものかもしれない。たぶん束縛を本当に求めているなら結婚を考えたほうがいいよ。僕自身はまた結婚したくてたまらないんだ。
──『The Difference Between Houses and Homes (Lost Songs and Loose Ends 1995-2001)』のほうは、現在では入手困難な初期音源が数多く収められています。このコンピはどんな経緯でリリースしようと決めたんですか?
ティム:昔の作品を手に入れられないコアなファンのために、サドルクリークがリリースを決めたんだ。親切心からね。
──選曲の基準というのは?
ティム:現在入手できない曲はほとんどこのCDに収録したんだ。クランク!レコーズから昔出したスプリットの10インチがあって、それには3曲入っていた。その3曲は今回の7インチ・コレクションに収録したかったんだけど、その10インチは現在も入手可能で…CDでも出ているし…今回の内容には合わなかったから、入っていないよ。
──初期の楽曲を聴き直す、捉え直す作業は困難ではありませんでしたか? 単純に気恥ずかしくはなかったですか?
ティム:何曲かのゾッとするようなヴォーカルは確かに恥ずかしかったよ。でも昔の曲には凄くいい思い出もいっぱいある。オマハのいろんな地下の練習スタジオで本当に多くの時間を過ごしたからね。
──冒頭と最後を飾る完全未発表曲「Dispenser」「I Thought There'd Be More Than This」の2曲はいつ頃作られた曲ですか? 差し支えなければ、何故おクラ入りしたのかも訊かせて下さい。また、この2曲をアルバムの冒頭と最後に配したのは?
ティム:「Dispenser」は凄くキャッチーな曲でみんなの反応も良かったんだけど、だから逆に演奏するのをやめてしまったんだ。僕らの最初期の曲のうちのひとつで、何だか“良すぎて”セルアウトしているような気になってしまったんだよ。「I Thought There'd Be More Than This」はファースト・アルバム『Such Blinding Stars for Starving Eyes』の最後の曲としてレコーディングしたんだけど、うまく決まらなかった。だから、今回の7インチ・コレクションではラストに持ってきた。「Dispenser」を1曲目にしたのは何だかおかしいよね。ようやくリリースする勇気が持てたっていうことだから。
──アルバムのブックレットには、ティムさんがこのアルバムのために書き下ろした同タイトルのショート・ストーリーが収められています。“ハウスとホームの違い”というテーマはいろいろと深読みができると思いますが、「Cursiveというバンドこそがホームなんだ」という意味も込められているんでしょうか?
ティム:「Cursiveが自分のホームだ」っていうふうには考えなかったけど、感動的な意見だね。僕自身は、薄っぺらく古い7インチが“ハウス”で、新しいCDが“ホーム”っていうふうに考えていたんだけど、確かにそんな説明よりは重い意味合いがあるように見えるのかもしれないね。
──切り絵作家の吉野有里子さんによる素晴らしいイラストがそのストーリーに彩りを与えていますが、彼女を起用したのは?
ティム:ただ単純に彼女の作品が素晴らしいからだよ。今回のブックレットに素晴らしいカラーを与えてくれたね。バンドの全員が彼女のスタイルと創造性の大ファンなんだ。
──日本でのツアーの後にはCursiveとして新しいアルバムの制作に入るそうですが、どんな作品に仕上がりそうか、ティムさんのなかで青写真は出来上がってますか?
ティム:『The Ugly Organ』よりもラウドで攻撃的で、それでいて、よりソフトでスウィートなアルバムにしたいと思っている。でも『The Ugly Organ』を作る前にも『domestica』との比較で、全く同じことを言ったような気がするよ。向上あるのみ! だね。
──Cursiveとしてはeastern youthとのツアー以来2年ぶりの来日公演ですが、どんなショウになりそうですか?
ティム:失敗しなきゃいいけど(笑)。どうなるかな、まだ判らないね。縁起でもないこと言っちゃったかな?
──では最後に、11月の来日公演を心待ちにしている日本のファンにメッセージをお願いします。
ティム:日本の音楽をもっと聴いてほしい。自分達の文化を大切に。でも僕らは何度でも日本に呼んで下さい。日本に行くのは本当に楽しいから。
special thanks to 平山秀朋
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