THE ROOSTERS→Z CHILDREN INTERVIEW
ザ・ルースターズから多大な影響を受け、第一線で活躍を続けるミュージシャンは言うまでもなく数多い。“ミュージシャンズ・ミュージシャン”と謳われるルースターズのどんな部分に彼らは惹かれたのか? 『RESPECTABLE ROOSTERS→Z a-GOGO』に参加したbloodthirsty butchersの吉村秀樹、Radio CarolineのPATCHにその底知れぬ魅力について訊いた。(interview:椎名宗之)
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吉村秀樹 (bloodthirsty butchers)
自分の中だけにある細胞の一部ですね
ブッチャーズとしては今回「VENUS」で参加させて頂きました。去年、ロフトでやったトリビュート・ライヴでソロで演奏した曲ですね。それを元にしてバンドとしてやりました。他にも候補曲は…今思えばいろいろとあるけど、「VENUS」は凄い好きな曲のひとつだし、これで行こうと思いましたね。1枚目(『THE ROOSTERS』)と2枚目(『THE ROOSTERS a-GOGO』)に関しては、3コードのシンプルなロックンロールを当時の中高生に至福ながらも疑問を交えて深く紹介してくれたというのがあって、凄く馴染めたんですよね。そこから『INSANE』で内省的になって違う路線を辿っていくんだけど、そこから『DIS.』『GOOD DREAMS』『φ (PHY)』…と段々段々素晴らしくなっていくっちゅうか。個人的に「Case Of Insanity」とか凄い好きで、『INSANE』に入ってるナンバーもカヴァーしてみたかったんだけど、歌がなかったりとか英語だったりとか、ちょっとベタすぎるかなっていうのもあったんで。
「VENUS」もそうなんだけど、個人的に好きなナンバーは柴山(俊之/サンハウス)さんが歌詞を書いてることが多くて、サンハウスの「ふっと一息」をカヴァーした「ALL ALONE」(『GOOD DREAMS』収録)もカヴァー候補だったんだけど、あれは結構練習しないと難しい曲なんですよね。
僕らの「VENUS」はライヴのリハ中にベーシックを録ったんですよ。しかも敢えてMDで。っていうのは、音響的にしっかりしたものは欲しくなかったんです。カセットみたいなザラッとしたエアー感が良かったんですよ。そのリハで録ったものだけでも良かったんだけど、一応、その後にスタジオでヴォーカルとギターをダビングして完成させました。
最初に聴いた音源は「Let's Rock (Dan Dan)」で、ラジオかテレビがきっかけだったと思います。周りに何人もいたルースターズ好きな友達がレコードを持ってたから、僕はそれを借りてカセットに落としてよく聴いてましたね。その中からどうしても手許に置いておきたいアルバムを自分で買ってました。『爆裂都市 -BURST CITY-』の原作小説とかも読んだりして。後になって、友達のお父さんがその小説を書いてる戸井十月だと知った時は驚きましたけどね(笑)。
同時期にアナーキーとかモッズも好きだったけど、ルースターズはとにかく異質な存在でしたよ。ポップな感じもあるし、かといって渋くないわけでもないし、歌詞も独特だったし。大江さんの動じない佇まいも恰好良かった。ルースターズとハードコアを並行して聴いてました。ある一時期にずっと聴いていたのがいつの間にか聴かなくなったりする音楽もあるんだけど、ルースターズは自分の中で残る存在としてずっと残ってますよね。すべてを完璧に聴かせようっていうスタイルじゃなくて、完成形に見えてないところが好きでした。自分にとっては高い存在。凄く高い存在ですよ。だからそんな高い存在を去年ロフトで目の当たりにした時は、やっぱりその場にいられて凄く嬉しかったですね。
一度だけ、高校の時にルースターズのライヴを札幌で観たこともありますよ。確かSEが「Je Suis Le Vent」で、「I'm Swayin' In The Air」で始まったと思うんだけどなぁ…。ドアーズのカヴァーをやってたり、ライヴとしては凄く良かった記憶があります。まだ安藤(広一)さんがメンバーだった頃ですね。
ルーツ的な音楽に始まって、そこから発展していった結果の音楽があるとしたら、僕はその真ん中が一番好きなんですよ。だから自分にとっては『DIS.』とか『φ (PHY)』なんかがやっぱり思い入れありますね。「I'm Swayin' In The Air」はブッチャーズのライヴでもやっていたことがあるし。『NEON BOY』の少し前に出た12インチ・シングル(『SOS』)は凄く好きでした。後期の花田さんのヴォーカルは、最初に聴いた時は頑張ってる感があって良かったですね。何より花田さんは凄くいい音を出すギタリストですよ。
あとですね、ルースターズのインストが僕は凄く好きなんです。『INSANE』の「FLASH BACK」とか、『a-GOGO』の最後に入ってる「Telstar」とかね。「Telstar」は原曲も好きだったから、カヴァーしたかったですね。
ルースターズ脱退後の大江さんのソロも聴いたし、やっぱり『ROOKIE TONITE』は大好きなアルバムなんですけど、何と言うか…大江さんのあの“ヘンな男感”っていうのは、女性にはちょっと判りづらいかもしれないですね(笑)。そこが凄くいいんだけど。大江さんがソロで札幌へ来た時には、ライヴが終わってバドワイザーを呑んでた大江さんに握手をしてもらいに行ったくらい好きでしたよ。
ルースターズの孤高の佇まいというか、他とは違う存在であるってところには惹かれましたよね。ある種の冷たさ感があって良かった。前のめり気味に熱っぽく演奏してる割には冷めてるって言うか。ルースターズの音楽っていうのは、僕の中だけにある細胞の一部ですね。
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recommend disc
φ (PHY)
Columbia Music Entertainment/TRIAD COCP-50757
1,890yen (tax in) / 紙ジャケット仕様盤
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1984年12月21日発表の6thアルバム。bloodthirsty butchersがカヴァーした「VENUS」を収録。大江慎也在籍時最後の作品。全10曲中、大江が作詞曲に携わったのは僅か3曲(「COME ON」「HEAVY WAVY」「LAST SOUL」)だけだが、大江慎也という存在をこれほどまでに強く感じるアルバムもそうはない。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの「FEMME FATALE」のカヴァー(ヴォーカルは花田)も秀逸。
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PATCH (Radio Caroline)
今聴いても新たな発見があるバンドなんです
ルースターズを初めて聴いたのは中高生くらいですね。リアルタイムでは“ROOSTERZ”名義になっていた頃、アルバムで言うと『KAMINARI』('86年11月発表)くらいになるのかな。最初はザ・モッズとかが判りやすくて好きだったんです。実際、初めてルースターズを聴いた時はピンと来なかったんですよ。いわゆるパンク・ロックとは違いましたからね。ストーンズとかパブ・ロックの類を聴き出してからはファースト(『THE ROOSTERS』)の頃まで遡って聴いたら凄く恰好いいなと思って。一番思い入れがあるのはやっぱり初期になっちゃいますよね。3枚目(『INSANE』)くらいまでかな。「Case Of Insanity」とか、俺は根が暗いんで好きなんです(笑)。あと、ルースターズを聴き始めた最初の頃に『unreleased』('87年発表、初期の未発表音源を収録した未公認アルバム)とかを聴いちゃったんですよ。自分がブルースやR&Bのバンドをやり始めた時には、そのアルバムを結構お手本にしてましたね。
多分こういうことを言う人は一杯いると思いますけど…今みたいにバンドが再評価されるずっと前から俺はルースターズが大好きでしたよ(笑)。『THE ROOSTERS a-GOGO』の未発表曲「Leather Boots」は自分で勝手に英訳してライヴでずっと唄ってたし、GYOGUN REND'Sの2ndアルバム『NICE!』('97年8月発表)に収められている「Homework」はルースターズの「Fool For You」を意識して演奏してるしね。
今回、Radio Carolineとしては「I'm Swayin' In The Air」をカヴァーしました。トリビュートの第2弾が出るという話を人づてに聞いて、自分からメーカーの担当者にメールして「参加したい!」と。第1弾の時にGYOGUN REND'Sとして「Dissatisfaction」で参加した時も、実は自分から連絡したんですよ(笑)。前も今回も、呼ばれてないのに押し掛けメールをして自ら参加したという(笑)。
「〜In The Air」は最初から俺がやりたいと意見を通してもらいました。他のメンバーがもし「やりたくない」と言っても、俺個人でソロとしてやらせてもらおうと思ってたくらい。でも2人とも「やりたい」と言ってくれたんで、バンドとしてできて良かったです(笑)。ルースターズはウエノ(コウジ)さんも大好きですよ。「ルースターズを聴いていなかったら今みたいなバンドはやってなかったかもしれない」って言ってますからね。ウエノさんがたまにライヴで花田さんと一緒にセッションすると「緊張と感動がいつもある」と聞いてます。
「〜In The Air」を選んだのは、最近『DIS.』とか『φ (PHY)』とか中期の頃のアルバムが好きで、個人的によく聴いてたっていうのもあるんですよ。鼻歌で普段からよく唄ってたし、これなら行けるだろうと思ってたんだけど、実際にレコーディングしてみると“難しい歌だなぁ”と思いました。ビデオで出た『パラノイアック・ライヴ』の歌メロとか研究してヴォーカルを真似てみたんですけど、ディレクターから「メロディが全然違うよ」って歌唱指導されちゃいましたから(笑)。最初はオリジナルに近い形で演奏したんだけど、元が良すぎるからどうもしっくりこなくて、それならもっと勢いを付けて全然違う形でやろうと。独自に前奏を入れたりしてアレンジのほうが面白くなって、ミックスの時もニュー・ウェイヴっぽいヴォーカルにしたりしたんだけど、ちょっとRadio Carolineっぽくないから少しだけ戻してもらったりとかしましたね。オリジナルのちょっとシンミリとしたした感じをブチ壊した感はありますね。
ルースターズの登場以前にも独自の解釈でブルースやR&Bを消化させた日本のバンドはたくさんいたけど、ちゃんと芯のあるロックンロールを奏でていたところが他のバンドとは違いましたよね。当時、パンク・ロックも好きで、ブルースも好きで…って言ったら、そんな雑多な音楽を内包しているバンドはルースターズしかいなかった。大江さんのギターはギタリストの枠からハミ出した感じで興味深いし、8ビートで跳ねる池畑さんのドラムはホント最高ですよ。オーソドックスなんだけど凄く跳ねてるし、暴れてる。8ビートであそこまで人を踊らせることのできるドラマーは他にいないと思う。それと、歳を重ねるにつれて(笑)バンド後期の良さも判るようにもなりましたね。最近は「Gun Control」とか恰好いいと思うし、「Lady Cool」とか凄くいい曲ですよね。今この歳になって聴いても新たな発見があるんですよ。
自分にとってルースターズっていうのは、ひとつのやり方を教えてくれたバンドですね。ブルースもやりたくて、パンクもやりたくて、どうやってやったらいいのかなって悩んでた時に聴いたのがルースターズでしたから。自分の歩むべき指針を方向付けてくれたバンドのひとつなのは間違いないですね。
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recommend disc
DIS.
Columbia Music Entertainment/TRIAD COCP-50755
1,890yen (tax in) / 紙ジャケット仕様盤
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1983年10月21日発表の4thアルバム。Radio Carolineがカヴァーした「I'm Swayin' In The Air」、dipがカヴァーした「She Broke My Heart's Edge」「Je Suis Le Vent」を収録。陰影に富んだ独自のエキセントリックなフォーキー・サイケデリック・ロックを志向した作品で、凛として張り詰めた佇まいのある傑作。当時シングル・カットされた「Sad Song」は“Winter Version”と題され、本作収録ヴァージョンとはヴォーカルと編集が異なる。
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RESPECTABLE ROOSTERS→Z
a-GOGO
Columbia Music Entertainment/TRIAD COCA-50871
3,150yen (tax in) 9.28 IN STORES
★amazonで購入する
1. 新型セドリック/MO'SOME TONEBENDER ……1st『THE ROOSTERS』(1980年11月発表)収録
2. 恋をしようよ/斉藤和義 ……1st『THE ROOSTERS』(1980年11月発表)収録
3. 撃沈魚雷/勝手にしやがれ ……ミニ・アルバム『ニュールンベルグでささやいて』(1982年11月発表)収録
4. She Broke My Heart's Edge/dip ……4th『DIS.』(1983年10月発表)収録
5. IN DEEP GRIEF/HEATWAVE ……3rd『INSANE』(1981年11月発表)収録
6. テキーラ/BAREBONES+FUTOSHI ABE, feat: TAYLOW & SHINJI (from THE 原爆オナニーズ) ……1st『THE ROOSTERS』(1980年11月発表)収録
7. NEON BOY/グループ魂 ……7th『NEON BOY』(1985年9月発表)収録
8. Hey Girl/THE BACK HORN ……2ndシングル「どうしようもない恋の唄」(1981年2月発表)B面収録
9. I'm Swayin' In The Air/Radio Caroline ……4th『DIS.』(1983年10月発表)収録
10. VENUS/bloodthirsty butchers ……6th『φ (PHY)』(1984年12月発表)収録
11. DO THE BOOGIE/HEATWAVE featuring 浦田賢一 ……1st『THE ROOSTERS』(1980年11月発表)収録
12. Je Suis Le Vent/dip ……4th『DIS.』(1983年10月発表)収録
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